第四十五話
パーティーは三階にある大広間で行われる。広間へと続く階段は淡い蝋燭のような光で覆われていて、神秘的な雰囲気となっている。その階段をノアに手を引かれながら上がっていくと、楽団の奏でる美しい交響曲が聴こえてきた。
前後には美しく着飾られた令嬢や令息がいて、このように大きなパーティーに出席したことがない私は、かなり気後れしてしまっていた。それにあの恐ろしい予知夢もある。
「‥‥さすが貴族学院のパーティーね。私何だか緊張してきたわ。大丈夫かしら?」
ノアを見上げると、「大丈夫だよ。僕から離れないようにね。」とにっこり微笑んでくれる。
余裕の表情ね‥。それに今日のノア、本当に素敵だわ。学生服を着ていても華やかな印象なのに、こんなに素敵なタキシード姿。眩しすぎて目がやられるわ。
こんな素敵なノアだからこそ、妬まれて毒を盛られるのかしら‥‥?
「今日のノア、本当に素敵だわ。見惚れてしまうわ‥‥。」
ノアを見つめたまま固まっていると、ノアは笑って吹き出し、「マリアンヌも見惚れるほど美しいよ。」と頬に手を当て見つめてきた。そして流れるように額にキスをする。
‥っ!?何をっ!?
言い返そうとしたが、背後からヒュッと息を飲む音が聞こえ、振り返った。
そこには手を口に当て、蒼白な顔で驚いた表情をしている令嬢と、目を丸くして驚いている令息がいた。
!?見られたっっっ!!
「コホンっ、ごっご機嫌麗しゅうレミニール会長‥‥。」
「これはザンダ伯爵家のメリッサ嬢と、ユリーフ。良いパーティーになるといいね。」
そうにこやかに返すノアと、見る見る泣きそうな表情になっていくメリッサ様。そして目をまん丸にしたまま、口をハクハク開けているユリーフ様。
「‥‥なぁ、ノア?隣の子は誰なんだい?」
ユリーフ様に聞かれて、ノアは「義妹だよ。だけど、恋人でもあるんだ。」と私の腰を抱き、引き寄せる。
「えっ!?義妹‥‥?血が繋がっていないからいいのか‥‥?」
ユリーフ様はブツブツ独り言を繰り返す。
ユリーフ様はノアと同級生で、メリッサ様は妹とのこと。‥‥メリッサ様のあの表情‥‥絶対ノアに憧れておられる方ね‥‥。
そしてメリッサ様は意を決したように口を開き、
「‥‥レミニール会長!義妹様が恋人なんて冗談ですわよね!?」
プルプル震えながら訴えられる。
「冗談ではありません。我が愛するただ一人の‥ 「ちょっとっ!?何てこと言うのよ!?」
慌ててノアの口を押さえる。
その押さえる私の手を取り、口付けるノア。
‥‥なっ、何でこうなるのよ!?
‥‥側から見るとイチャイチャしてるようにしか見えない‥‥。
「危ないよ、マリアンヌ。ああ‥‥後ろが詰まってきてしまったね。ユリーフ、先へ進もう。話は後ででもいいかい?」
「えっ!?ああ、そうだね。」
二人に軽く会釈して、私の手を取り歩き出すノア。
もう頭が真っ白なまま、ノアについていく私。
‥‥ノアは初め、恋人設定は内緒にするとか言っていなかった??何だかおかしな方向へ進んでいない!?
ーー背後からの殺気だった視線に震えながら、笑顔のノアと共に会場へ足を踏み入れた。
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