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砂漠の国に落ちてきた魔女  作者: 中原やや
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第17話

いつもより更新の時間が遅れてしまいました・・・

なんとか今日中にできたかな?

戦いもこれで終了です。

ザッ

「ぐっ・・・あっ・・貴様っ・・なぜ・・?」

 火竜の身体を足がかりに、地へと降りる。ひるんだ隙にケビンは火竜の足の下から引きずり出されていた。足が変な方向に曲がっている。

「ケビン!大丈夫か?」

「足以外は・・・。それより、指揮官・・・今日、満月じゃないっすよ」

「知るか!俺だってびびってんだ!」

 火竜を見上げる。

 左目を潰された竜は俺を睨んでいた。

「・・・いつの間に力をつけた?!」

「知らねーよ。勝手になったんだから」

「・・・魔女、か・・・」

 ゆるりと首を回したその時、

「ええいっ!!寄るなっ!!」

 突風が吹いたかと思うと、黒い塊がコロコロと転がってきた。

 手に絵画と石ころを持って。

「・・・ナナ?」

「あ・・あれ?ギィくん?じゃなかった、ジェイドか」

 目が回っているらしい。よたよたしながら立ち上がると、俺の頭をわしわしと撫でた。

「もうちょっとだから、待っててね」

「って待て!アホ女!」

 完璧に犬扱いされた俺は、かぷっとナナの手を甘噛みした。

 ナナは俺を見つめ、眉を寄せた。

「あれ・・・?ジェイド・・怪我してない?」

「ああ。してるが・・・よく分かったな」

「うん。今、さっき――――――――」

 俺はナナを押し倒した。

 頭上を火竜の右手が行き過ぎる。

 危ねぇ・・。

「な・・何でもいいから早く俺に口づ――――」

 ふわりと甘い口づけ。 

 体中に力が漲る感覚。

 やっぱり・・・こいつ・・・。

 ナナを見上げた。

「ケビンを見てやってくれ」

「分かった」

 言うとナナはケビンやチャズたちがいる方へと走り出す。

「させるか!!」

 火竜の首が伸びた。

 大きく口を開ける。

 やばい!!

「ナナー!!」

 振り向いた彼女の首に、巨大な牙が刺さると思った瞬間、

「甘いですよ」

 火竜の上顎に剣を突き立てた一人の兵士――――――――ロックだった。

「これで炎も吐けなくなったんじゃありませんか?」

「グォォォ・・」

 剣を突き刺したまま、火竜は一歩後退した。

 ギロリとロックを睨む。

「・・・お前っ!!・・・さっき・・・」

「この魔女さんに助けられました」

 言うと、ロックは俺を見る。

「ナナさんと口づけしたこと、怒らないでくださいね」

「良いからさっさと片付けるぞ!!」

 吠え、駆けだしたその時、炎の中から何かが現れた。

 陽炎かげろうのようにぼんやりとしている。

「・・・フローレンス?」

 そう、その陽炎は言うとゆっくりと姿を現した。

 体中ボロボロになった魔女ゾフィー。

 その瞳はロックを捉えていた。

「・・・フローレンス、会いたかったわ」

「・・・またですか?」

 ため息混じりに呟くロック。

 そういえば、こいつは<フローレンス>に似てたんだっけ・・・?

