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異世界チートは標準装備〜ピンチでも、ピンチじゃなくても起死回生〜  作者: 悠悠ー自適
二章 二等世:プロドシア篇
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二章ー51 西区ーー美容無双

〜西区〜

 時を同じくして、西区。

 ここでもおおよそ同様のことが起きていた。


「てめぇら・・・さっき殺したはずだが・・・」


 やはりここにも大量にいるのはマブロの手先、相対するは、ザックが手を焼いていた冒険者の問題児たち。

 そして今まさに、またもマブロの手先がこの問題児たちの命を奪おうとしているところだ。


「まぁ何故か、記憶があやふやで、あんまし覚えてねぇから・・・リセットってことで、もう一回殺すね」


 そうしてなんとも勝手な主張のもと、マブロの手先がまたも悪行を重ねてしまう、まさにその際でーー救世主(?)が現れた。


「何だあいつ?」


 見るとそこには、エヴィリオのところにいた、顔パックマンなる人物が優雅に佇んでいた。

 改めて述べるが、この恐らく男であろう人物は、服装や髪型なんかはいたって普通の装いなのだが、何故か顔パック(ととても類似しているなにか)を装着したまま、その上からさらに美顔ローラー(に限りなく近しいなにか)を使用しているのだ。

 その異様さ、そして情報量、これを無視することができようか?

 つい、一同の意識がそちらへ向く。


 と、ここで手先の一人が彼と丁度目をあわせてしまった。

 顔パック(?)越しでよく分からなかったが、何となく、形容し難い寒気がした。

 そうして未だに皆の脳が懸命に情報を処理している中途で、顔パックマンが動く。


 パケット・プロソープ

「< 強制美肌ケア >」

「・・・なんだ?」


 突如、敵の目の前に顔パック(に似た製品)が出現、情報の処理を一旦停止して、それから逃げ惑う敵を追尾して、顔にピタリと張り付いた。

 それは本当にピッタリと張り付いたため、前が見えないわ目にはしみるわ、息できないわでやられた側はたまったもんじゃない、というよりも先ず、普通に生命の危機である。

 生きるため、必死になってそれを顔から剥がそうと、各々格闘している・・・が、そう上手くはいかないようだ。 

 

「この技は、私が独自に編み出した必殺の技。美を追求した私だからこそ編み出せた最高の奥義! 普段から美容ケアをしていない、お肌が荒れに荒れた人に追尾して張り付くのよ」


 顔パックマンはそうして高らかに、自分のその技の魅力を唱えた。


「因みにそれ、生産ミスで目とか口とかの空気孔がないのよ。言ってしまえば、そうね・・・型落ちの野菜とか、そんな感じよ! まぁでもこれはエコでサステナブルなのよ!」


 最初は申し訳無さそうに小さく、しかし段々と大きく堂々と、追加情報を提示した。

 しかし彼らはそんなこと知ったことではないし、それどころではない。

 もういよいよ息が続かなくなってきて、もがき、苦しんでいる。


 そんな彼らを横目に、顔パックマンは冒険者のもとへとやってきて、「大丈夫?」と少しオネェを効かせた感じで一言。

 普通ならばかなり・・・リアクションに困るのだが、しかし状況が状況なだけにベンジャミン・フランクリン効果も相まって、彼らの目にはこの人が女神のように見え、安心したのか泣き出すものも若干名。


「あらあら・・・よしよし、よく頑張ったわねぇ」

 

 と、そこに水を差す用に、顔パックが張り付いた男たちが迫ってきた。


「ぅぅ・・・んふんふうーふぅんふ・・・」

「・・・えっ? なんて言ってるか聞こえないわ・・・もっと聞き取りやすく」

「ぅぅ! んふんふうーふぅんふ!」

「あぁもう! うるさいわねぇ・・・少し黙ってなさい!」


 この世は常に、理不尽なのだ。

 労力虚しく、次第に男の意識は薄れていき・・・気絶した。

 

「よし・・・まずはお掃除終了ね」 


 こうして手先はひとり残らず意識を失い、土の上に転がっている。

 因みに、全員命に別条はない。


「さて・・・ここからが大変なのよね。みんな、ちょっと危ないかもしれないから、適当にどっかに隠れてなさい」


 そう言って、顔パックマンは問題児たちに優しく指示、また問題児たちも、ありえないくらい素直にそれに従い、関係は最早母と子である。

 そして、問題児たちが近場の建物に逃げ込んだのを確認して、行動開始した。


「・・・出てきなさい」


 壁の外を向いて、何もない正面に向かって呼びかける。

 

