第三話 お祖母ちゃん
最近の悩みは祖母に元気がないこと。
祖母はお菓子作りが趣味で、私に食べさせることを唯一の楽しみにしていた。
「マリちゃん、このチョコレートケーキ食べてくれないの?」
悲しそうに俯く祖母。
「食べるわ!でもホールは多すぎる‥ごめんね、お祖母ちゃん。」
カットされたケーキをゆっくり食べる。
祖母のケーキは蕩けるほど美味しかった。
「お祖母ちゃん!美味しい!」
私の笑顔を見て喜ぶ祖母。だけど今までのように貪り食べず、お淑やかに食べる様子を見て少し寂しそうだった。
「マリちゃんもお姉さんになったのね‥。」
本にゆっくり咀嚼して食べることで満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防いでくれると書いてあった。それと、糖質は血管を傷つけたり、脂肪を蓄積したりするのよ‥お祖母ちゃん‥。
そして隣で上品にケーキを食べるのは義兄のノア。
「お祖母様、とても美味しいです。」
「あらまぁ、ノアちゃんも喜んでくれて嬉しいわ!」
私には見せない笑顔を祖母に向けている。私にはいつも汚いものでも見るような顔か、無表情しかしないものね‥。
それでも嫌われないよう精一杯の笑顔をノアに向けた。
「‥‥‥‥‥チッ!」
え!?今微かに舌打ちしなかった!?
‥‥我慢我慢‥‥早死にしたくないもの‥。
‥それにしても祖母に元気になってもらう為にはどうしたらいいんだろう‥?‥もうたらふく食べるのは無理だし‥。あっ!そうだ!食べるより、作る方をしたらいいんだわ!
「お祖母ちゃん、私にお菓子作りを教えてちょうだい!私お祖母ちゃんとお菓子作りたいの!」
「まぁ!いいわよ!それじゃあマリちゃんのエプロンも用意しないとね!」
久し振りに祖母の満面の笑顔が見れた。
「良かったわ」と胸を撫で下ろしていると、とんでもない言葉が微かに聞こえてきた。
「‥どんだけ食べたいんだよ‥気持ち悪‥。」
!?
‥耳を疑ったが、確かにあいつ(ノア)の声だった!?‥くそ‥!殴ってやりたい‥。
‥でも我慢我慢‥耐えろ私‥。
ふぅと深呼吸して気持ちを落ち着け、にっこり微笑んだ。
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