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一章ー35 本気

 二人はタイミングを合わせて、一斉に行動を開始した。


「おっ!何だ何だ?」


 トルトは二人の謎の行動に、興味津々である。


 クラスレッド・フォルド

「< 赤魔術・炎撃 >」


 直後、ゆうは静かに魔術を行使した。

 ゆうの左右に炎の槍が出現し、それぞれがトルトへと向かっていく。

 トルトは華麗なステップで躱そうとしたが、調子に乗りすぎたのだろうか、足がもつれてしまい、一撃だけくらってしまった。


「当たっちゃった・・・って、どこ行った?」


 トルトは一瞬、ゆうから目を離してしまい、その姿を見失ってしまった。


 クラスレッド・ウェスト

「< 赤魔術・水壊 >」

「うおっ!いきなり!」


 今度は水の弾丸が、トルトを背後から狙い撃つ。

 トルトは持ち前の、卓越した反射でなんとか避けるが、ゆうの攻撃はまだまだ続く。


 クラスレッド・ベント

「< 赤魔術・風切 >」


 トルトがちょうど避けた先に、ちょうど地面に足をつけたタイミングで、ゆうは魔術を発動させた。

 今度はとても鋭利な風の刃が、足元を狙っているのだろうか、超低空を翔ける。


「危なっ!」


 しかし、やはり全て間一髪のところで避けられてしまう。

 トルトは登場以来ずっと、楽しそうにしており、実際攻撃は効いていないし、そもそも当たっていない。

 普通なら、そろそろゆうに焦りの色が見え始めるころである。

 だが、今回のゆうに限っては、そんなことはない。

 それどころか、依然攻撃の手を緩めない。


 クラスレッド・ケブラ クラスレッド・ロージス

「< 赤魔術・雷落 >、< 赤魔術・地破 >」


 ゆうはその後も、縦横無尽に駆けながら、魔術を次から次へと行使する。

 どれもかなりの精度を誇り、一撃一撃がかなりの高水準なのだが、トルトには一向に当たる気配がない。


「いや〜本当に凄いね〜。こんなに魔術を連発するなんて、それもいろんな属性のやつを!」


 トルトはまるで子供のようにはしゃぎ、ゆうを称賛する。

 未だ疲労は見えず、余裕そうであるが、実際初撃以来一撃も当たっておらず、戯れ程度にしか思っていないのかもしれない。

 本来なら、実に芳しくない状況である、が、ゆうもゆうで焦っていない。


「クルースさん!!」


 声高に、彼の名前を叫ぶ。


「完璧です。」


 クルースは、それに応えるように、小さく返事をする。


「ん?なんだ・・・魔力が、5属性の魔力が・・・」


 トルトはいつになく楽しそうな表情で、クルースを見る。

 彼の手にはいつもの如き、しかし普段と少しだけ様相の異なるバズーカがーー。 


 バレットシステム       モード・イツシキ

「< 弾道制御 >・・・・・・< 型式:五色 >」

「凄い魔力濃度だ・・・なるほどね・・・さっきの彼の魔術を全部取り込んだってことか。」


(見抜かれてる!)


 ゆうは敵の、流石の理解の速さに動揺する。

 しかしクルースは、


「分かったところで、どうすることもないでしょう。」

「まぁ・・・確かにね。」


 流石に冷静であり、それは果たして、自信から来るのか、それとも単にポジティブなのか、そんなことは到底ゆうには分かりかねるが、ただゆうは、そんな彼の姿にまたも憧れのようなものを抱いた。


(僕も・・・自信?みたいなのがほしいな・・・。いつでも堂々としていたいな・・・。) 


 ゆうは憧れの情を、トルトは好奇心を満たさんとする思いをそれぞれ持ち合わせ、そしてクルースの次の動きに注視する。 

 そしてーー


          シフト・ペンタボンバ

「いきます・・・ < 命令:五属性超爆撃 >」


 瞬間、バズーカの、それにそぐわぬ小さな発射音だけが響いた。

 その円形の発射口からは、ごくごく微小な何かが、超高速で打ち出された。

 トルトの動体視力を持ってすれば、避けることは容易い、が、敢えてそれをせず、興味本位でそれに触れてみる。

 するとーー


  ーートルトは、静寂へと帰った。

 

「・・・えっ?今何が?」

 

 クルースは普段のように静かに、冷静でいるが、ゆうは何が何だか分からない、といった様子でいる。


「消え・・・まさかまた・・・?」

「いえ、違います。あれは超高密度の、5つの属性の魔力がブレンドされた、”何か”によって存在を消されたのです。」

「・・・?どういう、てか”何か”とは?」

「それは私にも分かりません。私はただ、ブレンドして放出しただけですから。」


 これまた何とも落ち着かないような話だが、ゆうは自分に「ここは異世界」と言い聞かせて、なんとか納得した。


「つまり・・・勝ったって、ことですか?」

「そう言っても、差し支えないでしょう。」

「そう、ですか・・・。今回も、あんまり役に立たなかったような・・・。」

「・・・何故だ?」

「それは・・・」

 

 ゆうはふと、本心が溢れ出てしまい、それをどうしたものかと考え、そして答えを出しあぐねている。

 しばらくしても、一向に返答が得られそうにないことを察知したクルースは、取り敢えず、帰宅を促した。


「では本当に、帰りましょうか。」


 ゆうは未だに悩みながらも、どうのしようもないので、問いかけに対しただ縦に首を振り、ゆっくりと帰宅を開始する。

 

(・・・なんか、あんまり考えないようにしてたけど、僕ってあんまり強くないよね?結構マシな方だとは思うけど、けど所詮、その程度だ・・・。ずっと異世界に、自分の才能が開花する可能性に、憧れていたし、賭けていたんだ。だけど・・・)


 ゆうは独り、過去を振り返っていると、背後に何かを感じる。


「・・・気の所為、か?」


 すると、


「いや〜たまげたたまげた。あんなすごい攻撃、見るの久しぶりだよ〜。あんなんくらったら、生物は耐えられないよ。」

「!!」

「・・・まったく、しつこいですね。」


 振り返るとトルトの姿が、そこにはあった。


「倒せてなかった・・・!」

「僕、神で良かった〜。なんとか死なずにすんだよ〜。」

「まだそんなことを・・・」


 トルトは、依然全くダメージを追っていない様子で、軽快に話す。


「まさか、存在を消してくるなんてね。おもしろい!それに・・・」


 そして、クルースと目を合わせる。


「キミ、なかなか面白いことやるね~。僕も騙されたよ〜。それに・・・」


 続けて何かを言いかけたが、途中で飽きたのだろうか、その会話を放棄する。


「まぁ、人間にしては凄い頑張ったと思うよ。・・・だから、僕もちょっと本気だそうかな。」

[雑談]また、土日が終わり、一週間が始まってしまった・・・。

   作品の質の向上の為(及び作者の睡眠時間の確保の為)、更新頻度を落とします、お許し下さい!

[いちばん大事]ブクマ&評価欲しいです・・・。

[予告]次回の更新は、28日を予定しています。

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