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砂漠の国に落ちてきた魔女  作者: 中原やや
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第15話

 オアシスへ着くと、3つの班に分かれた。

 俺と魔女の石碑調査。女たちとケビンのオアシス探検隊。ロックら3隊長と兵士たちの通常訓練。

 もともと訓練のためにここに来てるのであって、遊ぶためでは無い・・・のだが、

「ケビーン!あの赤い実も採って~!」

「ロックさぁ~ん!頑張ってくださ~い!」

 ・・・訓練にならなかったりする。

 ま、なんとかしてくれ。まずは・・・。

「こっちだ」

 俺は魔女を連れてオアシスの周りに生えた林に分け入った。剣で草や木の枝を切りながら進む。

「こんなところだっけ?」

 俺の後をついてきながら、魔女は口を開いた。

「湖と滝みたいなところよね?」

「滝はとっくに見えてるだろ。あの下が滝つぼ・・・つーかオアシスっつーか・・・」

「でもオアシスって水が湧いてるところでしょ?砂漠の真ん中で。・・・ここ、オアシスじゃなくない?・・・でも滝でできたところだったら川になってるかな・・・う~ん・・・やっぱり滝?!」

「どっちなんだよ」

 苦笑する。

 と、視界が開けた。大きな音と共に、滝が落ちている。水しぶきが気持ちよかった。

「キレー・・・」

 岩山を見上げる。滝には虹がかかっていた。<光の滝>とはよく言ったものだ。

「ねぇ、ジェイド。この山の向こうがリーアム?」

「ああ。・・・行きたいのか?」

「ううん」

 女は首を左右に振った。

「他の国もどんなのか見てみたいけど、私、この国が好きよ。みんな優しいし」

 にっこりと笑う黒髪の魔女。機嫌もすっかり良くなったらしく、ヒールを脱ぐと素足で岩と砂の上を歩きだした。

 ドレスを持ち上げて水に足を浸す。

「・・・転ぶなよ」

「大丈夫よ。このくらい」

 水際でばしゃばしゃと遊ぶ魔女をそのままに、オアシスのほとりにある石碑へと俺は急いだ。

 城にあるものと形は同じ。長方形の石に不思議な文字。今回のそれには赤い小さな石はどこにも見当たらなかった。

「アホ女。こっち来い」

「あ!またアホって言っ―――――」


バシャン


 妙に派手な音がした。

 まさか・・・あいつ・・・。

 不安に駆られて振り返る。

 女は茫然と水の中で尻もちをついていた。『お約束』にもほどがある。

「・・・お前、本当にバカだろ」

「ばっ・・・!!・・・バカかもしんない・・・」

 立ち上がると、淡い空色のドレスはぐっしょりと濡れていた。

 つーか・・・

「・・・破れてるぞ、そこ」

「ええっ?!」

 右足の膝のところまで裂けている。

 どう転んだらあんな破け方するんだ?!

 俺は片手を頭にやるとため息をついた。

「ほら、早く水から上がれよ」

 手を差し出す。

 ためらいも無く、女は俺の手を取るとオアシスから上がった。

 ドレスのすそを絞る。

「どうしよう・・・。マリーに怒られちゃう」

 本当は俺だって怒りたい。

 まぁ、ヒールを脱いだ時に止めさせなかった方が悪いと言えば悪いのだが・・・。

「・・・脱いで良い?」

「・・・・・・は?」

 目が点になった。

 まじまじと魔女を見つめる。

 女は俺の視線を気にすることなく、背中の留め具を外し始めた。

 マジか?!こいつ!

「ちょっ・・・ちょっと待て!!」

 思わずその腕を取る。

 女は「なに?」と不思議そうに顔を上げた。

 こいつに常識は無いのか?!

