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第一生 10代

一生で経験できる職業はそう多くはない。

が、それは一生で終わればの話。

運命に弄ばれた少年は何度も生まれ変わり「極みスキル」を蓄えてゆく。

「一生」の果てにたどり着く世界の成り立ちへの第一歩目。


僕はフート、今年で15になる農家の息子だ。

僕の住む村では15から大人として扱われ、仕事が与えられる。

ただ仕事は必ず親から引き継ぐというわけではなく、教会に行って決めることになっている。

なんでも、「魔法の水晶」ってのに触ると自分に合った「天職」が与えられるのだそうだ。

小さい頃から率先して親の仕事を手伝っていたし農家がいいなぁ。


教会に着くと同世代の人たちがたくさん集まっていた。何人か見知った顔がある。

と言っても、隣の家までかなり距離があったから顔がわかるのは三人だけだ。

一人目は布屋のナイア。よくうちに野菜と布を交換しにきた父親についてきていた。親同士で話していた時によく遊んでいたなぁ。お人形ごっこばっかりさせられてたけど。

二人目は肉屋のリュー。何回かリューのところの牧場で牛に乗ったりして遊んで怒られたっけ。親に似て逞しい。体を動かすのが得意そうで大変羨ましい。

三人目は薬屋のメル。彼女の持ってきた種を二人で悪戯で畑の一角に巻いたらその周りは数年何も生えなくなっちゃってすごく怒られた記憶がある。


三人と他愛のない話をしているうちに儀式の時刻がやってきたようで、名前を呼ばれたものから順に教会の中へと入っていった。でてくる時の様子は喜んでいたり肩を落としていたりとまちまちだった。

しかしそこまで気に病むことはない。というのも、たとえ天職を与えられたとしてもそれはあくまで適性があるという程度で、必ずその仕事をする必要はないのだ。まぁ向いていないことをし続けるのはそれなりに大変だろうけれども。


そんなこんなでナイアの順番がやってきた。どことなく重い足取りで入っていった数分後、スキップ気味に戻ってきた。どうやら<人形使い>の天職をもらったようだ。



<人形使い>・・・自分の魔力を込めた針で人形を作成し、一定量の魔力を消費し続けることで人形を操作できる。持続時間、操作可能な個数は操り手の魔力総量に拠る。



小さい頃からの人形好きを「天」はみていたのかもしれない。非力がちなナイアは人形に力仕事を任せて働かせることにするそうだ。


次に順番が回ってきたのはリューだった。絶対に<飼育師>をもらってくるぞ、と息巻いて入っていたはいいものの、焦点が合わない顔で戻ってきた。<狩人>の天職をもらったようだ。



<狩人>・・・気配の操作、精密射撃に秀でる職業。生物の「生命力」が把握できる。



なんでも、リューは家の敷地内で働きたかったらしい。生捕りにした獲物を家で飼育して行こうと考えているようだ。


その後はメルの順番が回ってきた。本人は何がきても特に気にしないとは言っていた通り、平然と入って行き、平然と出てきた。<調合師>の天職をもらったようだ。



<調合師>・・・レシピを記憶することで正確な分量を安定して用意することができる。調合前に効能がわかる。



どことなくムフムフした表情に見えたのは多分気のせいだろう。変なものとか作らなければいいなと思うばかりだ。


しばらくして僕の順番が回ってきた。こればかりは気にしても仕方がないので渋らずに教会へと足を踏み入れた。

ホールの奥の壇上で教会の人たちが数人待っていた。ホールをぐるりと囲んでいる、様々な職業人をかたどった「助け合いの像」が以前見た時より小さく見えるのは僕が成長したからだろうか。


壇上にたどり着くと祝福の言葉をもらい、それに返事をしつつ水晶と向き合った。これに触れると天職を教えてくれるというのはなんだか不思議だ。

水晶に触れると教会の人がざっと周りを見渡した。するとあるところで視線が止まった。その方向を向いてみると、なんと像の一つが光っている。しかし見てみても何の職業か全くわからない。

教会の人が、あれは<究明師>の像だと教えてくれた。僕には<究明師>の天職が与えられたようだ。と言ってもあまりメジャーな職業ではないらしく、詳しい説明がなかった。残念。


お礼を言ってから教会を出て、待っていてくれた三人と今後の話をした後、あたりが暗くなってきたのでそれぞれ帰ることにした。

結局究明師がどんなものかがわからなかったが、とりあえず親の農業を引き継ぎながら解明していこうと思う。




僕たち四人はなるべく協力しながら仕事をしよう、と小さい頃から約束していた。やることが決まった今、役割を決めることにした。

リューが動物を集め、その動物たちの餌を僕が作る。餌となる植物に使える薬品などをメルが作り、三人の労働力の補助をナイアがすることになった。

主な収入源は育てた動物を売ること、補助的な収入として薬品、農作物などの販売、人形の労働力の貸し出しをすることにした。

それにあたり、しばらくは各個で働いて資金を集め、四人でお金を寄せ合って土地を買い、そこでみんなで頑張ることに決まった。


初めの数年を頑張って働き、なんとか二十歳になる前に土地を買うお金を集めることができた。土地はあまりまくっているのでそこまで高くはない。

というか実はこういったことをする若者は少なくはないのだ。

なぜなら昔話の英雄たちが若かった頃にそのようなことをして成り上がっていく、というものがあるからだ。

値段があまり高くないのはそういった人たちを応援する意図もあるのかもしれない。


手に入れた土地で商売を始める訳だが、お店の名前をまだ決めていなかった。しばらく考えた結果、「箱庭」という名前にすることになった。

ここから四人と「箱庭」の物語が始まるのだ。

…と思ったが、まだ土地しか入手できていなく、建物がない。結局もうしばらく資金集めに奔走する羽目になった。

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