二章ー52 東区ーーあいつとヤクザとあいつ
〜東区〜
「ザックさん、また会いましたね」
ランとザック、またもこの二人が対峙している。
周りに人はおらず、正真正銘の二人っきりだ。
「誰かが僕たちを一斉に転移させたようですけど・・・それはさておき、なんかあのヤクザ共にこっ酷くやられちゃって〜・・・ザックさんがあんな姑息な手段を取るだなんて、僕、悲しいです」
「別に・・・あれは頼んだわけではなく、彼らの善意によるものだ。・・・それに、勝手にやられたのはお前だろ?」
またいつものように、ランがその妙な口調でザックをからかうが、しかし逆に軽く煽られてしまう。
これはランも想定外だったようで、少しだけ眉をしかめ、不快感をあらわにする。
「ザックさん、そんな口もきけるんですね? なら・・・もういいですよね?」
それ以上、語ることはない。
二人は剣に手をかけて、仕掛けるタイミングを見計らう。
「・・・っ」
「!!」
「「< 剣技・高撃 >」」
二人同時に飛び出した。
そしてそのまま剣が重なる。
「拮抗しちゃいましたね〜。どうしますか・・・?」
「悪いが、俺にはもう一手ある」
「!?」
空いた左手を上着のポケットに入れ、忍ばせていた銃のトリガーを引いた。
ーーバキュンッ
ザックの上着越しに、それはランを撃ち抜いた。
「・・・ぁ、っ・・・」
ランは胸を抑え、何とかザックの胸ぐらをつかみ、苦しそうに何かを言おうとしたが、そこで力尽きた。
ランの手が無気力に離れ、しかしザックは彼の体を支え、ゆっくりと地面に寝かせる。
そうして一息ついて、ぼんやりと遠くを見る。
「あいつらの仇、やっと・・・とれたな」
ふっと笑い、ほっと天を見上げる。
すると、若干遠くに見知った魔力を感じた。
「ん? これは・・・?」
〜湿地帯〜
ザックは急いで魔力の所在に向かった。
するとそこで、思わぬ再開を果たす。
「あっ! ザックさん!」
そこにいたのは、東区をともに守っていた冒険者たちだ。
「お前たち・・・どうして? 無事、だったのか? でも確かに俺は・・・」
「なんか知らないですけど、気づいたらここにいました!」
「そうか・・・」
ザックと、その周囲に集まる冒険者たち。
彼らはランの裏切りにより、絶命へと至らしめられたのだが、他の地区と同様に、何故かまたこうした形でこの世界を生きている。
気がついたらこうして、ここでザックと再び相見えることができた、らしいがしかし、その過程など大した問題ではなく、それよりも、再会の喜びを噛みしめる。
目に涙を浮かべ、お互いにお互いの存在を確認し合い、安心し合い、それを抱擁という形で全身で享受している。
と、それを遮るように、というよりも注意を向けてもらおうと、誰かが叫んでいる。
「おいっ! てめぇらマジで許さねぇからな! マジ、・・・ぶっ・・・」
そう精一杯大声を出しているのはこれまたマブロの手下だ。
しかし様子がおかしい。
「えっと・・・彼らって、あのマブロの手下だよね・・・?」
「そうですね! なんか起きたらアイツラもいたんで、さっきまで戦ってたんですよ! ほら、俺らあいつらに一回負けてるので、リベンジするにはいい機会かと」
そう言って皆、ニコッと笑う。
何があったかは分からないが、見ないうちにとてもにこやかに、明るくなっている。
しかし一方のザックは深刻な表情だ。
「!! それは・・・覚えているのか?」
「・・・はい、なんとなく。味方のフリして、ランと一緒になって、背後から襲ってきたのは・・・」
「・・・そうか」
「でも、別にどうやら俺たち死んだわけではなかったみたいですし・・・もう、吹っ切れました!」
言葉通り、彼らの顔はとても清々しい。
しかしザックは困った様子でいる。
それは何故か・・・眼の前に居るのは大量のマブロの手下40人と、それを超える数のカエル(巨大)だ。
これは以前にユウも戦ったことのある魔物であり、冒険者が戦いたくない魔物ランキング堂々の一位だ。
そしてそんなカエルの口に咥えられて、マブロの手下たちはもう戦闘不能だ。
「・・・これは・・・何であんな状況に?」
「なんか・・・そっすね!」
