第9話
「なんでお前らここに集まってんだよ?!」
俺は4人を見まわした。
4人とはすなわち、ロックとケビン、ガリウスそしてチャズ。
隊長たちはお互いに顔を見合わせると、
「だって・・・。部屋に4人の男たちがいるってだけでムサイじゃないっすか」
「ここなら食事もできますし」
「広場にも近いですし」
「ナナちゃんたちにも会えますしぃ~」
「・・・てめぇら・・・俺がどれだけ探したと・・・?!」
拳を握りしめていると、侍女のアンがトレーに飲み物を持ってやってきた。
テーブルに5人分を置く。
「どうぞ、ジェイド様」
促され、俺は渋々椅子に座った。
テーブルの上には様々な書類や地図が散乱していた。
・・・こんな食堂でやることか?
「まぁ、いいや。で?チャズ。あの賊から何か分かったか?」
「いえ、特には・・・。服装と人種からリーアム国だとは判断できましたが・・・、武器もあの弓とナイフくらいしかありませんでしたよ」
「仲間がいた、という形跡は?」
ケビンとガリウスの二人は首を横に振った。
「砂は風で流されますからね。足跡をうまく消したのかもしれませんが・・・。あの死んだ賊は単なる囮っすよ」
「囮というより、捨て駒ですね。初めから死ぬ気みたいでしたし」
沈黙が訪れた。
それぞれが茶を飲んだり、資料を見たり、考え込んだり。
魔女と、呪いとリーアム国か・・・。
そういや、あの賊、最期に言ってたっけ?
「『貴様らは呪われている』って、言ってたよな?」
俺の言葉に4人の隊長は頷いた。
「この呪いってのは、俺のヤツか?それとも違う意味か?」
「違う意味だとすると・・・」
ロックは考えつつ、口を開く。
「『貴様ら』と言っていたので、おそらく『復讐してやる』ということなのではないでしょうか?」
「そしたら『呪ってやる』にならねぇか?」
これはケビン。
「もうすでに『呪われてる』んだぜ?じゃあ、国全体ってことにならねーか?」
「もしくは大陸全体・・・とか?」
「おいおい。まさかそこまで規模はでかくねーだろ」
俺は呆れたが、4人は慎重だった。
「でも、指揮官。『あの方』って言ってましたよ?『大臣か?』と聞いたら自害したんですが・・・。あれはもっと上のほうだと思っておいたほうが良いかもしれません」
「でも、今リーアムで実質、王はいないんだろ?兄弟喧嘩して、ヤバい大臣は弟側。それより上っつったら―――――――」
「・・・おそらく、ここ」
ロックは地図を指差した。
「仲の悪い<ウィ―リス国>と手を組んだとすれば、ルイス=マグワルド4世国王陛下。そして、隣の大陸の<ライアル国>、メアリ=ステイシー=ライアル女王陛下」
<ライアル国>は隣のシュルツ大陸の南部に位置していた。女王は金遣いが荒いので有名で、民たちは血税を払っているとか。
嘆かわしい。
ちなみに、来月この城に来るというセルヒム国は、その大陸の北部、ムーアと海を挟んで向かいにある商業国家だった。
「・・・どちらにしろ、何かオレたちじゃ役不足っつー感じですね」
チャズがテーブルに顎を乗せたその時、キャッキャと嬉しそうな女たちの声が聞こえてきた。
見ると、それぞれの手に野菜や果物、肉の塊など何かの材料を持っている。
「あら、貴方達、ここにいたの」
美しいローズが手に麦の粉の大袋を持ってやってきた。
チャズが問う。
「何が始まるんだ?」
「ナナがね、<お国>の料理を作ってくれるんだって。できたら皆でピクニックしましょうよ。それなら大丈夫よね?指揮官様?」
ローズとその他男4人の視線が突き刺さる。
行きたいんだろ?そんな目で見んなって。分かってるから。
「・・・敷地内なら良―――――」
「良かった!さすがね!!」
投げキスをし、ローズは厨房へと走って行った。
中には料理人が何十人といるのに・・・。あいつら全員で作るのか・・・?
「いやぁ~。ピクニックかぁ、すんげー楽しみ」
ケビンは嬉しそうに大きく伸びをした。
「こういうときだからこそ、息抜きも必要ですしね」
これはロック。
「オレたちがついてれば大丈夫でしょ」
と、ガリウス。
「あ~。腹減ったなぁ~」
チャズの呟きと厨房からの楽しそうな声に、俺は何となく頭を抱えたい気分だった。