「お前、脱いでどうすんだよ?!その下っつったら―――――」

「下着よ?下着っていってもキャミワンピだし。透けないから平気よ」

「平気って・・・」

 見る見るうちに留め具は外され、腰のリボンもほどかれた。

 ストンと砂の上に落ちる濡れたドレス。

 黄色に近い白色のような下着姿になった魔女は、そのドレスを拾い上げた。

 盛り上がった胸に自然と目が行ってしまう。

「どこに干しとこうかな」

 裸足のまま魔女はしばらくうろうろし、「あ!」と声を発したかと思うと石碑の上にそれを横向きにべろんと掛けた。

 奥行きもある石碑なのでドレスを掛けられても文字は読めるのだが・・・。

 ・・・あの女の方を見れないっつーの・・・。

「ジェイド!石碑でしょ~?」

 手招く魔女。

 なんであの女、あんなに、無防備なんだ?

 俺だけか?こんなに緊張してるのは。つーか、何だ?あの女。<ニホン>でどんな生活してやがったんだ?!

 あれじゃあ露出狂じゃねーか!見せたいのか?俺に見せたいんならいつでも喜んで見てやるぞ?

「ジェイドー!読むよー!!」

「待て!待てって!!」

 女を見ないように走っていくと、女は石碑の文字をじっと眺めていた。

 右側にまとめられた黒い髪。白い首筋にむき出た肩や腕。少し屈んでいるため、丸い尻が突き出ている。

 ・・・ダメだ。やっぱヤバい。

「・・・ナナ。これ着ろ」

 俺は自分のフード付きマントを外して女に渡した。

「なんで?」と首を傾げる魔女。

「いいから、早く着ろ!」

 渋々とマントをはおる。これで肩や胸は見えなくなった。

 ほっと胸を撫で下ろしていると、

「・・・もしかして照れてたの?」

「バッ・・・!!」

 図星を言われ、俺は顔が赤くなるのを感じた。

 魔女は俺を見て、意地悪く笑う。

「単なる白いドレスじゃない。ちょっとだけ薄いにしても。こんなの日本だったらこのままで町を歩けるわよ?おへそとか出してる子もいるのに。見せパンだって―――――」

「ここは<ニホン>じゃねー。ここじゃそんな格好でうろうろしてたら、すぐに野郎どもが群がってくる。それで襲われても誰にも文句は言えねーよ。自分で誘ってるんだからな。<ニホン>でどんな服着てたかは知らねーけど、もうちょっと・・・何と言うか・・・男を知れと言うか・・・その・・・」

「・・・ごめんなさい」

 珍しく魔女が謝った。

 俺は明後日のほうを向く。

 ダメだ。まだ気持ちの整理がつけきれてねぇ・・・。

「貴方一人だから・・・大丈夫だと思ってたの。他に変な人いないし。それにもし襲われてもジェイドが助けてくれるし・・・」

「俺が襲ってきたらどーすんだよ?」

 ため息と共に言葉を吐くと、魔女は俺を見上げた。視線がさまよっている。

「あ・・・えーっと・・・その時は・・・」

「・・・その時は?」

 女に一歩近づいた。逆に女は一歩後退する。

 マントを胸の前で掻き合わせた。

 何もしやしない。ただ、少し脅かしてやりたかった。

「俺がもし、そんな気になったら、お前どうするんだよ?」

「私・・・私は・・・」

 女の両肩に手を置いた。びくっとして身体が強張ったのが分かる。

 もうちょっと・・・。もう少しだけ・・・。

「お前は・・・どうするんだよ?」

 マントの留め具を外すと、音もなく地に落ちた。再び、太陽の下に眩しい身体が現れる。

 早く何か言え。つーか、拒否れ。じゃないと――――――

「私は――――」

 魔女は俺を見つめた。黒い瞳が潤んでいる。

 瞳の中に小さな星が瞬いているような錯覚に陥った。

 やばい・・・・止められない。

「ナナ」

 肩に置いていた手を、女の頬に当てた。女はそっと瞳を閉じる。俺は顔を近づけ――――― 

「あーーー!!指揮官がナナちゃんを襲ってる!!者どもかかれーーー!!」

「は?!えっ・・・?」

 下級兵の声に我に返った俺は、あれよあれよと言う間に魔女から引き離されると、オアシスの中へと放りこまれたのだった。

ちょっと進展した・・・かな??


どうやらナナちゃんの中では、下着ではなく、単なるワンピース程度の感覚のようです。露出狂ではないので、ご了承ください(笑)

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