第三十八話 ノアside
‥‥くそっ!何なんだよ!?マリアンヌを抱いているから攻撃も出来ないし!
「殿下!お待ち下さい!」
「医務室へ行くだけだよ。マリアンヌは任せろ。」
‥‥どさくさに紛れて変なとこ触ってるんじゃないだろうな!?
‥‥それに、抱いて走ってる割にやけに速い。ショーンと騎士団で鍛えているだけのことはあるな。
だが、抱いて走ってる奴に負けるわけはなく、殿下の前に回り込み、進行を防いだ。
「任せろと言っているのに‥‥しつこい奴だな。ねぇ、マリアンヌ‥‥チュッ!」
「‥‥殿下!?おやめ下さいっっ!!」
殿下はあろうことかマリアンヌの額にキスをした。マリアンヌは真っ赤になり焦りまくっている。
‥‥‥は!?何てことしやがる!?
「この野獣!じゃない殿下っ!マリアンヌをこちらへ渡して下さいっ!」
‥‥殺してやりたい‥‥。
二人で睨み合いをしていると、
「やっと、見つけましたっ!‥‥‥っ!?おっお嬢様‥‥!?殿下‥‥!?どうなされたのですか?」
侍女のアリアが駆けてきた。
マリアンヌは神様に会ったかのような安堵した表情となり、「アリア‥‥助けて」と懇願している。
「マリアンヌが扇子を投げつけられて怪我をしたので医務室へ行くところですよ?」
安定の王子様スマイルでアリアに説明する。
「まあ!!どこを怪我されたのです!?‥‥‥あれ?どこを‥‥‥?」
アリアは焦りながらも、部位がわからず混乱している。
「アリア、私は怪我してないのよ!降ろしてほしい‥‥きゃっっ!」
マリアンヌの言葉を遮り、今度は頬にキスをする殿下。
「マリアンヌ、駄目だよ?さあ、医務室へ行こう。僕が責任を持って医務室へ連れて行きます。皆は速やかに寮へ帰りなさい。」
「「「そんなことできるかー!!」」」
無事?医務室へ到着し、殿下は名残惜しそうにマリアンヌをベッドへ下ろした。
「マリアンヌ痛むかい?」
殿下はベッドサイドに跪き、マリアンヌの手を握ろうとする。
そんなことさせるか!
全力で阻止する。
そんなこんなを繰り返していると、
「いい加減にしなさいっ!ゆっくり休めないじゃないのっ!貴方達はこの学園の生徒会長と副会長でしょう!?皆のお手本になる筈の貴方達が情けない‥‥。」
「‥‥お可哀想なお嬢様‥‥。」
学園の医師にひどく注意され、医務室を追い出されてしまった‥‥。
‥‥全部こいつのせいだ‥‥。
‥‥こいつさえ、いなければ‥‥。
殿下を睨むと、殿下もまた此方を睨んでいた。どうやら同じことを考えているらしい。
「殿下、ご存知でしょうがマリアンヌは医師を目指しております。王太子妃にはなれません。どうか、殿下に似合った方をお選び下さい。」
‥‥マクゴガナル様もなかなかの美人じゃないか。しかも幼馴染であんなに健気に慕われているのに‥‥。僕もマリアンヌが幼い頃から好きなんだ。いきなり出てきて奪うのはやめてくれ。
「‥‥ふんっ!人の気持ちは変わるものだ。僕は全力でマリアンヌを振り向かせてやる‥‥。」
苦々しく言いながらも、拳を握り、決意を新たにする殿下。
‥‥こうなったら、マリアンヌには悪いが、言うしかない‥‥。
「お言葉ですが殿下、実は僕とマリアンヌは『恋人』になったのです。愛し合っている上、そっとしておいてもらえますか?」
‥‥堂々と恋人宣言。気持ちいいなコレ。
「ふんっ!マリアンヌの様子を見ていれば分かる。決して愛し合ってはいない。お前の一方通行だ。」
‥‥うっ‥‥痛いところつくな‥‥。
「なら、マリアンヌに聞いてみて下さい。」
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