表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界チートは標準装備〜ピンチでも、ピンチじゃなくても起死回生〜  作者: 悠悠ー自適
二章 二等世:プロドシア篇
108/119

二章ー57 最後のあがき

「今のは・・・間違いない、”N”だな」


 ゆうとクイーンは、顔を見合わせ頷く。

 双方同じ意見のようだ。

 しかし、肝心のN本体の姿が見えない。


 ーーチリン、チリンーー


 ここで第二の鈴の音が鳴った。


「空は・・・うん、まだ暗いな」


 閉鎖空間内に、静かに、雄大に広がっている夜空、そこには薄っすらと輝く星が疎らに存在、だが少し殺風景のような、寂しいような感じのする景色だ。

 またいつの間にか、この空間に魔王の姿はなく、どうやら既のところで回避したらしい。


「さて、普通ならこの段階でアウトなんだけど・・・どうする? 僕がちゃっちゃとーー」


 姿を見せない敵、加えてこの隔離空間、状況はあまり芳しくないはずであるが、二人はそんな事を気にする素振りはまるで見せない。

 そしてゆうは、自分がこの状況を手っ取り早く処理しようかと持ちかける。

 だが、クイーンはーー 


「じゃぁ折角なので、あなた・・・”あれ”、お願いしてもいいかしら?」


 ”あれ”と、何かをゆうにおねだり、するとゆうは微笑み、快く承諾する。


「うん、じゃぁ・・・・・・」

「ん・・・」


 ゆうは片方の膝を付き、クイーンは少し恥じらいながら、左手を差し出す。

 ゆうはその手を取り、ゆっくりと自分の口元へと近づけーー薬指に口づけをした。

 

「・・・いっておいで、ニュイ」


 ーーチリン、チリン、チリンーー


 今、三度目の音が鳴った。

 

 気がつくと、ゆうはもとの場所へと戻ってきていた。


「どうやって・・・あれから逃れることができるなんて・・・」


 帰ってきて早々、魔王は「有り得ない・・・」とかなり驚いた様子で、こちらを奇妙なものを見るような目で見てくる。

 「・・・別に、意外となんてことないと思いますけどね」と、ゆうはお返しにそう言って、笑ってみせた。

 すると余計に魔王がものすごい顔でこちらを見てくる。

 

(・・・でも結構魔力持ってかれたな・・・。基本的にさっきの3カウント目でアウトってわけか・・・これは確かに、かなり無理ゲーだな。それにまだ、全然力を出し切っていない、というよりも寧ろ、出し切れていないって感じだったけど・・・もし僕たちがいなかったら、こいつを誰が倒したんだろう? ・・・やっぱアフォスかな? てかそれ以外いないか)


 色々と考えることはあるが、今は別にどうでもいいと、一度それらを頭の片隅へと追いやる。


「さて・・・帰ってくる前に、こっちも片付けておこうかな」 

「クソッ・・・」


 いざ、魔王と向き合い高らかにそう宣言した。




〜隔離空間内〜

 ゆうがいなくなった隔離空間内、しかし未だ、そこには彼女の姿があった。

 ただ、やはり未だに目を閉じている。


 と、そこへようやく、しびれを切らしたらしいNが姿を表した。

 出てきたのは可愛らしい見た目の、手のひらサイズ程の黒い猫だ。

 毛色がかなり美しく、綺麗なまでの黒であり、光の加減によってはこの夜の闇に紛れてしまう程だ。

 そしてNは、この隔離空間内で平然としており、また襲ってくることもない彼女を不気味に思ったのか、やや彼女から離れ、そこから魔術を行使する。


「にゃ・・・< 赤魔術(クラスレッド)紛夜凶術(ハイドバーファ) >」


 夜に乗じて迫りくる魔術、視認できないが確かに、こちらへと向かってくる魔力を感じる。


 するとニュイは、やはり目を閉じたまま、Nとは反対方向を向いた。

 迫りくる魔力に反応し、ゆらゆらと揺れる尻尾には、一振りの剣が握られていた。

 そしてーー


 鞘に入ったままの剣を、尻尾で器用に、タイミングよく縦に振り、ピッタリ魔術を一刀両断した。

 その後剣を素早く右手に持ち替えた。 


「にゃっ・・・」


 「危険な剣だ」、Nは本能的に理解し、余計に警戒感をつのらせていく。

 そのサイズ感はかなり一般的なものであり、彼女の細く美しい腕にピタッとフィットしている。


「久しぶり、ね」


 ニュイはしばらくその剣を愛で、そしてゆっくりと抜刀、ようやくその特異な刀身が、姿を表した。

 それはNと同じように、いやそれ以上に完璧に近い黒、というよりも、もしかしたら光をも飲み込んでしまっているのかもしれない。

 故に刀身は全く見ることができず、僅かに柄の部分を目視することができる、その程度だ。

 だが未だに力をセーブしていると見え、薄い魔力の膜が、幾重にも重なり恐らく刀身であろう部分を保護している。


「ごめんなさいね・・・これが、”本物”の力よ」

 

 ようやく、ニュイはその目でNを捉えた。

 それと同時に溢れ出す魔力、圧倒的な存在感、そしてこの夜空さえも支配するような、神々しい何か。

 その異常なまでの雰囲気の前に、世界は止まって見えた。

 

