結末
数日後―
オレは病院の玄関の前に立っていた。
あの事件後、モリナガとオレはてきとうな言い訳と共に病院へ行き、モリナガは数日間の入院を必要とした。
オレよりニッグの方が重体なのは一目で分かったが、ニッグは頑なに入れ替わりを拒んだ。
オレも最初は気が引けたが、ニッグの回復スピードはとんでもなく早かった。オレの傷が癒えるのと同時に、ニッグもまたほとんど治っていた。
ニッグにそれを言うと
「俺をそこらへんのやつと一緒にされちゃ困るぜ。特別なんだよ。とーくーべーつー」
と偉そうで腹が立ったので気にしないことにした。
モリナガも出血はあったものの大きな傷はなく、今日にでも退院できるそうだ。
そうしているうちにモリナガが病院の玄関からでてきた。オレ達は数名のお世話になった看護師さん達に見送られた。
オレ達は無言で歩いた。
しかし行き先はなんとなく分かった。
気がつけば学校の校門前にやって来ていた。
「閉まってるね、門」
モリナガが校舎を見つめポツリと言った。
「ああ。そうだ、モリナガに言おうとしてたことがあるんだ」
「なに?」
「お前がオレにドッペルゲンガーのこと教えてくれたとき、信じてやらなくて悪かった」
「ああ、いいよそんなの。私だってそんなに信じていた訳じゃなかったし」
「え!そうだったのか?」
「うん。でもなんでマツモトに話そうと思ったんだろ、私。もしかしたらあれが彼女が私に送ったSOSだったのかな」
「SOS…」
「そう。だって私一人だったら絶対彼女を救えてなかった。あ、でも彼女も私だから私のSOSだったのかな」
モリナガは笑って言った。
「モリナガ…」
「おーおー、お熱いねーおふたりさん。こんな真冬だってーのに」
!!
ニッグがいきなりオレ達の間に割って入った。
「うわっニッグ!ちゃ、茶化すなよ!」
「そーよ!もーなに言ってんのっ!そんなんじゃないってば!」
………え?
今モリナガにも聞こえたのか…?コイツの声が
「モリナガお前もしかしてこいつのこと見えるのか?」
オレは呆然とニッグを指差した。
「ええ、もちろん」
「おい、どーゆーことだよ!お前の姿はオレ以外の人には見えねーんじゃないのか!?」
「し、知らねーよ!」
ニッグ自身も驚いたのか、動揺していた。
「もしかして、ドッペルゲンガーの存在を視覚的に知っちゃったから?」
そんなのもありなのか?
とにかくコイツに関しては訳のわからないことばかりだ。またこの前みたいなことが今後起きないとも限らない。
オレはいつまでコイツと一緒な生活を続けなくちゃいけないんだろうか。
それとも…
オレかコイツのどちらかが消える日が、いつかは来てしまうんだろうか。
こうして平凡だったオレの人生は、ドッペルゲンガーのニッグによって奇怪な運命に巻き込まれることになっていくのだった…が、その時のオレはこれが始まりの事件だとは思いもしなかったのだった。
終わり
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
至らぬ点が多々あるかとは思いますが、また次作投稿できましたら、どうぞ引き続きよろしくお願い致します。