第2章 第1話
・・・・・・・・・・・
・・・頭が痛い。何、わめいてるの?
「・・・ぃ!・・・ナナ!ナナ!!」
・・・ジェイド?
目の前に、緑色の瞳があった。心配げに見下ろしている。
「・・・もう大丈夫だからな」
「今、ナナって言った?」
初めて名前を呼ばれた気がする。
いつもは、『おい』とか『アホ』とか『お前』とか・・・。
私の名前、覚えててくれてたんだ・・・。何か嬉しい。
いきなり、目の前が真っ暗になった。
どこを見回しても、闇しかない。
「何?!どうしたの?!ジェイドは?皆は?」
自分の声がやけに響いたかと思うと、急に視界が開けた。
雨に濡れた街。
私はコンビニで買った白いビニ傘をさして歩いていた。
ため息場ばかりついている。
・・・思い出した。
この日は、私が山本先輩にフラれた日だ。
お気に入りの赤いパンプスで、デートしたのよね。で、その日の夜に言われた。
・・・でも、それならあの歩いている人間は誰?
私は・・・ここにいるのに。
どうしてか、Tシャツにクロップドパンツの<私>を私は見ていた。
彼女の少し後ろを歩いている感じ。
彼女のケータイが鳴ってる。それを無視する<私>。
横断歩道で、彼女は止まった。私も少し後ろで止まる。
信号が青に変わり、いつものメロディーが流れ――――――
「危ないっ!!」
右折のトラック。
ドライバーのお兄さんがケータイを使ってるのが見えた。そして――――――
「キャーーーーー!!!」
歩いていたおばさんが物凄い悲鳴を上げた。
私は<私>を探す。
どこ?吹き飛ばされた?それとも――――――――
「早く救急車を!」
「警察にもだろ?!」
「トラックの下敷きになってるぞ!!」
「上げた方がいいんじゃねーか?!」
――――――いた。
<私>だ。
トラックの右前輪の下。
徐々に血だまりが大きくなってきてる。
バッグと靴は道路の中央にまで飛ばされていた。
トラックのお兄さんが頭を抱えてうずくまってる。
救急車とレスキュー隊、警察がぞくぞくやってきた。
黄色いテープやら、青いビニールが貼られている。
・・・誰の目から見ても明らかじゃん。
バッグの中でまたケータイが鳴っていた。
この着メロは・・・山本先輩。一体、何の用だったんだろ?
ごめんね、母さん。
私、死んじゃった。
頬を一筋の涙が伝い落ちていった。
久しぶりのナナ視点でした。