一章ー6 マジックウルフ
〜ギルド〜
「お疲れ様です。こんな早く戻ってきて、どうかしたんですか?」
「いえ、達成報告をしに」
「なるほ・・・早くないですか?」
ミナは戸惑っていたが、取り敢えず処理してくれた。
「あと、この依頼の依頼主って、ギルドですよね」
そう言って、依頼書を提示する。
すると、
「おお、良かった! 君がそれを持っていて」
彼女の背後から、男性の声がした。
ガイさんだ。
「良かった?」
「そうなんだよ。この依頼はそもそも君のAランク昇給の審査のためのものだったんだ」
「そうなんですか!?」
しかし、当時の状況を思い出してみると、普通に依頼の中に混じっていて、個人宛のものには到底思えなかった。
どうやら何か事情が、大方誰かが一緒にしてしまったのだろう。
「それを、ミナくんが紛失してしまってね・・・はぁ・・・」
なんと、予想はズバリ的中、また、犯人はまさかの目の前にいた。
やはり彼女はポンコツのようだ。
また、当の本人は最初のうちは目をそらしたり、顔を背けたりと、若干の抵抗を示していたが、とうとう深々と頭を下げた。
「大丈夫ですって」
「・・・いえ、そういうわけには・・・・」
なんとしてもそれを止めようとはしなかったので、彼女の意志を尊重し、しばらくそのままにしておいた。
「とにかく、君が選んでくれて良かったよ」
一方、そう言って安堵の表情を浮かべるガイさんの顔を見ると、本当に安心したんだろうなというのがよく感じ取れる。
それと同時に、苦労人なんだなと、少し同情してしまう。
「まぁ、それはおいておいて、本題に入ろう。依頼内容は、マジックウルフの討伐だ」
(マジックウルフ? なんか、ぱっとしないな)
「これは、レベル的にはAランクに匹敵する。なので、これをクリアすれば、最速のAランク昇格だ!それから、念の為一人、Aランクの冒険者を付き添わせるから、死にそうになったら助けてもらうといい。」
その後に、「まぁ、いらぬ心配だろうがね」と付け足した。
ゆうは、他人からの期待がくすぐったくて、微笑する。
と、そこへ一人の少女が現れた。
雪のように白い肌、透き通るような目、そして薄く青みがかった髪。
勿論ロングだ。
「あなたが、ゆう・・・さん?」
「・・・」
声もとても可愛らしく、つい返事が遅れてしまった。
「あの・・・?」
「あっ、すいません、つい。そうです。宜しくお願いします」
「はい!」
「ではセツくん、大丈夫だとは思うが、本当に大変なときは助けてあげてほしい」
なるほど、つい「宜しくお願いします。」などと言ってしまったが、どうやら本当に彼女が付き添いのAランク冒険者のようである。
(僕は、本当に任務に集中できるのだろうか・・・)
実力はさっぱりと分からないが、ビジュアルと声はSランクオーバーであり、流石に(嬉しさ等々により)動揺してしまう。
そんなこんなで、本日最後の任務へと向かった
〜旅路にて〜
「かなり遠くまで来たな・・・」
ギルドを出てからもうかなりの時間が経過した。
もうすっかり日もくれてきている。
「そうですね。結構歩きましたね」
そう言いつつも、セツは、全く疲れていなさそうだ。
「マジックウルフは、夜に現れるので、時間帯的には多分、ちょうどいいと思います。」
そう、もう既に空は夕焼け、また、風もやや冷たくなってきた。
(夜に戦わないといけないやつもいるのか・・・)
こうして、どんどん歩みを進める。
しばらくして、いい感じの場所に出た。
(なんか、絶対にここだわ。・・・多分)
確証はなかったが、なんとなく確信した。
「このあたりですかね?」
「・・・多分?」
「私もあんまりマジックウルフについては知らないんですよ・・・。もっと予習してくれば良かったです・・・」
健気すぎて可愛い、そう思った。
そしてゆうは、徐ろに空を見上げる。
「なんか・・・月が綺麗ですね」
本当に月かは定かではないが、とても美しかったので、つい言葉にしてしまった。
すると、セツが少し顔を赤らめる。
「ゆ、ゆうさん・・・」
「ん? どうかした?」
「いっ、いえ・・・何でもないです」
どうやらゆうは、ポンコツらしい。
「しかし・・・なかなか出て来ないなぁ」
「ゆうさん・・・あれ、何でしょう?」
「ん? どれ?」
セツは、やや離れた林のようなところにある、影を指さした。
「あれは・・・木の陰、か?」
その後も念のため、観察を続けていると、影が突如立体になり、みるみるうちに狼の形になった。
「!!」
「ゆうさん!」
「あぁ、あれが・・・マジックウルフ!」
見た目はちょっと大きい狼だが、周りには魔力が満ちているのがわかる。
だがしかし、ゆうは自信に満ち溢れている。
竜を狩った後なので、どうしてもそれと比べると、易しく感じてしまうのだ。
だからといって、相手を侮っているわけではない。
不意に、狼と目が合う。
その銀色の瞳と、ゆうの瞳との視線が、一直線上で確かに繋がった。
徐にゆうは、尚も狼を見据え、目を瞑り、集中力を高めていく。
無論、あの辛かったメイサとの特訓の日々を思い出して。
こうすることで、命の危険を感じ、決して手を抜かず、全力で戦うことができる。
と、狼が勢いよく駆け出した。
狙いは言うまでもない。
大地を力強く踏みしめる音が、刻一刻と迫りくる。
だが、ゆうは依然として瞑想している。
ついに、狼が飛びかかった。
フォームド
「< 具象剣 >」
敵の攻撃を待っていたかの如く、タイミングよくカッと目を見開いた。
そしてその、自慢の剣撃を、技を右前足及び腹部に叩き込んだ。
カウンターだ。勿論、致命傷である。
狼は、飛びかかった勢いそのままに、方向を変えることなく体を弾き飛ばされた。
ゆうは、念の為死体を確認するべく振り返る。
しかし、そこには死体がなかった。
「どこだ?」
いくら周囲を見回しても見つからない。
「まさか、致命傷ではなかったのか? それとも・・・」
突然、ゆうは強大なオーラを察知した。
そして思わず後ろを振り返る。
すると、風格漂う大型の、他とは明らかに様相が違う個体が、そこには居た。




