第四十三話
カーラー様はずっと付き添うと言われていたが、新入生であることから、医師と教師に式に戻るよう促され渋々戻られていった。
私は暫く医務室で休んだ後、大事をとって、そのまま寮へ帰ることとなっている。
カーラー様、私と同い年なのに包容力があって素敵な方だわ。あんなに親身になってくださって‥‥。落ち着いたらお礼をさせて頂こう。
それにしても、
「‥‥魅了の魔術‥‥。」
天井を見つめたまま、ポツリと呟く。
魅了の魔術は禁呪に分類される。最後に使われたのは200年程前だったか‥‥教科書で見た悪女伝説だ。
そんなもの、どうやって使うのかも知らないし、そんな高度な魔術を私が使えるわけないじゃない‥‥。
溜息が溢れる。
それに、明日は入学記念パーティー。針の筵になりそうだけど、ノアが毒殺されるかもしれないから阻止するためにも絶対出席しないと‥‥。
そうだわ!こんな所で寝てはいられないわ!
私は医務室のベットから起き上がり、端座位となった。座った途端、少し眩暈がした。
‥‥うっ‥‥!
「起き上がって大丈夫?」
医師がお水を持って来てくれた。
「少し眩暈が‥‥。でも治りそうです‥‥。」
「そう?無理してはダメよ?」
私の背中を心配そうに撫でてくれる。
「‥‥ありがとうございます。」
王立学院の医師であるジェム先生は都内で医院を開業されている夫を持つ40代の女性。この国のほとんどの医師は男性である為、きっと資格をとるのにも苦労されたのだと思う。だが、テキパキ仕事をこなされるジェム先生はカッコよく、憧れの存在だ。
「根も葉もない噂なんて気にしないことよ?貴女のことを理解してくれる人もいるじゃない?もし疲れてしまった時はいつでも医務室に来なさいね。私は医師。貴女も医師を目指す仲間なんだからね!」
そう言って肩を優しくポンポンとたたかれた。
「‥‥っっ!?」
胸がジンと熱くなり、瞳が潤ってきた。
そして私は暫くジェム先生の胸で泣いてしまった。
その時、
ガタガタガタガタ!!
‥‥おいっ!待てっ!!
!?
急に医務室の外が騒がしくなり、
!? バーーーンッ!!!
ノアと殿下が勢いよく医務室に入ってきた!?
「「マリアンヌッ!!大丈‥‥!」」
「また君達はーー!!」
二人の声に被せるようにジェム先生が仁王立ちになって叫ぶ。
「あっ!!」
「申し訳ありませんっ!!」
居心地の悪そうな表情でモゴモゴと謝罪しながら、私をチラチラ心配そうに見つめて来る二人がいた。
読んで下さり、ありがとうございました。