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雪の信濃路  作者: Elena
7/12

第7話

 ミナミツバサは勤務後の点呼を終えて、事務室を後に、しなの鉄道のホームに向かう。

その途中で、こだまと出会した。


「実習おつかれさん。」


 と、ツバサはこだまに言う。


「ありがとうございます。あっ。実習中に奥様のお姉さんにお会いしました。三奈美さんによろしく伝えてくださいと言われました。」

「ああ。姉さんに。元気そうだった?」

「ええ。」

「ならよかった。って、こだま君顔赤いぞ?どうした?熱でも出したか?」


 こだまは項垂れた。


「まあ、疲れてんならさっさと帰って寝なよ。」

「はい。」


 と、こだまは言うと、改札口に向かって行った。

 

(様子がおかしかったな。次の列車まで時間あるし、姉さんに聞いてみるか。)


 ツバサはホームの待合室で、持田萌に電話することにした。


 次の日の朝。

 ツバサは自宅のある小諸から、快速「しなのサンライズ号」で長野に向かう。

 昨夜、萌に電話して、萌がこだまと出会った時の状況が断片的に分かった。

 萌の話では、突然こだまは雪の中に倒れ込み、そのまま動かなかったため、様子が変だと思い、声をかけて助けたらしい。その時、こだまは「二夜連続で同部屋の連中のどんちゃん騒ぎに巻き込まれ、寝るに寝られず寝不足になった」と言い、萌はコーヒーを買ってあげ、ついでだからと、町案内をしたらしい。

 

(雪の中にぶっ倒れたって、下手すりゃ窒息死するぞ。なんで班別行動にしないで、個人行動させてんだよアホ大学め。事故って死人が出たらどうすんだよ?)


 と、ツバサは思いながら、流れる景色を眺める。

 昨夜、また雪が降ったが、長野県内の交通網を麻痺させる程では無く、窓の外は美しい銀世界が広がっていた。

 列車は、上田に到着した。

 上田から、秋月こだまとミサシマが乗ってきた。


「おはよう。」

「おはようございます。」

「疲れは取れたかって、その顔じゃあんま疲れ取れなかったって感じだな。姉さんから詳しいこと聞いたよ。全く。善光寺大学は頭良いと聞いていたが、一歩間違えれば死人が出るような事させてんな。」

「学校じゃなくて長野県がクソなんですよ。」


 と、こだまは不貞腐れて言う。

 その顔を見てツバサは、


「もしかして、姉さんと別れた後にも何かあった

のか?」


 と聞いた。


「その事は、あまり追及しないほうがいいと思います。」


 と、横から言われた。

 振り向くと、こだまと同学年ぐらいの女の子が立っていた。

 黒髪のストレートでセミロングの髪型をし、少し子供っぽさが残っている顔をしている。

 

「あっ。どうぞ。」


 と、ミサシマが彼女に席を譲る。

「いいえ大丈夫です。私はここに立っていますから。あっ。私はこだま君と同じ大学に通う、直江みずほと言います。こだま君。話してもいい?」


 みずほは、こだまに聞く。

 こだまが肯いた。


「こだま君、実習中に宿でのどんちゃん騒ぎの時に撮られた写真に、ポルノ系の写真を合成された写真をSNSのグループにばら蒔かれたのです。」

「その写真を見せて貰えませんか?いや、決してこだま君を笑おうとか言うものではありません。」


 ミサシマが言うと、こだまはスマホにその写真を写して、


「この他にも、多数の写真をばら撒かれました。」


 と言いながら、ミサシマに渡した。

 ミサシマは顔をこわばらせ、ツバサも写真を見て、絶句した。


「ツバサ。これは警察に言ったほうがいいかな?」

「そうだな。公開だったら即通報だ。だがこれはグルだからな。でもこだま君がこんな顔してんだ。それで、こだま君はこれを承諾した上で?」


 と聞いて、ツバサは「バカ」と思った。

 昨日の萌の電話の感じから考えて、どう考えても承諾していないに決まっている。


「承諾はしていません。現に自分は、写真を撮られた事さえ気付きませんでしたから。」

「そうか。だとしたら犯罪って事にもなるな。でもなあ。長野県警使えねえからな。十津川警部みたいな警察がいれば話は別だが、長野県警のサイバー犯罪科なんて、ボンクラの集まりも良いところだって話だし。」


「言うようになったな。長野の悪口を。」


 ミサシマが笑ったが、ツバサは気に入らなかった。


「笑い事じゃねえ。空気読めこのバカ。まあ、もし今後、こんな写真を晒されたら警察に言いなよ。後、言いたいことはちゃんと言えよな。自己主張出来ないと、周りにどんどん流されて、自分のやりたいことも出来なくなるばかりか、自分が何をしたいのかさえも解らなくなるからな。」


 と、ツバサは言った。



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