一章ー26 朝起きたら・・・
「・・・・・・好き。」
「えっ・・・」
ゆうは、フリーズする。
「ゆうくん・・・好き。」
今度は耳元で囁く。
「あの・・・その・・・」
ゆうは顔を赤くし、同時に冷静さを欠き、対応に困っている。
すると、
「好き、好き、す〜き〜」
テレスはゆうを抱きしめた。
「あの・・・テレス、さん?」
ゆうは、なんとか声を発する。
しかし返事はない。
「?テレスさん?」
見ると、テレスは眠っていた。
「・・・なんだ、酔ってただけか・・・。」
ゆうは、ようやく全てを理解した。
少しホッとしたような、少し残念なような、そんな複雑な気持ちがゆうの中を駆け巡っている。
依然として、胸の鼓動は止まない。
「僕は・・・」
ゆうは、色々と考え事をしながら、残っていた食事を一人で食べた。
テレスは気持ち良さそうにゆうの膝で眠っている。
しばらくして、ゆうはテレスを背負って部屋を出た。
また、お会計はゆうが全額だした。
金額は恐らくかなり高額だっただろう。
しかし、こちらに来てからというもの、お金を使う機会が殆ど無い上に、ランクが上がって貰う分は増えるばっかりなので、ようやくまとまった出費ができて、逆に安心している。
そして、テレスを背負ったまま店を出た。
「さて、どうしよう。流石に部屋に連れ込むのは・・・う〜ん・・・。」
悩んだ末に、ゆうが出した答えはーー
〜宿〜
あれからかなり時間が経った。
朝日がゆうの部屋にも差し込み、部屋はほのかに暖かい。
「う〜ん・・・」
ベッドから声が聞こえる。
見ると、誰かが布団にくるまっいる。
「・・・あれ・・・ここは?私、お酒飲んで、それから・・・・・・はっ!」
テレスだ。
未だに少し記憶が曖昧だが、覚醒するにつれて段々と状況を理解し始めた。
「えっと・・・ここどこ?」
部屋を見渡す。
家具等はあるものの、自分以外は誰もいない。
「ここ、もしかして・・・ゆうさんの部屋なのかな?でも本人がいない・・・。もしかして、私が安心して寝れるように別のところで寝てくれてる、とか?」
一通りの身支度を済ませて、ゆうを探すべく部屋を出た。
そして、ゆうを見なかったかと宿で聞き込みをし、帰ってきてないと判明したので、そのまま宿を出て、ゆうの捜索を開始する。
(どこいったんだろう?それにわざわざ宿を出なくても・・・。)
〜宿の真ん前〜
テレスの起床と時を同じくして、ゆうも、段々と覚醒し始めていた。
(なんか・・・暖かくて・・・もふもふで・・・)
ゆうは、理由は理解していないが、取り敢えずとても気持ちが良く、意識がまだ朦朧としつつも、それを存分に堪能している。
(なんだこれ・・・めっちゃもふもふで・・・)
本体はまだ覚醒していないにも拘らず、もふもふを堪能する手が止まらない。
「あっ・・・あなたっ、そんなっ、こんな外でなんてっ、んんっ・・・」
(なんだ?・・・聞き覚えのある声が・・・)
段々と意識がはっきりとしてきた。
「・・・クイーン?」
「はい、あなた。」
目を開けると、そこには人型ではなく、狼の姿をしたクイーンがいた。
そしてゆうは、自分が無意識の内に、クイーンに甘えに甘えてしまったということを理解し、モフっていた手を素早くクイーンのもふもふから撤退させる。
「クイーン・・・すまない。」
「いいのよ。あなたの役に立てたのなら。・・・じゃあ、私はこれで。それから、その・・・」
「?」
「・・・またいつでも呼んでくださいね。あ・な・た」
そしてクイーンは、ゆうが瞬きする間に、忽然と姿を消した。
ゆうは、未だ完全に覚醒していないのと、クイーンの妖艶さもあり、呆気にとられている。
しばらくして、ようやく状況を完全に理解した。
「えっ、あっ、あのもふもふって・・・ん?」
今、ゆうの手元でジャリっという音が聞こえた。
「・・・ここって!」
二度あることは三度ある、ゆうは本日も、地面をベッドにして寝ていたようだ。
そして、次に気になったのは、周囲の視線だ。
ゆうは、恐る恐るあたりを見回す。
「・・・よし、人はまだいない。」
なんとかゆうは、一命をとりとめた。
と、思った矢先、背もたれにしていた宿の扉が開く。
それにより、ゆうは思いっきり頭をぶつけた。
「痛っ!」
「あ!えっと・・・ゆうさん?あの、すいません。・・・おはようございます。」
「あっ、テレスさん!おはようございます。」
扉を開けたのは、テレスだった。
「あのっ!ゆうさん、昨日はありがとうございました。でもわざわざ部屋から出なくても・・・」
「いや、流石にそれは・・・。」
「そういえば、結局どこで寝てたんですか?」
「あぁ、それならジメn・・・」
「じめ?」
素直に答えようとしたが、自分の威厳を守るため、ギリギリでやめた。
「・・・ジメジメシテネゴコチノイイバショデネテタヨ」
「ジメジメして、寝心地のいい場所で寝てたよ?ふふっ、なんでカタコトなんですか、もしかして、実はまだ寝てますか?ふふっ。」
どうやら意図せぬところで笑いを取ってしまったようだ。
ゆうも、なんとか誤魔化せたことに安堵する。
「すいません、こんなに笑って・・・では、行きましょう、ギルドに。」
「はい。」
こうして、二人はギルドへと向かった
〜店を出た直後〜
「さて・・・もう遅いし、取り敢えず僕の部屋にテレスさんを送り届けるか。僕は・・・どこでも寝れるしね。」
そして、ゆうはテレスを自分の部屋の、ベッドに寝かせた。
また自分は、要らぬ誤解を避けるため、夜風に当たりながらどうするべきか考えるべく、一旦宿を出た。
「さてと、どこで寝ようかな・・・。ソファとかでもいいかな?でも・・・」
すると、突然変なのに声をかけられた。
「お前っ・・・知ってる、ぞ。お前、お前・・・」
どうやら完全に酔っ払っているらしく、千鳥足でフラフラである。
ゆうは、「大丈夫ですか?」と声を掛ける。が、
「お前が僕のテレスたんを!!許さん・・・許さん!!」
突然男は逆上し、ゆうはいわれのない罪で、男が眠るまで追っかけられた。
その後、ゆうも限界を迎えて寝てしまったーー宿の一歩手前で・・・。




