第13話
昼食時に、魔女たちの姿を見た兵士どもは興奮しまくった。中には本当に涎を垂らしているヤツもいて、女たちはかなり引いていた。
ランスも魔女を見ると、嬉しそうにほほ笑んだ。
「何か、ナナちゃん見るの久しぶり。他の4人とは廊下ですれ違ったりもしたけど」
「うん。ごめんね。・・・なかなか浮上できなくて・・・」
恥ずかしそうに謝る黒い魔女。
それが俺のせいって言いたいんだろ?はいはい。
「それにしても良かったわ。仲直りしてくれて。実を言うと私、早くここに来たかったのよね」
ローズが笑った。それに頷くエルザとケイト。
一人賛同しないベスに皆の視線が集まる。ベスは皆を見回して、
「・・・私はこっそりガリウスと会ってたから・・・別に・・・」
「うわっ!お前ら抜け駆け!!」
「お前、マジメそうな顔してヤルことちゃっかりやっちゃってるんじゃねーか!!」
ガリウスはケビンとチャズから責められていた。
体格の良い体が一回り小さくなったような・・・まぁ、気のせいだろうがな。
って言うか、ケビン。お前も結構ちゃっかりしてると思うが・・・?
結局、訓練も俺より来るの遅かったしな。
赤くなった二人を見て、魔女は笑っていた。
笑顔も久しぶりかもしれない。・・・怒ってるのはしょっちゅう見るが・・・。
「それで、指揮官。食べたらすぐに出発ですか?」
ロックが訊く。
「そうだな。こいつらに合わせてたら2時間くらいかかるだろうし」
「あら。私は平気よ?」
ローズが笑う。
そりゃ、お前が馬と剣術が得意だからだろ。俺が心配なのは――――――
ちらりと目の前の女を見ると、「私?」とでも言うように驚いた瞳で俺を見つめた。
「酔わないとは思うけど・・・一人では乗れないよ?」
「んなことは分かってる。スピードのことだ。アホ」
「あ!またアホって言った!」
魔女は俺を睨んだ。黒い瞳が怒っている。
「どーせ、私はアホよ。誰かさんと違ってね!」
「お前とはココの出来が違うんだよ、もともとな」
と、頭を指差す。さらに魔女はムキになった。
「なに、そのムカつく言い方!本っっっ当にジェイドって意地悪ね!」
「お前がアホだからだろ」
「あ~懐かしい光景だ」
ランスがのほほんと紅茶を飲みながら口を開いた。そのため、俺たちの口論は一時的に止まる。
「いや、全くです。指揮官もナナさんがいない時は何もしゃべらず淋しそうでしたのに」
同意を示すロック。
「やっぱ、ナナちゃんがいると変わるよなぁ。指揮官」
「あら、ナナだって、この1週間は死んだみたいだったのよ?」
ケビンとローズが俺たちを見てニヤニヤしている。
その目をやめろ。
気が付けば、兵たちも俺とアホ女を見ていた。皆、ケビンと同じような目をしてやがる。
・・・てめぇら・・・。
「俺は見せモンじゃねぇ!とっとと食え!!」
ガンっとテーブルを叩くと、一気に視線を逸らし、兵士たちは黙々と食べ始めた。
ちらりと前に座った女を見やる。瞳が合った。
「・・・野蛮」
「!!つーか、お前がふっかけてきたんじゃねーか!」
「そっちが最初にアホって言ったのよ!!バカ!!」
「バカじゃねぇ!!てめぇのがよっぽどアホじゃねーか!!」
俺たちの口喧嘩は再開し、その間にランスとロックがオアシス行きの計画らしいものを立て始めていた。
ま、詳しくは後で聞くとして。
今は目の前のアホに勝たないと、な。