第二十三話 ノアside②
馬車では僕とルーカスの間にマリアンヌが座り、前席にショーンと護衛のジョンが座っていた。
ルーカスは始終笑顔で彼女の手を握っている。
‥‥またマリアンヌにくっついて‥‥。
「マリアンヌ、ルーカスは一般の6歳ではない。かなり精神年齢の高い6歳だから、そんなにベタベタするのは良くないよ。」
ルーカスを睨みながら、彼女に釘を刺すように言った。ルーカスはそんな僕を睨みつけ、次に彼女に泣きそうな視線を向けた。
「ほら!ノアがそんなこと言うから!可哀想なルーカス。精神年齢が高いのは貴方達でしょ!?」
彼女は「よしよし」とルーカスの頭を撫でた。
「だから!その見目に騙されるなよ!バカ!」
「バカとは何よ!ノアの方がバカでしょ!?」
「ほらまた始まった‥。うるさいんだよ、お前ら!」
僕と彼女はよく口喧嘩をする。その原因は100%このルーカスだ。ショーンも呆れている。
「うっ、うっ、うぇーん!」
「ほら!ルーカスが泣いちゃったじゃない!大丈夫よ‥‥ルーカス‥‥チュッ!」
「あーーーー!!」
「お前今キスしたな!?ルーカスにキスしたな!?」
「何よ‥。いいじゃない‥。ほっぺにチューしただけよ。泣いちゃったんだから仕方ないじゃない!?」
‥‥キスまでするか!?普通しないだろ!?‥‥キスするなんて‥‥!
もの凄く腹が立った。
「それじゃあ、俺も今から泣くからキスしろよ!」
「‥‥‥‥‥は?‥‥‥そんなの、するわけないじゃない‥‥。」
‥‥自分で自分の発言に驚いたが‥‥。
彼女も僕の発言にひどく赤面し、焦りだす。
僕のことを異性として意識してくれているのか?
そんな彼女の様子を見てルーカスも不機嫌になった。
そして湖に到着した後、鬼ごっこと言いながらいつもの真剣勝負が始まる。
負けず嫌いの僕は優秀な義弟と言えど誰にも負けたくはない。
ルーカスは魔法のセンスが抜群で、規格外に強い。剣術や体術は僕の方が上だが、魔法は全く歯が立たない。
そしてショーンは3歳年下にも関わらず、僕より背が高く、剣術や体術の腕も上だ。魔法力は僕の方が上だが‥。
だが、僕も魔法や剣術は出来る方だし、彼らよりも頭脳は優っていると思っている。彼らの隙をついて何とか勝ちたい!
腕の立つアランとジョンも参加し、ルーカスの魔法やショーンの素早さに翻弄されながら、壮絶な鬼ごっこは続いていた。
何とか隙をついて戦っている最中、信じられないことが起きた。
遠くに避難していたマリアンヌが何故か湖に落ちたのだ!
マリアンヌ!?一人で何してんだよ!?
急いで引き上げられた彼女はもう既に意識がなく、呼吸も止まっていた。
「マリアンヌ!!」
攻撃魔法は訓練していたが、治癒魔法を訓練していなかったことをひどく後悔した。そして彼女の息を吹き返さないといけない為、心肺蘇生を開始したのだが‥‥。
すかさずルーカスが人工呼吸しようとしたので急いで引き離し、自分がしようとしたけれど義父に引き離されてしまった。
そして結局、人工呼吸を施したのは義父だった。
しかも治癒魔法を吹き込みながら、手際良く実施されていた。
魔法を使われるところは一度も見たことがなく、少し頼りない義父だと思っていたが、実はこんなあざやかに治癒魔法が使える方だったなんて‥‥。
義父を改めて見直し、今後治癒魔法を訓練することを決意した。
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