第5話
辰野の野外実習3日目の最終日。
こだまはボロボロだった。
理由は、ホテルで同部屋にされた奴等が、他の部屋の奴を呼んで、2日連続で夜中までどんちゃん騒ぎをし、それにこだまも巻き込まれ、寝不足だったからだ。
そして、トランプゲームでこだまは恥をかき、屈辱の中にあった。
どちらもお開きになったのは、夜中の3時であった。
それと同時に、こだまは倒れ込んだ。
だが、朝6時に起床。
一昨日と昨日の夜のドンチャン騒ぎに無理矢理付き合わされたこだまは、寝不足で野外実習中にフラフラになってしまい、雪の中に倒れ込んでしまった。
「あっ!どうしたの!大丈夫!?」
と、身体を叩かれ、こだまは目を覚ました。
雪の中に埋もれるような形で倒れてしまっていた。
こだまを助けてくれたのは、直江みずほではなく、20代後半の女性だった。
「大丈夫です。夜中までどんちゃん騒ぎに巻き込まれしまって、寝不足で。」
「ならいいけど。」
こだまを助けてくれた人は、缶コーヒーを買ってくれた。
「とりあえずこれ飲みな。」
「ありがとうございます。あの、貴方は?」
「私?持田萌。あそこにある短大に通っていたんだ。」
「では、地元で?」
「いいえ。私は関東出身。」
「そうですか。あっ。僕は秋月こだまです。信州善光寺大学文学部地理観光学専攻の1年です。」
「善光寺大学の。」
「はい。一昨日から辰野に来ております。」
萌と言う女性は、こだまの顔色を伺いながら、
「辰野に実習って、何するの?」
と聞いた。
「えっと、この町を探索して、観光ガイドを作れって言うのです。」
「そうなんだ。」
こだまは、萌という女性に案内されて、荒神山公園に行った。
「ありがとうございます。助けていただいた上に、道案内までしてもらって。」
「いいのよ。なんか、秋月君の姿が妹の彼氏さんに似てるからね。」
「そうですか。」
「あいつと会ったのも、この町だった。あっ、
ほらあそこにSL居るでしょ?」
萌は、前方を指差した。
「ああ。本当だ。今にも動きだしそうな程、黒
光りしていますね。」
「妹の彼氏と同じこと言ってる。それでこっちには―」
萌は荒神山公園にあるものを説明してくれた。
それをこだまはメモする。
荒神山公園を散策し終わると、辰野駅に向かう。
辰野駅に向かう間、萌はこだまにこの町の事を話してくれた他、思い出も話してくれた。
(萌さんのおかげで、良いレポートが書けそうだ。ありがとうございます。)
と、こだまは萌に感謝した。
「これ、妹の彼氏。あっ今は旦那だ。」
萌はスマホの画面に写真を写して見せた。
その写真を見て、こだまは驚いた。
「あっ!三奈美さん!」
「えっ?知り合い!?」
「はい。しなの鉄道に乗ったとき、たまにですがお話します。」
「そうなんだ。じゃあ、会ったらよろしく言っておいて。」
萌は笑いながら言った。
辰野駅に集合時間通りに集合したこだまは、ここで解散となり、帰路につく。
辰野17時53分発の長野行き普通列車に乗る。
萌も大糸線の一日市場まで帰るために、一緒に乗った。
松本駅に着くと、萌と別れる。
別れ際に、こだまは萌に「ありがとうございました」とお礼を言った。