第三十四話
ノアがピアノを弾き終わると、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
驚いて振り返ると、廊下側の空いた窓から十数人の生徒が満面の笑顔で拍手している。
「レミニール様、素晴らしい演奏でした!是非とも我が音楽サークルに入っては頂けませんか?僕はサークルの代表、アンダーソン伯爵家令息リアムと申します。」
生徒達は音楽サークルのメンバーだった。皆かなり興奮している。
そして、サークルメンバー以外に新入生も何人か見に来ており、「素敵な先輩がいるのね‥‥!」とノアに熱い視線を送っている。
ノアは立ち上がると皆の前へ進み出て、
「‥‥僕は今年、生徒会長になったんだ。かなり忙しくなると思うから練習には参加できないと思う。それに他のサークルもみないといけない中、音楽サークルだけに重きを置いて関わることは出来ないんだ。」
と、申し訳なさそうに断った。
「‥‥そうですか。残念です‥‥。」
アンダーソン様も他の生徒達も悲しげに押し黙ってしまった。
ノアは項垂れるアンダーソン様に手を差し出し、「入学記念パーティーでの演奏はとても楽しみにしているんですよ。頑張って下さい!」と激励した。
アンダーソン様はノアの手をしっかりと握り返し、「はい。頑張ります!お時間のある時は是非ともサークルに遊びに来て下さい!」と力強く言われた。そして私にも向き直り、「妹様も是非遊びにいらして下さい。もし一緒に活動したいと思われたらいつでも大歓迎ですよ!初心者でも、皆で丁寧に教えますから。」とにっこり微笑まれた。
「あっ、はい!ありがとうございます!また見学に行かせて頂きますね。」
‥‥何だか楽しそう!何回か見学して良さそうなら入会しようかしら!?
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皆と別れてノアと歩き出してからも、フルートなら少しは出来るからフルートにしようかしら‥‥?それとも別の楽器に挑戦しようかしら‥‥?とサークル活動のことが頭から離れなかった。
ノアはそんな私を冷ややかに見つめ、
「何ニヤニヤしてるの?もしかしてサークルに入ろうとしてる?学業を優先させないといけないから、サークル活動とかそういうものはお勧めできないな。」等と、学業に専念するよう説教してきた。
‥‥まぁ、確かに学業は最優先すべきだけど‥‥。先程の音楽サークルの方々、とても良い人ばかりだったし、仲間に入りたいなぁ‥‥。
「勉強はもちろん頑張るわ。だからサークルの見学には行ってもいいよね?」
「‥‥僕は放課後、生徒会室にいる。だから、マリアンヌは授業が終わったら必ず生徒会室に来てほしい。マリアンヌの話も聞きたいし、仕事の合間には勉強も教えてあげられるからね。サークルの見学は暫くは駄目だよ。学業に専念してもらわないと。主席入学したんだから、それ位当たり前だろ?」
‥‥‥‥嫌なんだけど‥‥‥。
「‥‥‥生徒会室なんて気軽に入れる場所じゃないでしょう?授業の後はちゃんと寮や図書室で勉強するわ。‥‥‥残念だけど、暫くはサークルの見学も我慢するから。暫くだけどね。」
「駄目だよ。必ず放課後は毎日生徒会室に来て。来ないなら迎えにいくから。僕はマリアンヌを心配しているんだよ?」
「えっ‥‥!?でも‥‥。」
口を尖らせて反論しようとしたが、ノアにギロリと睨まれ、「‥‥‥分かったわ。」と仕方なく頷いた。
‥‥‥強引なんだからっ!
‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥ん?
私、何か大事なこと忘れているような‥‥‥?
!?
あっ!?ノアの毒殺事件!!!
そうよ!今はノアを守るのが最優先事項だった!!サークルどころじゃないわ!
私はノアの腕を引っ張り隅へ行き、辺りに誰もいないことを確認してから、小声でノアに話しかけた。
「ノア!入学記念パーティーで毒を飲まされる話、覚えてる?」
読んで下さり、ありがとうございました。