 ならば・・・

「ロック、ちょっと耳貸せ」

 ロックは俺の口元に耳を近づけた。「ほほう」と一人納得すると、魔女ゾフィーに向き直った。

 優しく微笑む。

「ゾフィー、会いたかった。早くこっちへおいで」

「ああ・・・フローレンス」

 ゾフィーはふらふらとロックに導かれるままついて行く。

 よし。ロック、後は任せた。

「ってことで、行くぞ!バカ大臣!!」

 ダンっと地を蹴ると、火竜の足を踏み台に竜の顔に飛びかかった。

 思い切り鼻先を噛む。

 口の中でみしっという嫌な音がした。

「ぐあっ・・」

 開いたままの口の端からちろちろと炎が漏れている。

 火竜は俺を手で掴もうとそれを伸ばしてきた。

「残念」

 大きく飛び、頭の上に着地する。

 二本のつのの間を今度は噛み千切った。

 肉の避ける嫌な音と感触。そして何より・・・・まずい。

「おのれっ!!」

ずんっ

 火竜の身体がぐらりと傾いた。

 見るとケビンが両足で立っている。側には黒い魔女の姿。

 ・・・ってことは・・・

「指揮官!ナナちゃん、一口いただきました!」

「・・!!良いから早く槍投げろ!」

 なんかむかつく。

 あいつの<魔力>は分かったが、何も口づけで無くてもいいんじゃねーか?

