第三十一話
赤く熱った頬を押さえながら歩いていると、
「あっ!こんなところにいたの?」
殿下が走って近づいて来た。
「‥‥‥?何かあった?」
私の様子を見て心配そうに話しかける殿下。「何もございません。」と笑顔を作りながらこたえる。殿下の隣にはマクゴガナル公爵家令嬢もおられた為、あらためてご挨拶をさせて頂いた。相変わらず冷たい表情をされている。そして辺りを見回し家族を探す。
「ご家族ならあそこにいるよ。」
言われた方向を見ると、母と祖母がベンチに座っており、義弟達は少し離れた所で御令嬢達に囲まれていた。ベンチの周囲ニメートルは誰も入っておらず、母と祖母はのんびりお茶している。護衛の2人はにこやかに側に立っていた。
「お二人に休んで頂くために僕が命令したんだ。お菓子とお茶も用意させてもらったよ。」
「ご厚情、痛み入ります。」
殿下はいつも私達に親切にして下さる。仮病をつかって誕生日パーティーを欠席したことに今更ながら罪悪感がつのる。
そして家族の元に行き、腰掛ける。
祖母と母が笑いながら「見て!あの2人も御令嬢に人気なのよ。」と嬉しそうにしていた。
「「「弟様も素敵だわ!」」」
華やかな御令嬢達が義弟達を取り囲み、興味津々で話しかけられている。
二人とも失礼のないように対応出来るかと不安だったが、割と大丈夫なようだった。
ルーカスは始終無愛想な態度をとっており冷や冷やするが、ショーンは戸惑いながらも失礼のないように話をし、時折ルーカスのフォローをしていた。ショーンがぎこちなく笑うとエクボが出来、御令嬢達は「可愛いー!」と黄色い声を出していた。
「ショーンもなかなかやるわね。」
「ショーンがいたら大丈夫ね。」
母も祖母も安心したようだ。そして私達は三人で他愛のない話を始める。
と、そこにいつの間にかセリア様が混ざっておられることに気付いた。
今までの雰囲気とはガラリと変わり、少し気不味い様子となっている?
「何を話しているのかしら‥‥?」
気になり近付いてみると、時々「孤児院」という言葉が出てくる。
!?何話してるの!?
「お可哀想な境遇ですわ。どんな方からお生まれになったかも分からないんですって。きっと想像を絶する生い立ちなのでしょうね‥‥。でも私は貴方達の味方ですわよ。」
さめざめと泣きながらセリア様が語られている。
「‥‥孤児院といったら、娼婦の子や、忌子がいるところよね‥‥怖いわ‥‥。」
皆、蔑んだ表情や戸惑った様子で二人を見つめている。
「皆様、そんなことを言ってはいけませんわよ?お二人は侯爵家にもらわれて今は孤児ではないのですから。失礼にあたりますわよ?」
二人が可哀想と涙を流すセリア様。
「ノア様は由緒ある伯爵家から養子に来られた方だそうです。ノア様はお二人を『優秀な義弟』といつも自慢していらっしゃるわ。私はノア様と親しくさせて頂いているのでよく知っていますのよ!」
セリア様はにっこり微笑んで、饒舌に話している。
「そう、優秀な方なのですね!だから養子に‥‥すごいですわ!何がお得意‥‥」
一人の御令嬢が二人に向かって話しかけられたが、その言葉を遮り、またもやセリア様が語り出す。
「まあ、いくら優秀でも『血』は抗えませんものね‥‥。」
「‥‥‥。」
そうですわね‥‥と他の御令嬢達もセリア様に言いくるめられ、お互い顔を合わせながら頷き合われている。
何あれ!?何で義弟達がさらしものになっているの!?
腹が立ち、「ちょっと!!何言っ‥‥‥」と、間に入りかけた瞬間、
「私の可愛い孫に何てことを言うのですか!?ルーカスもショーンも今は大切な侯爵家の子息です。侮辱するのもいい加減になさい!!さあ、貴女達、順番に名乗りなさい!!ただではおきませんよ!」
鬼の形相をしたお祖母様が車椅子で突っ込んできた。母も怒りで顔を歪ませている。
御令嬢達は顔を見合わせ動揺し、ポツリポツリと申し訳なさげに謝罪を始める。そこへノアもやってきて、御令嬢達を軽蔑したように見つめ「他人に義弟達の血がどうとか言われたくはない!」と怒鳴った。セリア様は焦った様子で「そっ、そうですわよ!」と引き攣りながらもノアの側に立ち、御令嬢達に糾弾を始める。
‥‥‥どういうこと?さっきまで一番言っていたよね‥‥?セリア様のイメージがこのお祭りで崩壊してしまったわ。
そこに一際通る声が響いた。
「ショーンは僕と共に騎士団の訓練を受けている友だ。侮辱したものは前へ出ろ!」
殿下の声に皆静まり返る。
そして謝りながらチリチリバラに去って行かれた。
残された者皆で顔を合わせる。
私の家族は孤児院とか何も気にしないから何とも思わなかったけれど、他所ではこのように言われることもあるのね‥‥。
「‥‥今日はそろそろ帰りましょう。お祖母様も休ませてあげたいわ。」
母が力なく言い、私達は了承する。
その時、ふとノアと目が合ったが、先程のことを思い出し、逸らしてしまった。ノアは傷ついたような表情をしていたが‥‥仕方ないよね。
そして、馬車で邸へ向かった。
馬車の中でも怒りはおさまらなかったのだが、当の本人達はというと然程気にした様子もなく、「だって本当のことだしなー!」と笑っている。そして、徐々に皆の顔にも笑顔がもどり、「もしかしてルーカスなんて大魔法使いの子供かもしれないわよ?」「ショーンはどこかの国の英雄の子かもしれないわね!」等と冗談を言って笑った。
「だけど今は私の可愛い孫達だよ‥‥。頭を撫でさせておくれ。」とお祖母様は幸せそうな笑顔で私達を順番に撫でられていた。
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