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雪の信濃路  作者: Elena
2/12

第2話

 快速「しなのサンライズ号」は長野駅の場内信号機を通過し、ホームに入線する。

 

「長野停車!定着!」


 ミナミツバサは指差し確認をする。

 列車の前方で、乗客の一人が女の子を横に待たせ、列車の写真を撮っている。


(おっ。またあの子か。)


 ツバサはその乗客をよく見かけていた。

 ツバサは、ブレーキハンドルを外し、施

行票を持って、列車の最後部の運転席に向

かった。

 

「電車好きだよね。SNSは電車の事ばっか。」

「まあね。それに、もうすぐこの電車、引退しちゃうんだ。」


 秋月こだまと、直江みずほは長野駅に到着し、ホームでこだまが写真を撮っているのを、みずほは眺めていた。


「さてと、学校行くか。」


 と、こだまは言った。

 こだまとみずほは、長野市内の大学に通っている。

 学年は1年だ。

 成績優秀で、学年トップクラスの成績であったが、内気で小心者であり、なかなか周りの人に声をかけられず、友達が少なかった。

 しかし、なぜかこだまは、1年のアイドル的ポジションに立っていた。


(学籍番号が1番だからだろうか?)


 と、こだまは思ったがそれだけが人気者になる要因では無いだろう。

 こだまは、好きな人がいた。

 隣に居るのに、なかなか思いを伝えられない。

 こだまは、みずほに心を奪われていた。

 だが、なかなか思いを伝えられないのだ。

 

(あーあ。なんで俺ってこんなに小心者なんだろう。)


 と、こだまはみずほと歩きながら思う。


「こだまって、新幹線の名前だけど、みずほって名前の列車は無いの?」


 と、みずほが言う。

 

「あるよ。「こだま」と同じ山陽新幹線と、九州新幹線の列車に「みずほ」がある。」

「こだまと同じ線路を走ってるんだ。なんか上手くいくんじゃないウチら?」


 みずほが笑う。


「そりゃ、どういう意味で?」

「それは自分で考えなさいよ。」


 また、みずほは笑ったが、少し怒っているようにも見えた。

 大学に着き、教室に入るがもう、みずほは話してくれなかった。



 ツバサは勤務を終え、長野から普通列車の運転席に添乗して小諸へ帰る。

 

「小諸まで頼むぜ。ミサシマ。」


 列車を運転するのは、ツバサの鉄道仲間だったミサシマヒタチ。

 彼も、ツバサと同様、長野と熊谷で5歳年上の先輩と遠距離恋愛をし、ツバサと同時に結婚した。

 そして、ツバサと同期でしなの鉄道に就職した。

 

「俺は上田で交代だ。小諸まで行かねえよ。」

「ああそうだな。」

「おっ。また撮ってる。」


 ミサシマが前方を見て言う。

 ツバサが今朝見た乗客が、列車の写真を撮っていた。

 

「ああ。あの子か。」


 ツバサは運転室の窓から、その乗客に声をかけようとした。

 

「おい止めとけよ!」

「乗客とのコミュニケーションは大事だろ?」

 

 ツバサは言いながら、


「こんにちは。」


 と、声をかけた。

 

「あっ。どうも―。」

「いつも写真撮ってるけど、鉄道マニアかい?」

「ええ。鉄道好きです。」

「大学生?」

「はい。」

「1年生?」

「そうです。」


 その時、発車メロディーが流れ始めた。


「秋月こだまと言います。私は、将来、しなの鉄道で働こうと考えています。あっもう発車なので、車内に入ります。」


 秋月こだまと言う乗客は、客室に入った。


「出発進行!」

 ミサシマは指差し確認をする。

 列車は、長野を発車した。



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