エピローグ
「はぁ・・・」
魔女は小さくため息を洩らした。
穏やかな砂の王国の午後。
馬の背に揺られ、魔女は俺の背にくっついていた。
・・・どうでもいいが、力入れすぎ。肋折る気かよ。
「・・・はぅ」
「・・・どうしたんだよ?ため息ばっかじゃねーか。退屈か?」
「違うの。逆よ」
背中越しに聞こえてくる魔女の声。
魔女は俺の背に音を立てて口づけた。
「すごく幸せだな~って思ってたの」
「何だよ、それ」
苦笑いすると、魔女は後ろから俺の顔を覗き込んできた。
見ると少し怒っている。
「今、笑ったでしょ?!」
「だって、『すごく幸せだ~』って・・・どこがだよ」
「どこ・・・って。じゃあ、ジェイドは幸せじゃないの?」
黒い瞳が輝いている。
俺は身体を捻り、魔女の腰を支えるとそのまま抱き寄せた。
魔女はすっぽりと俺の腕の中に収まる。
「幸せに決まってるだろ、アホ」
「・・・アホじゃないもん」
唇を重ねた。
甘い花の蜜を吸うように、魔女の唇をい貪る。
いっそ、このままここで抱きたいと思っていたその時、
「・・・大胆になりましたよね、指揮官」
「ってゆーか、ナナちゃんの方じゃない?」
「見られてるのに平気になっちゃったもんなー」
「エロい魔女っすね」
俺の横をロックたちが口々に言いながら過ぎていく。
その後ろをぞろぞろと水泳で疲れた兵士たちが続いた。
「やってらんねー」「見せつけちゃってー」などという声もちらほら・・・。
「・・・ジェイド」
唇を離し、魔女は俺を少し潤んだ瞳で見上げた。
「私・・・エロい魔女?」
「チャズの言ったことか?気にすんな。俺はエロい方が好きだぜ?」
ボッと顔が一瞬にして赤くなった。
声に出して笑う。
「ま、あいつらに見せつけてやつ義理はねーけど。お前のイってる顔、見られるのはなー。やっぱ嫌なんだよなぁ」
「イってないもん!」
真っ赤になりながら怒った。
俺の背をぺしぺしと叩く。
痛いって、だから・・・。
「あれ?お前、何回かイったことあるよな?」
「?!」
手の動きが止まった。
魔女は俯く。
俺は口の端を上げた。
「今日もイかせてやるからな。魔女さん」
「!!・・いいっ!!あの感覚は・・・なんか怖いから・・・いいっ!!」
「なに言ってんだ?気持ちいいくせに。もう決定だから。んじゃ、早く帰らないとな」
馬の腹を蹴ると、ぐんとスピードが上がった。
魔女も口をつぐみ、俺にしがみつく。
魔女の温もり。それは身体だけではなく、俺の心の中までも融かしてくれた。
あの嫌でたまらなかった満月も、今では彼女と並んで見つめることができる。
この女がここに来た本当の理由。
ドルカンタ大陸に平和をもたらしてくれた。
赤い魔女を退治してくれた。
読めない石碑を解読してくれた。
それ以外に・・・
<ギィ>の俺を愛してくれた。
「・・・ナナ」
黒い髪に顔を埋め、俺は魔女に囁いた。
「ずっとここで、一緒に暮らそうな」
見上げる黒い瞳。
ほほ笑むと彼女は頷いた。
俺を抱きしめる手に力がこもる。
「・・・はぁ」
俺は息を吐きだした。
「ほんと。すげー幸せ」
「魔女の涙」終わりました~~!
執筆を開始したのが・・・2009年ってどーよ・・・?
高校生の方は大学生ですね!!
いや~月日の経つのは早い早い!!
でも、これは絶対終わらせたかったので、満足してます。(自己満足だけど)
「エピローグ」は無くてもよかったんですが「プロローグ」があったので、ジェイドの視点で書いてみました。
短めですが・・・こんなもんかな、と。
個人的にはロックさんが好きだったりします(笑)
真面目で実は左利きというね。
おそらくプロポーズも一生懸命考えるんでしょうね~。
次回は「おまけ」を書きます。
結婚はしてるのかしてないのか・・・それは読者さまにお任せしますが・・。だいぶ月日が経っていそうなのは確かです。
では。
ここまで読んでくださった読者の皆さま。
どうもありがとうございました。
またお会いできることを楽しみにしております。
中原 やや