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異世界チートは標準装備〜ピンチでも、ピンチじゃなくても起死回生〜  作者: 悠悠ー自適
二章 二等世:プロドシア篇
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二章ー56 戦闘中のーーモフモフ

若干長め

〜The past〜

「アントラス、お前はこの由緒正しきアフォス家の次期当主だ。如何なる状況においても、失敗は許されない」


 ーーそんな事言われても・・・


 この世界を既に五年生きていた彼であったが、未だに父親に甘えたことがない。


「お前は特別な人間だ。才能に満ち満ちている、天に愛されているんだ、私のように。成功は、天に約束されている。失敗などありえない」


 ーーそう、なのかな・・・?


「年齢など関係ない、誰にも負けてはいけない」


 ーーうん・・・そうだね


「お前は常に勝利し続ける、それがーー」


 ーー当然です。


 幼少の頃より、スパルタなんて生易しいくらいの努力を強いられてきた、いや、それは努力ではなく、当然の行為であると教わってきたのだが。

 最初は戸惑いこそしたし、やはりまだ所詮は幼い子供、親の愛情を欲していた。

 だが、そんな事を言える環境ではなかったし、余裕もなかった。 


 父や母の言う通り、努力はした、負けることはなかった。

 だからこそ、次第にそれが当然だと思った。

 

 そんな人生を歩む中、九つになって間もない頃、転機が訪れた。


「あの男に勝てば、我家は裏のみならず、表の世界においても最強になるのだ。そしてお前が当主になる頃には、想像もつかないほどの繁栄を極めているだろう。だから・・・分かっているな?」


 そうして気がつけば、大の大人との決闘だ。

 しかも今回は、どうやら負けられそうにない、負けてしまえばそこで、自分が終わるーー齢10にも満たない小さな体は使命感と、そしてどうしようもない程の恐怖に駆られた。

 そんな自分を諌め、木刀を強く握りしめ、決闘の間の、その中央へと向かう。

 瞳に映るのは、親の顔でも、聞こえてくるのは下賤な貴族共の野次でもなくーーただ、自分の鼓動を聞いて、未来にあるべき勝利だけをその瞳に映して臨む。


「君がそうか・・・悪いけど、手加減はしない」


 ーー対峙した男は、あまりにも大きかった。

 勿論物理的にもそうなのだが、それ以上に強い信念と、何か得体のしれない強さを感じた。


 ”正義”、彼を見て、そんな言葉が自然と頭に浮かんだ。


 ーー開始ーー


(まずは初撃、長期戦になるのは不利、ならばここで相手の大勢を崩し、僅かにでも油断しているうちにダメージを与える・・・!)

  

 そうして挑んだ初撃、剣を合わせた感覚ですぐにわかった。

 

 ーーこれは駄目だ。


 人生始めての経験だった。

 圧倒的な実力差の前に、小細工など通用しない、余裕などない。

 そもそもこちらの思惑などまるで蚊帳の外、意味を持つことさえできなかった。

 その後超高速の剣撃の応酬、思考する猶予など与えられず、何とか攻撃を喰らわないよう必死に剣を振る、ただそれだけ。

 そうしてだんだんと、確実にこちらが競り負けていく。

 

 あぁーー怒り狂った両親の顔がーーいや、思えばまともに両親の顔など見たことがない。

 いつも自分の側にあったのは、剣だけだ。


 ーー苦しい、一撃一撃が、重い!

 ーーもう・・・やめたい。


 相手に圧倒されていく中で、そこでふと、自分が僅かに手を抜いている事に気がついた。

 別に、本気を出したところで、結果は大して変わらないだろうが・・・。

 そこでようやく、自分が潜在的に、敗北を欲していることに気がついた。

 もう、開放されたかったのかもしれない。

 

 ーーそれなら・・・


 自分と向き合った途端、ふわっと身体が浮くような気がして、こころを塞いでいた、大きな大きな岩が崩れるような気がして、楽になった、徐々に、剣を握る力は弱くなっていった。