なるほど、まともな答えが帰ってこなさそうなのを察し、取り敢えず理由は放置、だが流石にカエルに食われそうな人を放置することまではできず、この数のカエルを一体どうしようかと考える。
すると・・・不意打ちざまに、銃声が。
「この音は・・・」
ザックはそれの正体を知っているが、しかし冒険者一同はそうではなく、ちょっと萎縮して、ザックの方へ身を寄せた。
すると後方から続々と、あの厳つい男たちがやってきた。
「あっ・・・ヤクザの方々・・・」
ぞろぞろとやってきたヤクザたちは黙々と、一撃一殺のコントロールで次々とカエルを屠る。
だがヤクザたちも別に、無用な殺生をしようなどとは思っていない。
「わりぃな・・・でも、向かってくるなら敵やから・・・」
・・・ゲコッ
するとその脅しが本能を刺激したのか、それとも他のなにかに怯えたのか、カエルは直ぐ様去っていった。
こうしてマブロの手下はベトベトになりながらも、なんとか生き残った。
「ヤクザの皆様・・・また今回も助けていただいて・・・ありがとうございます」
「問題ない。それよりも早くここから離れたほうがえぇ。そいつ等連れて早逃げや」
「それは、えっとどういう・・・?」
そんな事を言っていると、突如、ヤクザたちの顔が険しくなった。
「・・・来やがった」
赤い瞳、怪しげな紋様、そして大きな角、それらを携えた、四足歩行の強大な魔物が現れた。
ヤクザはそこへ遠慮なく、雨の如く弾丸を浴びせてやる。
だが、Lはやはりそれをまるで気にせず、防御もせずそれを一方的に浴び続ける。
「組長、やはりだめです」
「・・・そうか・・・お前らはもう下がれ。あとは俺がやる」
撃ち方やめ、ヤクザたちは指示通りLに背を向け潔く退いた。
代わりにヤザだけが前へ出て、Lと向かい合う。
Lは以前のように、何をするでもなくただ、ヤザの瞳を見つめる。
曇りのない、澄み切った瞳、だがそれ故の不気味さがある。
「・・・LllL?」
ーーガタッッ
「悪いが、てめぇのそれは通用しない」
今、確かに何かを仕掛けたようだが、しかしこれまたヤザが何かしたのか、結果として睨み合ったままだ。
Lは困ったような、少し怒ったような反応を見せ、またヤザはそっと日本刀を抜く。
「Llll」
「余裕やな・・・まぁ、それもそうか・・・なにせ今まで誰も、てめぇに攻撃をいれることができなかったから、それで高をくくってるんやろ? ・・・だが、それはちょっとばかし甘いで」
「l:l」
コプ・エンサイス
「『 強化斬撃 』」
日本刀の、その刀身が消えた。
「悪ぃが一撃で、 < 特殊技巧・剣技・虚構感情並一振 >」
そしてヤザは、そっと刀身のなくなった刀を鞘に納める。
するとその瞬間、消えたはずの刃がLの胴体を貫いた。
「・・・lllLLL!!」
それは確かにLを実態として捉え、確実にダメージを与えている。
Lにとっては初めての痛み、苦しみ。
それからどうにかして開放されようと、意味もなくその場で暴れるが、しかし動けば動くほど痛みが増すのか、見るからに元気がなくなっていっている。
「・・・圧倒的な能力・・・見破ることはほぼ不可能、また分かったところで対策など殆どできない・・・でも、もしそれができてしまえばもう、後は倒すだけ・・・防御重視・カウンター志向が裏目に出た結果やな」
そうしてゆっくりと、ヤザは弱ったLのもとへと歩み寄り、優しく手を触れる。
「まぁ・・・おあいこ、やな」
「LLl 」
ヤザが手を離すと、Lは一気に消失した。
「これで、一安心、やな。ゆうちゃんに言われたことも済んだし・・・他はどうやろか? まぁ、皆恐ろしく強いから、大丈夫やろ」
「さ・・・流石、組長です! 一生ついていきます!」
「よし! 念のため街警備しに行こうや」
ヤクザたちは元気いっぱい、そのまま厳つい集団が、街へと向かう。
「ザックさん・・・」
「あっ、大丈夫、いい人だから。・・・じゃぁ、俺たちも街に戻るか」
「そう、ですね」
[雑談]かなり遅れてしまい、申し訳ございません!!
今一旦落ち着いたので、また頑張ります。
[ブクマしましょう!!]
[予告]次回の更新は、11日を予定しています。




