第二話 治癒魔法の練習という名の真剣勝負
私が湖で溺れた事件後から、3人は熱心に治癒魔法を練習している。父が回復魔法で私を助けたことに衝撃を受けたらしい。
ルーカスはもう既に高度な魔法を練習しており、ノアはルーカスには及ばないものの父と同等の魔法は会得している。ショーンはあまり魔法は得意ではなく、かなり苦労している。
そして私も医学を目指す身である為練習しているが、うまくいかず、ショーンといい勝負をしている。
「さあ!今日は町外れの荒野へ行く日だ!」
「えっ!?また行くの……?……はぁ……。」
3人は張り切って声を上げると、それぞれ帯剣し、御者へ声を掛けに行った。そんな彼らにげんなりしながらも後をついて行く。そして侯爵家の護衛と医師も溜息をつきながら後を追う。
「…またこの日がきたな…。お互い、死なないように頑張ろうな…はぁ…。」
護衛達は目を見合わせて溜息をついた。
医師は薬草やポーションをせっせと詰め込み準備している。
「お嬢様、今日も気合を入れて治療しましょう!」
「………はい。」
荒野で何をするかというと『真剣勝負』だ。
怪我も気にせず大暴れする。規格外の3人が大暴れするものだから、本当に凄まじい……。
以前、侯爵家の庭園で勝負したことがあったが、その時庭が悲惨な状態となった為、庭での勝負は禁止となった。それで定期的に荒野へ行くようになったのだ。
大暴れして負傷すれば『治癒魔法』を施す。戦いと治癒魔法を学べて一石二鳥の練習だと3人は言うが……。
激し過ぎて誰か死んでしまうのではないかといつも冷や冷やして、生きた心地がしない!!護衛達も顔面蒼白で止めに入ることもある。
私も渾身の力で治癒を施しているが、「マリアンヌ、治癒してー!」と次々来るから、最後は魔力が枯渇しかかり馬車で休まざるを得なくなる。その後はそれぞれが治癒魔法を施しているようだが…初めから私ばかりに群がらず分散してやればいいのに…!と思ってしまう。そのことを伝えても、「マリアンヌの治癒魔法は気持ちがいいから…」と現状は変わることはない。
そんな私達の治癒魔法でも治らないほど傷付くこともある。そんな時は侯爵家の医師の出番だ。私は医師の処置を間近で見せてもらって勉強している。
「いい加減にして下さいよ!坊ちゃん達の綺麗な顔に傷が残ったらどうするんですか!?……それにもし命を落としてしまったら……恐ろしい!!」
医師は治療しながら説教している。
「はい、はい。気をつけます。」不貞腐れたように返事するショーン。
…絶対、反省していないわね…。
「僕はマリアンヌが抱きしめてくれたらどんな傷でも治るよ!」
そう言ってルーカスはまた抱きついてくる。私の首元に顔を埋め、「…いい匂い…」と匂いまでかいでいる。
「……くすぐったいからやめて……。」
「こーら!また、目を離すとすぐ…。」と、ノアが引き離しに来てくれた。
…ぎゅっ…
!?
引き離しながらノアまで抱きしめてくる。背の高いノアに抱きしめられると体がすっぽり包まれる。
「…いつもいつも……何でマリアンヌは……。守りきれない時もあるんだから自分で隙をつくらないよう気をつけて…。」
「……………は!?」
そこに割り込むルーカス。
「自分だって抱きしめてるじゃないか!義兄さん!勝負しよう!僕今イライラしてるから殺してしまうかも。自分で自分の身は守ってね!」
「望むところだ。お前も覚悟しろよ!」
そう言って、2人は飛び出して行った。
「俺もいれてくれー!」
そう叫んで飛び出すショーン。
「……いつまでやるの?もう帰ろうよ……。」
私はもうげんなりしながら3人を見つめた。
父もこんな危険なことやめさせてくれたらいいのに…。「男の子は元気が1番!」だって…。元気の域を超えているから!!大らか過ぎるのも罪ね…。
読んで下さり、ありがとうございました!