「 星星の行く末・・・光と闇、境界・・・終末の生、原始の死・・・導かれて、また、結び消える 」 


 星星が今、動き始めた。

 空に浮かぶ星の、一つが光りを失っては、一つが闇を失う、その過程の繰り返し。

 もうここは、Nの支配する限りではなく、空間は歪み始め、そこには秩序など存在する余地などない。

 

「 胎動と休止・・・行動と静止・・・巡り・・・廻って・・・夜に・・・、・・・飲まれる 」


 その時ーー空間が暗転、僅かな星の輝きさえも届かなくなってしまった。



「< 星星(せいせい)隔縁(かくえん)(しめ)死想域(しそういき) >」



 今、ようやく幕があがるようにして、だんだんと光が戻ってきた。

 見上げると、雄大な夜空が堂々とこちらを見ている。

 そこにある無数の星星の、その一つ一つの輝きが周囲を照らし、それに囲まれるようにしてある、月の美しいことこの上なく、中央天高くに鎮座している。

 

「月は、自ら光りはしない・・・照らされて、美しくなる・・・どう? これってとっても素敵なことじゃない?」


 ニュイはそう語りかけ、しかしNは全く反応しない、できない。

 なぜならばーー


「抜刀’宵闇ノ魔剣’」


 完璧なその不可視の剣で、Nを貫いた。

 抜刀の合図とともに、剣を保護していた魔力の層のいくつかが剥がれ落ち、よって先程とは威力は比べ物にならない。

 その理不尽とも言える攻撃の前に、Nはどうすることもできず、ただされるがまま、すっかり瀕死状態だ。


「そう・・・この’宵闇ノ魔剣’の刀身は、捉えることができない・・・光を吸収するから・・・その光で、刀身はどこまででも伸びていく・・・光を求め、刀は向かっていく・・・」


 するとようやくNは本性を表したーー大きな大きな、真っ黒な真っ黒な虎の魔獣へと変貌した。

 先程とは比にならないほどの巨体で、せめてニュイに一撃でも与えようと、必死に前足を伸ばすが・・・ゆっくりと動きが鈍っていき、数秒もしないうちに、パタリと力が抜けてしまった。

 Nは力尽きてしまった。


 ニュイはそれを確認して、剣を納めた。

 すると鞘諸共、それはまた、忽然と夜の闇へと消えた。


「・・・解除」


 役目を終えた夜空は次第に畳まれていき、ニュイはそれを最後まで見届ける。




〜元の世界〜

「ただいま・・・あなた」

「ん・・・あぁ、おかえり。無事で良かった」


 クイーンは帰ってくるとすぐ、ゆうへと駆けては思いっきり抱きついた。 

 尻尾を様々激しく振っている様子から、相当ご満悦なのだろう。


「でっ、出てきて早々何イチャイチャしてるのよ!? 」 


 すると外野のフィーネルから、このような苦情が一目散に飛んできた。

 声的にはかなり怒っているようだが、本人にとっては大分刺激が強かったようで、目がアチラコチラを彷徨い、表情もどれともとれないような感じである。

 それを見てハイユウは大爆笑し、またクイーンはやはり冷静に、「ごめんなさいね」と余裕と貫禄を見せつける。


「・・・そういえば、どうしてあの方たちがここに?」

「えっと、それはどっちかって言うと僕たちが元の場所に戻ってきたんだよ」


 そう、今いるのは玉座の間、二人と魔王は勝手にここからいなくなり、そして今、勝手に戻ってきたのだ。


「エヴィリオさん・・・」

「あぁ、姫様ならしっかりと保護しとるわい」


 部屋の隅に座るエヴィリオと、まだ熟睡中の姫様がそこにはいた。

 ゆうは一先ずひと安心、これで彼の計画は、完璧なまでに進んでいる様子。 


「へ、陛下・・・!」

「ん? どうしたの?」

「いえ・・・ですが・・・いえ・・・いや、ですが・・・」 

 

 まだゆうがモフモフを堪能しているところへ、マブロとの対決を終えたアフォスが帰ってきた。

 そして真っ先に目に入ったゆうとクイーンの光景を見て、こちらも若干挙動がおかしくなった。

 正確に言えば・・・目が虚の世界を見ている。

 と、「流石にもう」といった感じでゆうはようやくモフりを終えた。


「さて、魔王・・・えっと・・・そろそろ降参しませんか?」


 今まで沈黙していた、いや、ゆうにまるで歯が立たず、もう殆ど体が動かない、動かす気力のない魔王に問いかける。

 だがピクリとも反応しない。


「僕はただ、あなたのお師匠さんのことを聞けさえすれば、それでいいので」


 それが、魔王の地雷を踏み抜いた。

 体は動かさず、口を動かし魔力を込める。


「< 召魔壊躙(カロ・パラジア) >」

「!?」

 

 一同驚愕、まさかあの大規模なものを、今の短時間で発動させるとは。

 いや、もしかしたらショートカットを作っていたのかもしれないが、それでも十分称賛と、そして脅威に値する。

 皆の緩んでいた表情が一気に固くなる。


「大丈夫・・・皆は下がってて」


 ゆうは率先して前へ、そしてその他は誘導通り後ろへ。


「”魔王召喚”」


 ーー玉座の間に、三つの大きな魔力が出現した。

[雑談]滑り込み

[ブクマしましょう!!]

[予告]次回の更新は、26日を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