 ーー大きな門が出現、暗く、重々しく、そして魔力を感じるそれはゆっくりと開く。

 それが開くに従って、怪しい霧が立ち込め、段々と不気味さ増し、また門の中はまるで光が存在しないようで、何も認知することができない。

 そんな中から何かが、確かに認知することのできる何かが這い出てきた。

 体長は恐らく四メートル弱くらい、かなりのサイズだ。


「AAaaAーー」

「喰らえ! < 美顔(ビューティーフェイス)ローラー >」


 先手必勝、顔パックマンはまだ半分ほどしか出てきておらず、身動きの取れない巨体へと、無慈悲にも攻撃を叩き込む。

 持っていた美顔ローラーを天に掲げると、なんと空中に巨大な美顔ローラーが出現、それは十分その”何か”と渡り合えるほどのサイズである。

 そしてそれで、開きかかっている門の片側へ衝突、一体どれだけの重量だったのかは不明だが、門は押し返され、”何か”はその門に打ち付けられ、痛みの咆哮をしている。


「なるほど・・・あなたが”A”ね・・・」


 と、さも今から戦闘開始するかのような雰囲気を出しているが、しかしフライングで既に先制攻撃を仕掛けている上に、それが思いの外有効打だったようで、相手も若干弱っている。


「美容に、早すぎる、なんてことはないし、遅すぎる、なんてこともないのよ!」


 顔パック越しに、キリッとした表情での決め台詞。

 気づけば既に、ラージ美顔ローラーは消えていた。


「これはね・・・広告見て安かったからつい買っちゃったやつなのよ・・・でも、これ全然効果なくて・・・今思い出してもムカつくわね! ・・・だからそのイライラと、無駄な出費のストレスを、今貴方にぶつけて少しでも取り返すわ!!」


 今、遂に顔パックマンの目的の全容が明らかになった。

 日々の憂さ晴らし・・・ストレスと向き合うことは、とても大事なことだ。

 すると、”A”がいよいよ完全に登場し、すぐに反撃とばかりに何か術式を構築、空間が揺れている。


「AaaaAAa!!」

「あなたの能力・・・対象を別次元へと幽閉する、そんな感じだそうね・・・でも私、それを知っていても、意味がわからないからほぼ知ってないのと同じで、かなりピンチなのよ・・・」

「AAAA」

「でもね・・・」


 構築完了、大規模な術式が、周囲の空間に刻まれる。


「発動させなきゃ問題ないでしょ?」


 魔力がその術式へと流されていき、いよいよ発動か、そう思われたその時ーーそれを上書きするようにして、新しい術式が刻まれ始めた。


「流石、できる子は好きよ」


 そこへもう一人の協力者が現れた。


「・・・ゆうさんに教えてもらった魔力封じ・・・範囲を絞れば何とか」


 彼の名前はタイチ、しょうもない男Bとも言う。

 彼の術式はまさに今、Aの術式と競り合っている。

 魔力量は互角、だが構築速度はタイチに歩があり、少しずつ、着実に勝利へと向かっている。


「あのっ! ・・・これ、長く続かなくて・・・それで・・・えっと、今のうちに何か、お願いします」

「オッケー! バッチリ任せてちょーだい!」


 そんな、軽い感じのノリで返したが・・・急に彼の雰囲気が、そして魔力の感じが変わった。

 彼はここで、美顔ローラーを一旦ポケットに突っ込み、更に、顔パックもどきを取り払った。


「・・・! もしかして・・・」

 クラスレッド・ディストリクション

「< 赤魔術・瓦壊滅亡 >」


 突如、先程までとはまるで毛色の違った感じの攻撃が、顔パックマンから放たれた。

 その破壊の光線は、Aの術式を一部破壊、空気を大きく震わせて、一直線にAへと向かい、当たると同時に何かが爆せたのか、それとも一瞬で焼き払ってしまったのか、強い光のあとにはもう、何も残っていなかった。


「これ・・・ある意味では、あいつの術式とやってること変わらないような・・・?」


 一瞬の出来事だったが、これにはタイチもかなり驚いて、しかし任務遂行を喜んで、安心した表情でいる。

 

「おっ疲れ〜! 流石タイチ君! できる男ね〜」

「えぇ・・・まぁ・・・こちらこそ、お疲れ様でした」


 顔パックマンはタイチの傍へとすぐに駆け寄り、美顔ローラーで彼の頬を軽く撫でる。

 勿論また、顔パックを装着している。


「じゃぁ、あの子たち(問題児)の所へ行くわよ!」


 そう言って、顔パックマンはすぐに切り替え、戦い後を背に、そして平穏な住宅街へと向かっていくが、ここで最後にタイチが一言。


「あっ、えっと・・・ローラーは正しく使いましょう」

「・・・ごめんなさい」

[雑談]フェイスパック(顔パック)は貼っつけ続けてるとお肌に悪いので程々に・・・。

   こんな感じでふざける回が増えるかも・・・?(ふざけてないです)

[ブクマしましょう!!]

[予告]次回の更新は、5日を予定しています。

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