第3章 第1話
私、どうしたんだっけ?
そうよ、ジェイドに抱かれて・・・。いっぱい愛してもらって・・・。
それで、身体を拭こうと浴室に行って――――――
それから?
いきなりめまいがしたのを覚えてる。立ちくらみみたいなやつ。
目の前が真っ暗になって・・・。
それで、私、どうしたの?
段々、瞳が闇に慣れてきた。
白い床、白い天井。白い服の人たちが慌ただしく動いている。
革張りの長椅子に見知った顔が座っていた。皆、一様に泣き崩れている。
あれは・・・
「お母さん・・・」
就寝が早い両親は寝間着姿のまま、病院へ駆けつけたらしい。母は泣き崩れ、その肩を沈痛な面持ちで父が抱いていた。
と、いうことは、この病室のベッドで横たわっているのは――――『私』
もうすでに顔の上には白い布がかけられている。
やっぱり、私、死んじゃったんだ・・・。
じゃあ、今の私は・・・いったい何なの?
「ナナ!ナナ!!」
遠くで、懐かしい人の声がしている。
帰らなきゃ。
帰る?どこへ?
決まってる。それは――――――
また、意識が遠のいた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ジェイド!どこに行くのさ?!朝から陛下がお待ちして――――」
「ナナが消えた!オアシスにいるかもしれない」
マリーと城中探してもあの女の姿は無かった。
馬小屋のマックスのそばにも、ネコのように眠る魔女の姿は無い。
それなら、あいつが現れた場所に行ってみるしかない。
「待って!僕も行くよ」
裏庭へと続く通路をランスと走る。
闘技場にはロックの指揮のもと、訓練が行われていた。
ロックは俺たちに気付くが、何事も無かったかのように指示を出していく。
馬に乗り、ランスも愛馬にまたがる。
「ついてこいよ!」
言うや俺は鞭を振りおろした。
ヒヒンと嘶き、二頭の馬は風を切る。
まさか・・・ナナのやつ、帰った・・・のか・・・?
でも、どうやって・・・?
突然、姿を消すなんて有り得ない。しかも、あんなに激しく愛し合った後なのに・・・。
広大な黄金色の砂の向こうにオアシスはある。少し太陽に反射して光っているような気もする。
「はっ!!」
気合いを発し、さらにスピードを上げた。
馬上でもナナを抱きしめたことがあった。
振り落とされまいと必死にしがみつくあいつが愛おしかった。
・・・くそっ!!あの、アホ!!
舌打ちをする。
そして、約1時間後、オアシスの中で一人茫然と佇む、全裸のナナの姿を俺たちは見つけていた。