表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/119

零章ー1 <竜の巣>

〜とある建物の一室〜

 そのだだっ広い部屋には、壁に美しい装飾が施されており、とても高級感を感じさせる作りになっている。

 そこではおそらくここの管理者であろう人達が、会話をしている。



「まだ目を覚まさないのか?」


「う〜ん・・・もうじき目覚めると思うよ」



 彼らが何について話しているかというと、ベッドで寝ている黒髪の少年についてである。

 歳は大体15歳くらいだろうか。



「しかし、生きていてよかったよ」



 一人がそう言って、慈愛の眼差しを、彼へと向ける。

 すると、指先がピクリと微かに動き、徐々に徐々に覚醒を始めた。

 少年はゆっくりと目を開け、体を起こした。



「・・・・」


 だがまるで一言も発さず、起き上がった先の景色を意識半分で見つめている。

 その後徐々に、左右を見回し、意識を取り戻していく。



「気が付いたようだね」


「・・・あなたは?」


「僕かい? 僕はここの所長さ」



 今がいい頃合いだ、そう思ったのか部屋にいた男が声を掛ける。 

 勿論初対面なので笑顔も忘れず、無害をアピールしている。

 その御蔭か少年も敵意を持たず、また「所長」という言葉に反応したようであった。 



「突然だけど、君、記憶はあるかい?」


「記憶・・・」



 まだ少々混乱しているのか、返答に時間がかかる。 



「思い出せないかい?」


「すみま・・・ッ!!」



 突然、やんわりとしていた少年の表情が一気に険しくなった。

 なにか思い出したのか、そしてそれが嫌なことだったのだろう、表情は苦しんでいるようにも見えた。

 しかしその後徐々に落ち着きを取り戻し、すぐに冷静に戻った。



「そういえば、なんか異世界で戦ってたかも、です」


「・・・!! そう、そうなんだ。君はとある世界に召喚され、魔王と戦った。そして瀕死の怪我を負った君を、僕の仲間が見つけて、ここまで連れてきてくれたんだ」


「そう、ですか・・・それはありがとうございました」



 少年は心中で静かに、「敗北」を噛みしめる。

 そして、あたりを見回す。



「あの・・・」


「あぁ、彼女ならすでに任務に戻っているよ」


「そうですか・・・」


「まぁまぁ、いずれ彼女にも会えるさ。それよりも、取り敢えず自己紹介から始めよう」


「分かりました。僕の名前はーー」


「ユウ、でしょ。もちろん知ってるよ」



 男はニコッと笑みを浮かべる。



「僕はリース、さっきも言ったと思うが、所長さ、一応ね。宜しく」



(リースさんって言うのか・・・なんかモテそうな人だな・・・)