 そしてーー


 気がつけば、自分は彼に勝利していた。

 静かに頷く父と母、勿論僕を褒めてくれるわけでも、頭を撫でてくれるわけでもないが、どうやら喜んでいるようだーーこれから来る繁栄と、自分の権力に酔って。

 だがそんなことよりも、当の自分は混乱、それ以外ない。

 自分が勝つ要素など、彼が負ける要素など、どこにもなかった。

 しかし彼は最後、僅かに笑っていた、彼の瞳は、慈愛に満ちていたーーこれこそが、きっと、親の子に対する愛情のこもった瞳なのだろう。


 ーー彼はわざと負けてくれたのだ。


 僕の目を見ようとしない父親、僕に微笑みかけてくれない母親、そしてーー僕を気にかけてくれる彼。


 その後彼とは懇意にさせてもらった。

 彼に親の愛情を求めて、可能な限りまで、彼とともに過ごした。

 

 なんでも、彼にも息子がいるらしく、今度合わせてくれるとか。

 もしかしたらそこで、初めての友達ができるかもしれない、剣以外の、初めての。


 そうして僕たちは、着々と信頼関係を深めていった。


 気がつけば、僕はもう10歳になり、その晩のこと ーー 彼は死んだ、殺された。


 まさか、あの人が殺されるだなんて・・・一体誰が、どうやって?


 彼を殺したのは、(僕の)父親だった。

 だから僕は、躊躇なく(僕の)父を殺した ーー (僕を愛してくれる、でも他人の)親の仇だから。


 あとから裏で聞いた話では、どうやら父は、魔王によって操られていたらしいが、しかしどこからがそうだったにせよ、あの人を殺したことに変わりはないし、それに他人に操られる程度の人間だったのならば、別に殺されても仕方のないことだと思う


 ーー最強などとは、烏滸がましい。




〜大広間〜 

「そういえば・・・ここがあの決闘の間、でしたね」


 例の一件の後、貴族たちは、アフォス家が、子供を決闘に出させたことを問題視し、決闘というものを全面的に禁止、そしてここは新しい大広間へとなった。

 

「・・・」 


 ふと、昔の記憶がぽつりぽつりと思い出された。

 確かに、ある意味では彼の父親を殺したのは自分であり、また自分を満たすため、彼から父親を奪っていたのも事実。


「それは・・・申し訳ない、なんて言葉ではとても・・・」


 そして、燃え尽きてしまった彼に、手を合わせる。

 もしかしたら、彼も被害者だったのかもしれないと、また彼の父のことを思い出したので、余計にこうするのが自然なことだと、そう思ったからだ。


「これは火葬する・・・いや、陛下に指示を仰ごう。それに彼にだって、遺族が居るだろうから・・・」


 そうしてアフォスは、彼に背を向ける。


「そういえば父は、私が女なので、周囲の貴族たちになめられないように・・・・・・いや、別にいいか・・・なぜなら私はもう、既に素晴らしい主と出会ってしまったのだから」


 過去よりも、今を見たい。

 自分のことよりも、ゆうのことを想っていたい。

 なので最後に一言、過去に別れを告げる。

 

「彼は確かに強かったですが、”最強”ではなかったようです。・・・どんな強者でも、案外些細な油断で命を落とす、所詮その程度なのです。そういったことを踏まえると、”最強”という称号に意味はなく、実は最後まで生き残ったものこそ、最も強いのではないかと、私は思います・・・」




〜北区〜

「ーーそれで、状況は?」

「・・・」


 ゆうは、モフモフに問いかけるが、一向に返答は来ない。

 

「あの・・・クイーン・・・?」

「何ですか? あ・な・た」


 クイーンは何となく色っぽく応答、更に彼の耳にふぅーっと優しく息を吹きかける。

 ゆうは思わず顔が緩んでしまうが、しかしなんとか自分を保ち、「距離感オカシクナイ?」と若干カタコトになりながらも、やっとの思いで尋ねる。 

 距離感ーー詳細に言うと、クイーンがゆうに背後から抱きつき、ゆうの腕には何か柔らかいものが押し付けられ、顔はもうミリ程しか離れておらず、おまけに尻尾でガッチリとゆうの脚をホールド中、室外かつ人目があるのも気にせず、まさに完全形態と化している。


