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砂漠の国に落ちてきた魔女  作者: 中原やや
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第6話

 大きなベッドにサニーは腰かけていた。

 ベッド以外には何もない。ただの赤い部屋。

 まぁ、ソレをするための部屋だから当たり前と言えば当たり前なんだが・・・。何もないというのはひどく滑稽だった。

「・・・お掛けになりませんの?」

「俺はここで良いよ」

 壁に背をもたせ掛け、腕を組む。サニーは一瞬、眉を寄せたが、すぐに笑顔になった。

「ああ、あの魔女さんとうまくいってるんですね」

「・・・そんなことより、話せよ」 

 勘の良い奴が多くて困る。

 サニーは笑うとゆっくりと話し始めた。

 エスメラルダとリーアムに行ったこと。途中、女たちを乗せた馬車が何台も街道を通って行ったこと。リーアムで男相手に商売をしていた二人の元に兵士たちも来るようになったことい。そこで知った事実。

「大臣、ウィルニードは女たちの血を集めてるんです」

 やはりか・・・。

 サニーは唇を噛んだ。

「始めは、指の先を少し切るだけだったようです。でも、それでは足りなくて・・・。指の切断。手や脚。そして、とうとう人ひとり分の血を欲するようになったようです。

 兵士さんが言ってました。夜毎に聞こえる女の悲鳴が段々増えてきている、と」

「・・・何、やってんだよ・・・」

 人殺しを国が行っている。

 皇子もそれを黙認か。実質、大臣が権力を握ってるらしいから、その男を止める奴もいないんだろうな。

「それから、エスメラルダが言ってました。彼女はリーアムでもすぐに人気が出て、お城にもよく呼ばれてたんです。

 その日も、お城から帰って来てすぐに、彼女、怯えながら私にこう言ったんです。『満月の夜は外に出ちゃダメ。絶対よ?私に何が起こっても、貴女は逃げなさい。逃げて、バースに帰って』って」

「満月の夜・・・か」

 サニーは俺を見上げた。

「その時は、私にも何が何だか分からなかったんです。ですが、ある日、城の使いだと言う人たちが来て、『女の髪の毛と爪が欲しい』と・・・。娼館にいる女たちは全員髪を切られ、爪を―――――」

 まさか・・・・!

 俺はサニーの手をとった。その細い指の先には・・・・あるはずのモノが無かった。

「お前―――――」

「私なんて、まだ良い方なんです」

 涙が頬を伝い落ちる。

「抵抗した娘は指を持って行かれました。しかもそいつらに凌辱りょうじょくされながら・・・」

 言葉が出ない。

 最低だ。人間じゃない。

「エスメラルダは・・・。彼女は何も抵抗しませんでした。好色に笑うそいつらに、彼女は凛として言いました。『私の髪や爪だけで良いの?どうせなら全部持っていったら?』って。大臣は女を集めてましたから、彼女はそのまま城へ連れて行かれました。そして――――」

 戻って来なかった。

 おそらく、彼女の身体を存分に味わった後に、爪を剥ぎ、切り刻んだか・・・。

 どちらにしろ、エスメラルダはもうこの世にはいない。

「彼女、こうなると分かってたみたいで・・・。連れて行かれた時に、こっそり私に言ったんです。『あれの下』って」

 『あれ』?何だ?あれって・・・?

 「『あれ』とは扉の番号札のことです。よく彼女、『あれを裏返すの忘れてたからヤッてる最中に入ってきちゃったのよ』って笑って話してましたから。それで、彼女の部屋の札を見てみたんです。でも、その下って言ったら扉ですし・・・。何だろうと思って――――」

 サニーは胸の谷間から小さな紙切れを取りだした。

「『あれの下』。番号札の真下―――床にありました。木目の間に挟まってたんです。これを」

 俺は手渡された紙を開いた。そこには

「大臣は巨大な鳥」 

「たぶん彼女、城でその姿を見たんじゃないでしょうか。それを確認するためにわざわざ自ら城に入ったんだと思います。・・・そうじゃないと納得出来ない・・・」

「・・・おそらく。だが――――」

 俺は紙をくしゃりと握りつぶした。

「その大臣が女を集めて血を取っているのには何かワケが有りそうだな。髪と爪といやぁ、昔から魔法薬と相場が決まってるし・・・。いったいそいつは何をしたいんだ?」

 サニーはゆるくかぶりを振る。

 そりゃ、こいつに聞いても分かんない、か。

「・・・よくやったな、サニー」

 肩に手を置くと、サニーは俺に抱きついてきた。声を上げて泣く。

「ごめんなさい。エスメラルダを見殺しに――――――――」

「あいつが決めたことだろ。大丈夫だ。あいつの伝えたいことは分かったから」

 ぽんぽんと背中を叩く。サニーはしゃっくりを上げていた。

「・・・国に帰られますか?」

「何だ、お前。咎められると思ってたのか?バカだな。こんな情報もってんのに――――ってやばいな。お前、誰かにこの事話してないよな?」

「はい」

 こくりと頷く。

 サニーを一人では国に帰せない。いつリーアムからの刺客が彼女を襲うとも限らないからだ。

「サニー、どうやって逃げてきたんだ?」

「リーアム名物、ロムの漬け物の樽の中に入ってきました。エスメラルダがいざというときは何か食べ物の樽の中に入れって・・・」

「でも、リーアムはムーアに輸出してないだろ?」

「はい。運良く、国境近くのソーン村へ運ばれたんです。村なら兵士もおりませんから、夜のうちに抜け出して、後は男をたぶらかして――――――」

 さすがサニー。男の使い方を良く知ってやがる。

「その男ってのはリーアムの?」

「いいえ。偶然ムーア国の方でしたので、そのまま」

「そいつ、信用できるのか?」

「ええ、たぶん・・・」

 サニーは頷いた。

「今でもよくここに来てくれてます。・・・ただ、目が不自由なんです」

「そうか。その男の家は知ってるのか?」

「え?ええ。・・・ジェイド様、一体どうしたんですか?」

 俺を見上げるサニーの顔が強ばっていた。

「もしかして・・・私、狙われているんですか?」

「かもしれないって話だ。いいか、よく聞けよ」

 サニーの両肩を掴むと、俺はまっすぐに彼女の茶色の瞳を見つめた。

「今から俺とその男の家に行こう。そこで、お前らはちょっと待っててくれ。用事が済み次第、迎えに行く。そしたら・・・バースに帰ろう。その男も連れてってやってもいいけどな」

「でも・・・あの・・・」

「ここの女主人には金貨をやってる。お前がいなくなっても怒らねーって」

 サニーはこくりと首を縦に振った。

「んじゃ、早く行くぞ」

 彼女の手を取ると、俺は扉を開けた。


すっっごい久しぶりの投稿で、申し訳ございません(泣)

ほんとに時間がとれなくて・・・・

もう最終段階に入ってはいすんですけどねぇ~・・・

まだナナちゃんの出番はないままですし・・・。

なんとかほんとに書かないとですね!!がんばらねばっ!!


では。次回をまたお楽しみに~~♪

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