一章ー7 キング
「!! あれは、変異個体!」
「変質個体?」
「取り敢えず、かなりつよいです」
更に、そいつを取り囲むように、数体のマジックウルフが出現した。
まるで、王を護衛するように。
セツは、直ぐ様その個体の危険性を感じ取り、ゆうに指示する。
「ゆうさん撤退です! 早くギルドn・・・」
と、突然背後に敵が出現し、奇襲を受けてしまった。
「セツさん!」
しかし、流石はA級。
咄嗟の攻撃にもかかわらず、反射で体を斜め後ろに反らし、被害を肩をかする程度に抑えた。
そしてそのままカウンターを決めた。
見た目にそぐわぬ実力、愛嬌と戦闘力を兼ね備えたまさに最強。
「大丈夫ですか?」
セツは、無言でうなずく。
そうしてまた、ゆう達は敵を見据える。
また敵も同様にして、こちらを見据える。
(どうやら、逃してはくれないみたいだな・・・)
その邪なる目には、先程までとは違い、驕りは一切ないように感じる。
やはり特殊個体にもなると、高度な知能を持ち合わせているのだろうか。
すると突如、前足を強く踏み込み、咆哮した。
それに呼応するように、”影”から新たな個体が10体出現した。
そして再度、”キング”が咆哮する。
しかし今度は、敵が増えるわけではなく、一斉に駆け出した。
「!?」
意表を突かれ、ゆうは一歩出遅れる。
そしてその遅れが、このスピードを武器とする相手との戦いにおいて、命取りである。
が、しかしセツは依然として冷静である。
「ゆうさん、取り敢えず雑魚を散らして、その後に本体を二人で叩きましょう!」
「!! りょ、了解です」
狼は、みるみるうちに距離を詰め、あっという間に目の前へと来てしまった。
(考えるな・・・動け!)
フォームド
「< 具象剣 >」
例のごとくその愛刀で、勢いそのままに迫りくる相手を一刀両断。
そしてセツも、体術のみで迫りくる敵を制圧した。
お互いの無事を確認し、キングの方へと意識を向ける。
だが、そこには既にキングの姿がなく、魔力の痕跡もさっぱり消えてしまっていた。
(さっきまでいたはずなのに・・・気配が全くない!)
突然訪れた静寂。
今宵は満月、そこにあるのは、月の光をいっぱいに浴びる二人だけ。
この静かさ、心地よさが、二人の精神を逆撫でする。
静寂があれば、次にやってくるのは勿論喧騒。
セツに不穏な影が近づく。
キングは、獲物を確実に仕留める機会を虎視眈々と見計らっている。
しかし、その余裕が、自分が狩る側だという安心感を生み、その安心感が、気の緩みに繋がった。
狩りにおいて、一瞬の油断が命取り。
そしてその油断が、狩る側から、狩られる側へと立場を反転させる可能性を孕んでいることは、言うまでも無い。
ゆうは、突然セツの元へと駆け出す。
そして、彼女の手を取り、自分の元へと引き寄せる。
「えっ、あの・・・ゆう・・・さん?」
セツは、突然のゆうの行動に、動揺している。
月の光が影を作り、顔はよく見えないが、目元に一瞬輝きを感じた。
ゆうは、そんなことはお構いなしに、携えていた剣に、本能的に魔力を込めて、地面、いや、自分の影を斬った。
「グハッ・・・」
すると、影の中から何かが飛び出した。
「これは・・・一体どこから?」
「僕の影から出てきたんだ」
そう、キングは、セツをより危険だと判断し、手の内が露見してしまう前に、セツの影に潜り、奇襲を試みたが、そこにゆうの影が重なり、ゆうの影に移動せざるを得なかった。そして、その移動するタイミングでゆうに切られたのだ。
飛び出した何かは、咄嗟に木の陰に隠れるが、そのシルエットは獣の類のそれではない。
「人間、特にお前は危険だ!」
そう言うと同時に、そのシルエットは突如消えてしまった。
しかし、セツはなにか思いついた様子でいる。
「ゆうさん、私から離れてくれませんか? できるだけ」
真面目な顔で、真剣な声で言われ、さっきの事に対しご立腹なのかと思ったゆうは、短い返事をして、直ぐ様セツから距離を取った。
ゆうがある程度離れたことを確認すると、セツは、魔力を収束し始めた。
それと同時に、空気が徐々に冷却されていき、ゆうも少し寒気を覚えた。
そして何故かメイサの特訓を思い出した。
それからほんの数秒後、セツを中心として、円を描くように周囲が一瞬にして凍った。
キングは思わず姿を表す。前足のあたりが僅かに凍っている。
セツの方に目を向けると、雪のように白く、美しい手に、自分の身長と同じ位あろうかというほどの、鞘に入っている大剣が握られていた。
キングは、本能的に身の危険を感じ、咄嗟に距離を取ろうとする。
一方のセツは、慣れた手付きで大剣の柄の部分に手を掛ける。
「抜刀 ’氷雪ノ魔剣’」




