第十七話 アーサー第一王子殿下side②
次に彼女と出会ったのは、王宮騎士団での訓練に参加した時だった。
最近、訓練にやたら強い少年が参加するようになっていた。彼の名はショーン。体格の良い彼は何とまだ12歳らしい。格闘センスもあり、団員から天才と言われている。将来は騎士団で活躍するのだろう。
その彼が見学に来ていたマリアンヌに笑顔で手を振っていた。彼もまた彼女の義弟だったのだ。
彼女の義兄弟は優秀すぎないか!?もう一人はどんな奴なんだろう!?
聞くところによると、彼女は訓練前に休憩室に来て手作りクッキーを配っていたらしい。僕も食べたかった‥‥!
そして彼に「君のお姉さんを僕のお嫁さんにくれないか?」と言ってみたが、かなり激昂された。
‥‥やはり彼も彼女が好きらしい‥‥。
騎士団の訓練は厳しい。全速力で走り、筋力トレーニングし、その後対人訓練‥‥。
ショーンには絶対に負けたくなかった。3歳も年下の上、恋敵でもあるのだ。だが彼の強さは規格外で、剣術は優れていると自負していた俺も、全く歯が立たなかった‥‥!
‥‥悔しい!!
そう思った瞬間、対人訓練では禁止されていた魔法を無意識に発動させてしまった!
‥‥しまった!‥‥と思ったがもう遅い。彼は結界魔法を発動させ、剣で真空を作り防いでいた。
「いつも荒野でもっと激しいのしてるだろ?心配しすぎだよ?」
彼はそう言うと、心配して駆け寄ってきた彼女の頭をクシャッと撫でた。
‥‥何だか恋人同士みたいじゃないか!?
‥‥それに『荒野でもっと激しいの』って何だよ!?どんな訓練してんだよ!?
そして彼女は彼に両手をかざし、治癒魔法を始めた。その後、切傷を負っていた騎士にも治癒魔法を施していた。
「へぇ‥‥。君、治癒魔法が使えるんだね。」
治癒魔法が使えるなんて優秀な令嬢だと感心していると、彼女は俺を睨み、「あれはやりすぎではないですか!?急に魔法を使うなんて‥‥。」と抗議してきた。
怒った彼女も可愛い‥‥。
「戦いの場では何が起こるか分からないんだよ?」
「殿下、さっきはやってくれたね。俺だって魔法は使えるんだ。魔法を使ってもいいルールにいつの間に変わったんだよ?」
「ははっ!悪い悪い‥‥ついね。」
「‥‥殿下?」
「えっ?知らなかったのかよ?アーサー・ケンブリッジ第一王子殿下だよ?先日のお茶会で出会ったんだろ?」
ショーンの言葉に驚く彼女。
もしかして彼女、俺が王子だって知らなかったのか!?
「まだ挨拶をしていなかったんだね。これは失礼しました。それでは改めまして、アーサー・ケンブリッジ第一王子です。マリアンヌのような美しい女性と知り合えてとても幸運だよ。」
彼女の前に跪き、手の甲にキスをした。
「‥‥‥‥あう‥‥。」
真っ赤になる彼女は本当に可愛い。
「‥‥クスッ。マリアンヌはやっぱり可愛いね。僕のお嫁さんになってくれたら嬉しいんだけど‥‥?」
目を見開き、口を開けて驚く彼女。いちいち反応が面白くて可愛い。
「マリアンヌは駄目だと言っただろう!?いくらでも婚約者候補はいるのに‥‥。それより、訓練に戻るぞ!?」
鬼のような形相で怒るショーン。
‥‥それにしても強烈なライバルが多いな‥‥。
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