 絶対改良の余地あり、だな。

「んああああっ!!フローレンス!!」

 絶叫が響いた。

 火竜の頭上からそれを見ると、ロックがゾフィーを抱きしめていた。

 大方、「抱いて」とでも言ったのだろう。

 ロックの腕の中で、ゾフィーの身体が焼け落ちていく。

「貴方・・・サンゴと・・・?」

「言ってませんでしたか?私は『唇おばけ』に興味はありません。早く成仏してください」

 冷ややかに言うと、ゾフィーの身体を突き放した。そして、腰から短剣を抜き、

どんっ

 赤の魔女の心臓を貫いた。

 彼女の身体を深紅の炎が包む。

「・・・フローレンス・・・」

 言葉だけを残し、ゾフィーの身体は灰になった。

「ゾフィー!!」

 火竜のウィルニードが叫ぶ。

 あの魔女とこいつの関係・・・ま、男と女のソレだったんだろうけど、お互いを利用していたに違いない。

 となれば、もう・・・

「・・・諦めろ」

 俺は言った。

 二本の角の間で。

 オオカミの姿で。

 ・・・すげーかっこ悪い。

「あの女がいなくなったら、お前の野望もなにもねぇだろ。それにたぶん、ナナを喰っても不老不死にはならねぇ。逆に元の身体に戻っちまうと俺は思うけどね」

「・・・ふっ」

 火竜は鼻で笑った。

「それなら試してみれば良いだけのこと!!」

 火竜は尚もナナに向かい首を伸ばして走り出した。

 ケビンとロックがナナをかばう。

「指揮官!」

「分かってる!」

 俺は竜の鼻の上に降り立つと、残りの右目に向かい、右手を大きく振り上げた。

「・・・じゃあな」

ぶしゅっ

 俺が瞳をえぐるのと、ロックとケビンの槍が火竜の喉に深く食い込むのとはほぼ同時だった。

「ぐっ・・・」

 呻き、火竜はゆっくりと前のめりに倒れる。

 俺も素早く飛び降りると、ナナの側へ駆け寄った。

 返り血で真っ赤に染まった俺を彼女は優しく包んでくれる。

「大丈夫か?」

「うん。ジェイドは?」

「大丈夫だ」

 深く息を吐いた。と、

「指揮官!見てください!」

 火竜が金色に光り、徐々に人の形へと変わっていく。

 光が収まる頃には、全身に槍や剣を刺したままの全裸の男が、血の海の中でうつぶせになっていた。

 ロックが近づき、その男の首に手を当て、静かに首を振った。

「・・・終わったっすね」

 ケビンがぽつりと言った。

「この国、これからどうなるんでしょうね」

 弓を手にしたチャズも言う。

「なるようになるんじゃない?」

 ローズは言うと、ケビンの腰に手を回した。ケビンがそっと口づけている。

「でも、指揮官の呪いの解き方、分かりませんでしたね」

 言うと、ロックは俺とナナを見た。そして、苦笑する。

「まぁ、ナナさんがいれば、それで良いんでしたね、指揮官は」

「ああ」

 答えると俺はナナを見上げた。

 いつの間にか夕暮れだった空は漆黒の闇に変わっていた。

 今までの戦いがまるで嘘だったかのように、ナナの瞳は夜空の星のように輝いていた。

「ナナ・・・愛してる」

「私もよ。ジェイド」

 唇を重ねた。

 カッと全身が熱くなる。

 一瞬目の前が真っ白になるが、そのまま彼女の唇を激しく吸っていた。

「ちょ・・!!ジェイド!!」

 ぺしぺしとナナが俺の背を叩く。

 無視。

 そのまま、彼女の白く細い首筋に舌を這わせた。

 身じろぐ魔女。

 ――――ダメだ。可愛すぎる。

「ナナ!」

 がばっと押し倒した。瞬間、

「はい。終了」

 ゴンと後頭部に何かが当たった。

 振り返るとランスが困った顔をして立っていた。

 手には鞘に収まったままの剣を持っている。

 ・・・こいつ、これで殴りやがったな?

「ランス、お前、今――――」

「あのねぇ、全裸でナナちゃん襲うの止めてくれる?犯罪だよ、犯罪」

「は?何言って――――」

 ナナと目が合った。

 真っ赤になっている。

 自分を見た。

 ・・・指があった。

 人間に戻っている・・・でも、いつの間に・・・?

「えっ・・?俺・・?何でっ?!」

「何でも良いからこれ着てください。みっともない」

 ロックが落ちていた俺の服を拾ってきてくれた。

 うわ。マジ、俺、真っ裸だし・・・。

「んもぉ!ジェイドのエッチ!!」

 俺の頭にシャツを被せながら、ナナは笑う。

 所々、焦げたズボンを履き終わると、ナナを立たせた。

「何で・・・俺、元に・・?」

「私にも分からないわよ」

 魔女は肩をすくめた。

「傷を治す力だって・・・もしかしたらと思ってロックさんに試してみたの。そしたら、みるみるうちに傷が塞がっていくでしょ?自分でも信じられなかった。昨日まではそんなこと出来なかったのに――――」

「何がきっかけなんだろうね?」

 ランスが首を傾げる。

「・・・もしかしたら・・・」

 俺はナナの手を取った。

「あの大臣が言ってたんだ。ナナ連れ去った時に、俺とナナはまだ時が満ちてないって。考えてみたんだが、それって<ギィ>のことを俺が告白してないってことだったのかなって・・・」

「う~ん・・・どうだろう?『まだ愛し合ってない』ってのなら、二人とも十分にヤっちゃってるし・・・って痛いな、ジェイドは」

 頭を押さえる参謀と笑う兵士たち。

 ナナはと言うと、真っ赤になっていた。

「それで・・・あとは何をしてないかって考えたんですね?そしたら<呪い>のことを本人の口からは言っていなかった。・・・告白してからですか?そのナナさんの能力は」

「たぶん・・・」

 ロックの問いにナナは頷いて、俺を見上げた。

「昨日は・・・そんなこと無かったし・・・。ジェイドに口づけされたら、何か弾けたような感じがして・・・その・・・」

 やべぇ。顔がニヤけてくる。

 もじもじと話す魔女を早く抱きたかった。

「もう良いだろ。早く帰るぞ。陛下にご報告と隣国にも連絡しないと。あのゾフィーとかいう魔女、ライアル国の女王もやってたんだ」

『えーーーーー?!』

 ナナ以外の全員が声を上げた。

 ロックは愕然としている。

 そりゃそうだろう。自分の手で<女王>を刺したんだから。

 逆にランスは冷静だった。

「ライアル国は王に報告すれば大丈夫だろうけど・・・ここの皇子は?」

「薬漬けにされてるか、喰われたか、じゃねーか?ライアルの方もわからんぜ?」

 俺は城を見上げた。

 半壊している。

 もし、この中に皇子がいたとしても、助かっている可能性は限りなく低いだろう。

「・・・ジェイド」

 ナナが俺を見上げた。

 そっとその肩を抱く。

「帰ろう」

 半月を見ながら俺は口を開いた。

「帰ろう。俺たちの国、バースへ・・・」


もうすぐ終わりです。

最後までおつきあいくださいませ。

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