第二十五話 ノアside④
翌年、僕とマリアンヌは初めてお茶会に出席した。
王宮のお茶会だった為、マリアンヌは僕を毒殺する第一王子殿下に会えると意気込んでいたが‥‥それよりもマリアンヌが殿下に気に入られてしまったら‥‥という不安の方が大きかった。
それというのも着飾ったマリアンヌがとても美しかったからだ。
銀の刺繍が施された白色の上品なドレスに身を包み、ピンクブロンドの髪はハーフアップにして、上品なアクセサリーを身に付けた彼女はとても洗練されていた。
義父は空気も読まず「我が娘は綺麗だな!これは第一王子殿下や他の令息達に見染められるかもしれないぞ!?」と嬉しそうに、豪快に笑っていたが‥‥。
‥‥マリアンヌは僕のものだ。誰にも奪われたくはない。
参加出来ないルーカスとショーンは焦り、
「マリアンヌに変な虫がつかないよう、よろしく頼む!!」
と、僕に懇願してくる。
頼まれなくても、必ず阻止する。
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王宮の庭園で開催されたお茶会は想像以上に絢爛豪華なものだった。
僕達が会場に足を踏み入れると、招待客が僕達に注目し、集まってくる。
御令嬢方は僕に我先にと話しかけてくる。
自己紹介し、自分をアピールしてくるが‥‥全く興味が湧かない。しかし、名前は覚えていた方が後々役立つと思われるので覚えておくことにしよう。
‥‥それにしてもマリアンヌはどこへ行ったんだ!?絶対に離れてはいけないと言っておいたのに‥‥!
程なくして両親が僕達を紹介したいから一緒に行こうと戻って来られた。
「マリアンヌはどこにいるんだ?」
「先程までいたのですが‥‥。」
「初めてのお茶会だ。同じ年頃の令嬢や令息もいるし、楽しんでいるんだろう。ノア、紹介したい方がいるから一緒に行こう。」
「‥‥はい。」
嫌な予感がする。マリアンヌは大丈夫だろうか‥‥?
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‥‥義父達の話は長く、マリアンヌが心配でイライラした。中には婚約云々といった話まで出て、やんわり断るのに苦労した。やっと解放された後、マリアンヌを急いで探した。
マリアンヌは第一王子と楽しそうに話をしていた。
第一王子は僕を毒殺する犯人だから気をつけろと言っていなかったか!??
何故楽しそうなんだ!?
マリアンヌもムカつくし、
マリアンヌにやたら親密な態度をとる第一王子もムカつく。
「こんな所にいたんだ!?探したよ!?」
やっと二人の元へ行き声をかけたが‥‥
‥‥マリアンヌの様子がおかしい。
真っ赤な顔をして、怯えるように僕の影に隠れる。
「‥‥何かされたの?」
王子とマリアンヌを冷ややかに見て問うた。
「いえ、何もされていないわ!一緒にお茶を飲んでいたの!とても親切にしてもらったの!お父様達が心配してるわね?行きましょうか。それでは、ありがとうございました。失礼致します。」
彼女は早口でお礼を言うと、僕を引っ張りながらいそいそとその場を後にした。後ろから声を掛けられてはいたが、振り返ることもなかった。
‥‥やっぱりおかしい‥‥。
「‥‥‥‥‥本当は何かされたんじゃないの?」
途中足を止め、彼女の目を見つめて尋ねた。
「‥‥‥‥‥‥‥‥。」
「‥‥‥‥キスされたとか?」
「え!?違うわよ!?」
キスという言葉に明らかに動揺するマリアンヌ。‥‥キスしたのか!?
「‥‥‥‥ふーん。キスされたんだ。どこに?」
腹が立ち、彼女の手を握りしめる自身の手に力が入る。
「‥‥‥‥‥‥髪に‥‥‥。おかしいでしょ!?髪にキスされるなん‥‥‥‥」
‥‥髪に!?何てキザなやつ!?
僕は彼女の髪にキスをした。頭から毛先にかけて‥‥。あいつがキスしたところなんて全部無くしてやる。
「‥‥ちょ、ノア!?やめて恥ずかしいから!?」
「何で?消毒をしておかないと‥‥。」
「‥‥そんな何回もされていないわよ!?一回だけよ、一回!!」
‥‥一回だけか‥‥。でも許さない。
「そう?これからは男と2人きりになるのは絶対にやめて。約束だよ?」
「分かったから、分かったからもうやめて!」
彼女を解放し、暫く歩いて会場に到着した。両親が満面の笑顔で「楽しかったかー?」と迎えてくれたが、正直‥‥腹が立っただけだった。こんな会、何が楽しい!?
マリアンヌと会話をしていて気が付いたが、彼女はあの男が第一王子だと気付いていないようだった。普通分かるだろ?自己紹介されていなくても王子の顔くらい知っていて当然だし、服装や所作で分かるだろ!?
‥‥まぁ、いい。抜けている位が今後ともやりやすいから‥‥。
読んで下さりありがとうございました。