第九話 馬車の中で
晴れ渡る空の下、侯爵家の馬車は避暑地にある湖へと向かっていた。
馬車は二台で走り、一台目は両親と祖母、メイドのメイと、護衛のアランが乗った。
そして二台目は私達4人と護衛のジョンが乗った。
私はノアとルーカスの間に座り、前席にはショーンと護衛のジョンが座っていた。
可愛いルーカスはにこにこの笑顔で私の手を握ってくれている。
ノア達3人はそんな私達に冷ややかな視線を送っている。
「マリアンヌ、ルーカスは一般の6歳ではない。かなり精神年齢の高い6歳だから、そんなにベタベタするのは良くないよ。」
ノアがルーカスを睨みながら、私に釘を刺すように言った。ルーカスはそんなノアを睨みつけ、次に私に泣きそうな視線を向けた。
「ほら!ノアがそんなこと言うから!可哀想なルーカス。精神年齢が高いのは貴方達でしょ!?」
よしよしとルーカスの頭を撫でる。
「けっ‥!」
ショーンもそんな私達に馬鹿にしたような視線を向けた。
ルーカスは泣きそうな顔のまま、私に抱きつく。‥こんなに小さいのに‥可哀想だわ。ルーカスはとても小柄で身長110㎝しかないのだ。
「だから!その見目に騙されるなよ!バカ!」
「バカとは何よ!ノアの方がバカでしょ!?」
「ほらまた始まった‥。うるさいんだよ、お前ら!」
ノアと私はよく口喧嘩をする。その原因は100%このルーカスだ。ショーンも呆れている。
「うっ、うっ、うぇーん!」
「ほら!ルーカスが泣いちゃったじゃない!大丈夫よ‥‥ルーカス‥‥チュッ!」
「「あーーーー!!」」
「お前今キスしたな!?ルーカスにキスしたな!?」
ノアと、珍しくショーンまで騒いでいる。
「何よ‥。いいじゃない‥。ほっぺにチューしただけよ。泣いちゃったんだから仕方ないじゃない!?」
「それじゃあ、俺も今から泣くからキスしろよ!」
「‥‥‥‥‥は?‥‥‥そんなの、するわけないじゃない‥‥。」
ノアのとんでもない発言に驚き、赤面してしまった。ノアはいつも優しいのに、ルーカスが絡むといつもおかしくなるわね‥‥。
まだ心臓がドキドキしてる‥‥。
「‥‥‥‥‥‥‥チッ!」
え?!今、ルーカスが舌打ちした?!‥‥‥って、そんな訳ないよね‥‥?
そんな気まずい雰囲気のまま、馬車は湖へと到着した。
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