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一章ー36 緩衝

「まぁ、人間にしては凄い頑張ったと思うよ。・・・だから、僕もちょっと本気だそうかな。」


 トルトは突如、そう宣言する。

 ゆうとクルースは、今までの言動が嘘であったかのように、笑顔がまるで消失したトルトのその、一挙一動を注視する。

 そしてーー 


 空気が、トルトの様子が変わった。

 彼の顔からは笑顔が消え、そして代わりに得体のしれない何か、恐怖であるのかそれとも他の何かなのだろうか、を感じて、ゆうは体がやや強ばる。


(何だ・・・・・・これ?それに、この感覚・・・)


「・・・・・・」

「ゆう君っ!!」

「・・・・・・はっ!はい! 」


 クルースの呼びかけに何とか応え、そして、殆ど本能で、迅速に防御の魔術を展開した。

 それとほぼ同タイミングで、相手も攻撃の準備が整った。


 クラスホワイト・クロス    オーシス

「< 白魔術・緩衝 >」 「< 大地ノ怒リ >」


 瞬間、地面が強く揺れだし、そして膨大なエネルギーが放出された。

 ゆうは本能的に、素でやり合ったら対処できないと感じ、防ぐのではなく和らげる、ダメージをゼロにするのではなく、限りなくゼロに近づける、そういった選択を一瞬のうちに行い、そして実行した。


 案の定、それは功を奏した、もしまともにやり合っていたら、一瞬で負けていただろう。

 だが、何にでも限度というものが存在する。


 ゆうの術式は、ゆっくりと、だが着実に崩壊を始めた。

 その圧倒的なエネルギーにより、キャパオーバーしてしまったようだ。


(術式が・・・あぁ、もう・・・。流石にこれは防げないか・・・。)


 一瞬、ゆうは失敗のヴィジョンを頭に思い浮かべてしまった。

 それによりその一瞬、ほんの少しだけ魔力が乱れた。

 そして次の瞬間ーーゆうとクルースは防御魔術ごと吹き飛ばされてしまった。


(やっぱりだ・・・やっぱり防げなかった・・・。)


 ゆうは吹き飛ばされながら、またも苦悩と格闘する。

 しかし、そんなことを悠長にしている余裕はない。

 吹き飛ばされたゆうに、トルトが直ぐ様急接近する。


      フォームド

「っ・・・< 具象剣 >!!」


 ゆうは、なんとか対抗しようと剣を構える。

 そしてトルトは勢いよくゆうへと突っ込み、剣に対して素手て戦闘を開始する。


 ゆうは、剣技を発動しようと試みるも、そんな余裕はなく、攻撃をなんとか防ぐので手一杯である。


 その後も何とか善戦するが、やはり相手は強大なようで、脇腹に一撃をくらってしまう。 

 ゆうはそれをくらっても尚、なんとか踏ん張ったが、しかし、それと連鎖するかのように、二撃、三撃と立て続けにくらってしまう。


「・・・グッ・・・」


 ゆうは何とか、力を振り絞ってトルトから距離を取る。

 だが、ダメージの蓄積により集中力が切れ、< 具象剣 >が解除されてしまう。


 そしてそんな、無防備となってしまったゆうへ、またもトルトは狙いを定めて接近する。


(まずい、あいつが来てる!早く・・・疾く< 具象剣 >を発動させないと・・・いや、別のスキルで対応するか?それとも・・・)


 かなり追い詰められたゆうは、かなり焦り始め、そして致命的な思考の迷宮へと囚われてしまう。

 そして、


  フォームド

「< 具象剣 >」


 しかし、集中力が散漫になっているせいで、一撃をくらっただけで崩壊してしまった。

 丸腰になったゆうは、もし諸に攻撃を受ければ、ゆうの細い腕や体は吹き飛ばされ、いや、最早原型が残らないかもしれない、致命傷になるのは避けられないだろう、そう感じた。

 そして無慈悲にも、敵の攻撃は止まる気配がない。


(なんで・・・今日はこんなにダメなんだろうか・・・。)


 沈んだ気持ちで、虚ろな瞳で迫りくる凶器の拳を捉える。

 最早防御などは頭になく、ただただ沈んだ気持ちでいた。

 すると、


「そこ、邪魔です。」


 クルースが、その一撃を難なく防ぐ。


「クルース・・・さん・・・。」

「ここは私に任せて下さい。そしてそこをどいてください。これでも私、S級なので。」


 そして彼は、ゆうとトルトとの間に割って入り、幾度が、トルトと剣を交える。


「まったく・・・私、剣の扱いは不得手なのですが・・・。」


 そうボヤきつつも、一撃、二撃、三撃と、卒なく相手の攻撃を受け流し続ける。 

 不得手と言うにはかなり流麗な動きをしているように、ゆうの素人よりの目には映った。 


 その後もさらに競り合いは続き、そしてある時、力が拮抗しているのか、刃と拳とが交わったまま、微動だにしなくなった。

 これにはトルトも驚いているようで、不思議そうな表情をしているようにも感じられる。

 硬直状態がそれから2,3秒ほど続いたが、クルースは更にそこから仕掛ける。


「脳天がガラ空きですよ。」


 そう言って、やや震えている左の手で拳銃を突き付け、即座に発砲した。

 煙はでない、ただ、撃った反動でクルースの左手は、やや後ろの方へと流される。

 拳と刃との交わりが断たれ、そしてお互い数歩ずつ後退する。


「ようやく一撃をくらわすことができました・・・しかしやはり腹立たしいですね。まさかあの距離で急所をそらすなんて・・・。」


 トルトは、あの超至近距離による発砲にさえ反応し、なんとか致命傷になるのを防いだ。

 これにはクルースも驚いたようだが、だからといって反撃の手を緩めるという選択肢はない。

 クルースは、トルトを挑発した。

 あんまり効果がないように思えたが、案の定効果的面であったようで、トルトは何か、奇っ怪な行動を開始する。


「・・・なにか来ます・・・またあれが来ます。」

   オーシス・ディーモ

「< 大地ノ怒リ・二重奏 >」


 クルースがゆうに注意勧告をした矢先、それが的中、トルトは先程の技を、いや、あれよりも更に威力の増した技を瞬間放った。

 クルースは瞬時に退避し、ゆうは瞬時に魔術を組み立てる。


 クラスホワイト・クロス

「< 白魔術・緩衝 >」


 ゆうは流石の速さで、先程と同様に高レベルの魔術を行使する。

 そしてその術式は、しっかり相手の攻撃を受け止める。

 しかしーー


(やっぱり、無理か・・・。さっきよりも崩壊速度がはやい・・・。)


 相手の攻撃は予想を遥か彼方上回るもので、ゆうの魔術が恐ろしい速さで崩壊してゆく。


「なんで・・・」

「先程のような力技ではなくなり・・・それでいてエネルギーも上昇している。・・・・・・本当に、ハイスペックさ加減が嫌になります。」


(なんで・・・この人はこんなにも・・・冷静でいられるんだ!?どうして!?僕は・・・) 


 そしていよいよゆうの魔術が終わろうとした、当にその時ーー。

 トルトとゆうたちとを隔てるようにして、オーロラのような、魔力でできたベールが現れた。


(この魔力は・・・!)

[雑談]もう九月が終わってしまう・・・。

   あと、疲れが取れない・・・。

[いちばん大事]ブクマ&評価欲しいです・・・。

[予告]次回の更新は、10月1日(午後)を予定しています。

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