 と、そこへーー 


「< 赤魔術(クラスレッド)後方氷激(クル・アイス) >」


 私は何を見せられているんだと、魔王は魔術を行使、ゆうに抱きつくクイーンのその背後から、氷属性の一撃をお見舞いしようと企んだが・・・残念。


 クイーンは最早振り返りもせず、ゆうに巻き付けていた尻尾を放し、そしてそれをブンと強く一振り、するとその氷の一撃は、鋭利な攻撃は、粉々に粉砕された。


「何!?」


 魔王は驚き、一方クイーンは、「ウフフ」とまた尻尾をゆうに巻き付ける。

 するとーー


「ク、クイーン様ぁ!!!」

「・・・どうしたの?」


 突如、一般及び非一般の男たちが、騒々しく群がってきた。

 その中にはなんと、マブロの手下やヤザの手下もいる。


「一般人の避難は完全に完了、更に護衛もついています!」

「魔物の方も、大方全て狩り尽くしました!」

「そう・・・ありがとう。すごく・・・助かったわ」

「ぃっ、いえ! そのお言葉だけで、十分です!」


 彼らはどうやら彼女の手下であるらしく、また彼女からの感謝の言葉が心に染みたのか、それを大切に抱きしめて、中には感動のあまり涙を流すものもいる。


「なっ・・・あなた達、何をやっているの? マブロを裏切るの?」


 魔王はその中にいた、マブロの手下に怒気を混じらせ問い詰める。

 しかし彼らの顔を見ると、もうすっかりと腑抜けた顔をしており、恐らくクイーンのことしか頭にない。


「・・・(それがし)から説明させていただこう! 某、職業軍人名はシュウヨウ、今年で立派な35歳ではありますが、最近思うに低賃金で労働させられているのではないか、と。そもそも某軍人とはいえ後方担当ただの会計役員として就職したはずであるにも拘わらず、何故かこうして戦地へと送られる、この理不尽は、実に耐え難いものであるといいますか、そもそも適所適材がまるでできていない人事の能力を疑うといいますか、それ以上に某、戦えないのでいても無駄な上に危険ではありませんか・・・などと思っていると、今回遂に犯罪の片棒を担がされる始末、街を破壊し市民を襲い、さっぱり何が楽しいのやら・・・」


 殆ど息継ぎもせず、全く噛まずスラスラと、魔王に対し、マシンガンのように言葉を浴びせる。


「ちょっと早くちすぎてーー」

「働いていても楽しくない上に、ボーナスもクソもない。更に誰も仕事への熱意もなければそもそもとして、組織の上層の方々が、大した理論も掲げずそれ故士気は下がる一方、一体何をしたいのやら、また某も普段なんのために働いているのやら、将来どころか今さえ殆ど見えていませぬ」


 魔王が口を挟む隙すら与えずやはりペラペラと、自分の世界を展開している。

 そうしてようやく話が終わったと見え、魔王はかなり死んだ顔をしているが、残念そうではなかった。


「といった感じに思っていた折、そちらに見えますいと麗しゅう、モフモフ超絶美少女、いやここはレディとお呼びいたしましょうか、まぁそのような素晴らしい方がやってきまして、某を必要だと、使ってやるとおっしゃられまして、某・・・・・・胸が踊りまして候、まさにこれぞ人生、結局のところ某、金などよりもまず、美女を欲していたというわけで、今まで真面目に働いた分の蓄えあれども夢ばかりは金ではどうしようもない。なのでこの千載一遇の機会を逃すという選択肢など最初から存在せず、こうして彼女のもとで働かせていただいております。あっ、勿論とても幸せです」


 締めくくるとともに、このシュウヨウという男は、魔王に深々と一礼、更にクイーンにも一礼、その後静かに下がっていった。


「・・・・・・」


 絶句・・・とにかく何か、見ちゃいけないものを見た気分になり、魔王は言葉も出ない。

 

(・・・あんな変な奴が軍にいたなんて、驚きね。って、そんなことよりも・・・マブロ、五体の魔物、マブロの手下、魔物の雑魚ども、そして私・・・なるほど、彼があれほど余裕なのも納得ね。今のままでは絶対に、こちら側が負けてしまうもの・・・やはりアフォスが敵に回ったのがここまで、いや・・・それを抜きにしても、あちらの戦力は異常と言わざるを得ない。さて、どうしたら・・・! やっとお出ましね)  


 何かが来る、魔王、クイーン、ゆうはすぐに気がついた。


「あなた達はさがっていてくださる?」

「「喜んで!」」


 クイーンは反射で手下に撤退を指示、よってこのフィールドには、三人だけが残された。


 ーーチリンーー鈴の音とともに、猫が「にゃ」と一回鳴いた。


「始まったわね」

[雑談]シュウヨウセリフ長いな!(自分のせい)

   このままずっとクイーン出してたい(願望)

[ブクマしましょう!!]

[予告]次回の更新は、23日を予定しています。

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