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砂漠の国に落ちてきた魔女  作者: 中原やや
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第16話

ちょっと残酷なシーンがあるかも・・・です。ご了承ください。

「あ、ナナ様だ~~~!!」

 子供の声に、貧民街は一瞬にして騒がしくなった。

 黒髪の女の前に、子供たちが群がってくる。

「ちゃんと並ばないとあげないわよ?」

『は~い』

 どうやら、子供だけに配るようだ。ボロボロでつぎはぎだらけの服をまとった子供たちは女の前に綺麗に一列に並んだ。

 それを見て、女は籠から食べ物を一つ一つ手渡していく。

 俺はそれをただ黙って見ていた。

「ねぇ、騎士様は何かくれないの?」

「ん?」

「これ!いけません!ジェイド様、お許しくださいませ」

 俺に声を掛けてきた少年を母親が引きずっていった。

 ・・・やっぱり何かもらえると勘違いしてやがる。

「・・・おい、まだか?」

「今日はたくさんいるみたい。ほら、もうすぐパンがなくなっちゃう。・・・どうしよう?」

 見ると、籠の中には小さなパンが5,6個あるだけだった。

「知るかよ。お前が撒いた種だろ。自分で何とかしろよ」

「何とかって・・・」

 女は列を見た。あと十数人はいるだろう。一番後ろには赤子を抱いた若い母親の姿もあった。

 ・・・さぁ、どうする?魔女様。

「・・・ねぇ、ジェイド。このショールを売ったら幾らくらいかな?あとこのネックレスも」

「知るかよ」

 おそらく金貨数十枚。あのネックレスの宝石はここら辺では珍しい代物だ。

 見る者が見れば、その数倍はいくかもしれない。

「そのネックレスはやめとけ。マリーが怒るぞ」

「そっか・・・。じゃあ、ショールにする。はい、これ」

「・・・は?」

 いきなりショールを手渡され、俺は正直戸惑った。

 女は俺を見上げて言う。

「それ、売ってきてくれない?できれば銅貨にしてもらえるとありがたいんだけど・・・」

「んなこと自分でやれよ!俺はお前の召使いでも何でも無い!」

「じゃあ、皆とここで待っててくれる?そしたら私、行ってくるわ」

「う・・・」

 それはそれでイヤかも・・・。

 子供たちの視線が痛いし・・・。

「ナナさま、まだなの~?」という、あどけない声もちらほら聞こえてくる。

「・・・分かったよ。そこにいろよ?」

 ため息をつき、俺は貧民街から広場へと足を向けた。

 そこにはまだ旅芸人たちの姿があった。劇も架橋といったところか。

 そこを横切り、一つの服屋へと入る。

「あら、ジェイド様。こんなところに何の御用ですか?」

「これを買ってもらいたいんだ・・・って言っても買えねぇよな?」

「ええ・・・ちょっと高価すぎますので・・・」

 店主は困ったようにカウンターに置かれたレースのショールを見た。

「店が潰れてしまいます」

「・・・だよな。んじゃ、これ、交換してくれるか?できるか?」

 俺は銀貨を2枚出した。店主は「はいはい」と軽く頷く。

「もしかして、ナナ様といらしてるんですか?」

「・・・分かるか?」

「ええ。このショールもナナ様のでございましょう?貧民街の子供たちに配るのは良いんですけど・・・ちょっとやりすぎではないかと・・・」

「伝えとく」

 銅貨20枚を受け取った。その一枚を店主に放る。

「世話になったな」

「ありがとうございました」

 再び広場に戻った時、少し様子が変わっていた。

 旅芸人と見物人たち。そして、貧民街の子供たちがなぜか右往左往していた。それはまるで誰かを探している様にも見えた。

 ・・・どうした?

 声をかけようとしたその時、

「あ!ジェイド様!やっと見つけた!!」

 赤毛の少年が走り寄ってきた。肩で荒い息をしている。

「あのね。ナナ様がどっかいっちゃったんだ!」

「何?!」

 俺は耳を疑った。

 つい先ほどのこと。

 子供たちの目の前で、あの女がどういなくなるって言うんだ?

「どういうことだ?」

 少年の両肩を掴み、揺さぶる。少年は大きく息を吸うと、一気にまくしたてた。

「あのね、変なゴロツキが二人来て、ナナ様をどっかに連れ去っちゃったんだ!止めようとした父ちゃんたちは逆に返り討ちにあって、怪我をして―――――――」

「どっちに行った?!」

「あっち―――――――」

 そこは酒場と売春館が立ち並ぶ、裏路地だった。

「くそっ!」

 広場を横切り走る。

 まさか、こんな真昼間から人さらいが―――――いや、奴らの狙いは金か、あの女か―――――。金ならまだ良いが、女の身体が目的だとしたら、すでに・・・・。

「あの馬女うまおんな!!」

 酒場の通りに入った。

 手当たり次第に「黒髪の女がここを通らなかったか?」と聞いて回る。

 すると、ほどなく、

「ああ、そのなら、さっき抱き抱えられて宿の裏のほうに回ってったよ。娼婦じゃろ?」

「・・・あのアホ!!」

 細い路地を抜け、奥を曲がったその時、

「このアマ!!いい加減、観念しやがれっ!」

 男の怒声が耳に入ってきた。

 その声に向かい、走るスピードを上げると共に、腰から剣を抜く。

「・・・やっと大人しくなったぜ」

「見ろよ。たまんねぇなぁ、この身体。黒い毛の女ってのは初めてだぜ」

 ・・・胸がむかつく。

 娼館の角を曲がったその先に、そいつらはいた。

 白い脚の間に、大柄な男がこちらに背を向け座っていた。もう一人の男は女の身体の上に覆いかぶさっている。

 俺の中で、何かが爆発した。

 一気に間合いを詰めると、女の足元にいた男の首をねた。

 驚き、顔を上げるもう一人の男の喉に、剣を浅く突き刺す。

「・・・何、してんだ?てめぇ・・・」

「がっ・・・・旦那、いや・・・これにはワケが―――――――」

「死んで償えっ!!」

 鈍い感触。

 剣を引き抜くと、こと切れた男の体を蹴った。女の周りが血の海と化す。

「おい!しっかりしろ!!」

 剣を鞘に収め、女を見下ろした。

 ネックレスやブレスレットはそのままに、淡い草色のドレスや下着が左右に引きちぎられていた。

 身体中が男どもの唾液で光っている。

 よほど抵抗したのだろう。顔や腕には痣、胸には奴らの指の跡がくっきりと残っていた。

「くそっ!おい!ナナ!!ナナ!!」

 持っていたショールを身体に掛け、俺は女の身体を抱き起こすと、その頬を軽く叩いた。うっすらと瞳を開ける。

 ほっと胸を撫で下ろした。

「・・・もう大丈夫だからな」

「%&$#%&」

 <ニホンゴ>で何か言うと、再び女は瞳を閉じた。

 まずい!早く医者に診せないと・・・。

 自分のマントで女を包むと、そっと抱きかかえる。

 ドレスが砂や奴らの血で汚れていた。

「くそ!ナナ、しっかりしろよ!」

 俺は再び駆け出した。 

ああぁ・・・またジェイドファンが減るかも(汗)


皆さまの期待を裏切ってばかりのような気がします・・・><

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