 ただ、一つだけ思うことがあるとすれば、リースさんの髪が金色なので、「なんかチャラそう」という感想を持たざるを得なかった。

 そして、その視線に気づいたリースさんは自分の前髪に触れながら、

「これは生まれつきなんだ」と自慢気に語った。



「それにユウくんだって、人のこと言えないでしょ」



 そう、ユウも黒髪ではあるが、前髪に少し金色のラインが入っている。

 早くも見事にカウンターを受けた。



「取り敢えず、こっちに座りなよ」



 ずっとベッドにいるのもあれなので、椅子へ移った。



「あの・・・」


「分かってるよ、君の疑問には答えよう」



 そう言ってリースは、簡単にこの世界のことについて説明してくれた。


 ・ここは、俗にいう「異世界」のうちの一つであること。 

 ・そして、「竜の巣」という組織の研究所のようなところであること。



「まぁ取り敢えず、君も疲れているだろう。メイ・・・」



 そう言いかけて、リースさんは口を抑え、咳をした。

 恐らくさっき飲んでいた飲み物でむせたのだろう。


 すると、女性が会話に入ってきた。

 メイド服を着ており、美しく、艶のあるベージュの長髪をなびかせている。

 そしてその、どこか儚さを覚える、それでいて力強くもある、ブロンズの瞳で僕を捉えている。

 その様相とは裏腹に、動きに一切の無駄がなく、何かを秘めている、そんな感じがした。



「うまくまとめた感じを出していますが なぜ変なところで咽せるのですか あなたには威厳というものがないんですか」



 抑揚のない声が部屋に響く。

 決して声が大きいわけではないが、何故かよく響く声だ。

 そして、リースはその抑揚のない声から僅かな怒りを感じ、身をすくめている。



「それはーー」


「まったく そういうところがだめなのです」



 正論攻撃をモロに喰らい、リースは精神に多大なるダメージを負った。

 リースは倒れた。



「メイサです ユウ様 改めまして宜しくお願いします」



 リースが瀕死状態になってしまったがしかし、そんなことなど全く気にする様子もなく、淡々と自己紹介を済ます。



「あっ、はい!」



 今日一番の大きな声が出た。

 「この人には逆らっちゃ駄目だ・・・」と、そう本能が絶え間なく警告してくる。


 とそこへ、復活したリースが口を挟む。



「えーと、彼女は僕の秘書だ。とても優秀なね」



(秘書・・・上下関係逆転してるな・・・)


 そんなことを思って苦笑いしていると、突然背後から声をかけられた。



「ねぇ、美形のキミ。今度お姉さん家に遊びにおいでよ!」


「!!」



 ふわっと、何かいい匂いがした。

 「陽キャな女子の匂い」という表現が一番しっくりくる感じのものだ。

 そして思わず振り向くと、謎の美女の顔が、自分と僅か数センチ程度の距離にあった。



「君今彼女いる? あ、因みに私は独り身だよ〜」



 踏み込んだ質問等々により、頭が麻痺しかけている。


(えっと、これは僕をからかっているのかな? こういう時ってどうしたら・・・)


 そうして対応に困り、またあまりにも陽のオーラが強いので目を背けて考え込んでいると、彼女はそれを見て、またこちらをからかってきた。



「照れてるの? えっ、かわいい」



 と、そこでメイサが



「ナンパなら他所でやってください」


「え〜、嫉妬? ・・・あっ! もしかして、この子を独占しようとしてるの?」



 そう言う彼女は、まるで小悪魔のような、悪戯な笑みを浮かべていた。

 そして何となく、メイサの機嫌が一段と悪くなった気がした。



「私の名前はセイナ、副所長してま〜す!」



 なんと、バリキャリの方でした。


(陽キャって、こういう人のことを言うんだろうな・・・)


 なぜか心にダメージを受けた。

 しかし同時に、明るいセイナに対する好感も持った。

 するとリースは珍しく、この切りのいいタイミングを逃さなかった。



「取り敢えず、話の続きをしようか」



 リースがすかさず切り込む。           



「えっと、ユウ君にはここで働いてもらいたいんだ」


「働く・・・?」


「っとまぁ、詳細は明日話すよ」


 

 特にやることも、自分がこれからどうしたら良いのかも分からないので、一応返事をした。



「ではメイサ、彼を頼んだ」


「承知」


「えっ?」


「ユウ君! また今度!」


「ユウ君、また明日」


「えっ?」



 一応抵抗はした。

 しかし、残念ながら勝つことはできず、そしてメイサによって、丁重に連れて行かれた。




 ユウとメイサが部屋を出てしばらくした後、リースは徐ろに部屋を出て、どこかへ歩きだした。

 その後別の部屋に入り、何かを大事そうに手にした。


 しばらくそれを眺めた後、今度は真剣な顔で、何かを考えだした。



「・・・よし! 週末は新しい盆栽を買いに行こう!」



 キリッとした表情で、一人そう呟いた。

 そう、理事長は趣味の盆栽について深く考えていたのだった。

 


「そういえば・・・ユウ君、これから大丈夫かな・・・? でもまぁ、大丈夫か!」



 彼は楽観的だった。

ある日のこと、今日もリースは盆栽を眺めている。


「ん?なんか、変な形になってるな・・・。」


そう言って、盆栽を不思議そうに眺める、と、


「これ、読めるぞ!えっと・・・繋げて読むと、”ポイントを入れて作者を応援しも!”だ!」


(も?これは多分、メイサがやったんだよな・・・この”も”も・・・。)


そして、少し考えた後、リースはプッと吹き出した。


(メイサ・・・間違えたのか。あいつでも間違えるんだな・・・フフっ。)


しばらく笑った後、調子に乗ってメイサに話してみた。

すると後日、いくつかの盆栽が、禿げている状態で発見され、リースは調子に乗ったことを後悔した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