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2.邪悪な大神官

※本日2回目の投稿です。




神殿に帰ってきた聖女は、入口で兵士に止められてしまった。

まだ何かあるの?


「元聖女よ、陛下からのお達しだ。本日をもって神殿からの退去を命じる!」

「そんな。先ほど、神殿には残っていいと陛下が……」


言いつのる聖女に、兵士は冷たい目を向けている。


「これは命令だぞ。逆らう気か?」

「……わかりました。せめて、大神官さまにお別れを」


「駄目だ。お前の荷物はまとめておいた。これを持って早く城外へ出ていけ」

「…………はい」


なんてひどい仕打ちなの!

王様、言ってる事とやってる事が違うじゃない。


確かに神殿に残ったら嫌な相手と結婚させられて、こき使われるけど・・・

でも衣食住の保証があるだけ、追放よりはマシだと思うの。


聖女はふらふらと歩きながら、もらった荷物を確かめていたわ。

身を削って働いてもろくな報酬が与えられず、小銭だけのお財布。

質素な私服と古びた教典と日記帳と小箱。これぽっちで外で生活なんて無理よ。


小箱の中のペンダントを見て、聖女がかすかに笑った。よほど大切な物なのね。


こんな健気な娘を、なぜ追放するの。国王の真意を確かめてこなきゃ!

と思ったら、向こうの方から王様が歩いてきて手間が省けちゃった。

なにかぶつぶつ言ってる。独り言かしら?


「シアの次の婚約者は、誰が良いか……そうじゃ、シアは余の愛人にしよう! 若くて従順で可愛いし、他の者に与えるなど勿体ないからのう。ぐふふ」


想像以上にクズ親父だったーー!

聖女ちゃん逃げて!ここは逃げるのが正解よ!!


「おい、シアはどこへ行ったのじゃ。先ほど神殿に帰したはずだが」

「はっ。陛下のご命令どおり、元聖女は追放いたしました」


「なんだと。何かの手違いだ、早く呼び戻せっ!」

「ははっ!」


 兵士は慌てて走りながらも、不思議そうにつぶやいていたわ。

「おかしいな。大神官様から直々に王命として賜ったのだが……」


大神官?

もしかするとあの怪しい男が、何かを企んでるのかも・・・!


 ◇ ◇ ◇


「聖女殿、大丈夫かね」

「大神官さま……!」


荷物一つで城を出た聖女に、灰色の長髪の男性が声をかけてきた。大神官よ。


大神官って30歳の割に若作りで顔はいいんだけど、何か企んでそうなのよね。

神に仕える身でありながら、邪悪な気が感じられるというか。


大神官は、戦災で家族と故郷を失った聖女の後見人でもあるの。

聖女として覚醒する前の彼女を保護し、教会に預けて育てていたそうよ。

わたしがまだ守護についてない頃の話だから、詳しくは知らないけど。


聖女が10歳の時に神殿に来てからの5年間、大神官はあれこれと気にかけてくれていたわ。表面上はね。


聖女ちゃんが唯一、気を許してる相手なんじゃないかなと思う。

わたしは全然信用してないけどね! 怪しい匂いがぷんぷんするもの。


城下街の人気のない路地を歩きながら、二人は小声で会話しているわ。


「大神官さま。私、聖女ではなくなってしまいました……」

「奇遇だな。私も、大神官の位を辞することになった」

「えっ」


珍しく聖女が黒い目をまん丸にして驚いてる。わたしもびっくりよ。


どういうこと・・・大神官の奴もクビになったって!?




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