04
そして、新十郎は1冊の本をカウンターの上に置く。
「本当は私、腰に下げてる白木の刀かと思ったんだけど」
ユキは腰の下げている白木の刀をまじまじと見つめている。
どうやら彼女は本よりこちらの刀の方が興味あるようだ。実際、この刀の方がかなり希少価値があるかと自分も思う・・・。
だが、鑑定の話を出した以上はあまりこちらの刀を気にされても困る。
「刀はあとで。先に本の方をお願いします」
「じゃあ、後でそっちも見せてね」
ユキは本の上に手をかざす。すると、本が青い光に包まれ魔法陣が描かれる。
そして、10秒ほどすると光は消えて元の状態に戻る。
「なるほど。結論から言うと、ある条件が整わないとこの本は使うことが出来ないみたいだね。その条件は全然わからなかったけど」
新十朗が一言。
「それって、下手したら一生使うことができないってことでは・・・・・?」
「「・・・・・・・・・」」
沈黙するユキとツバキ。
そして、ユキが何かを思い出したかのように沈黙を破り一言。
「大丈夫だよ、・・・・きっと。その条件ってのは、今後必ず訪れると思うから」
「して、その根拠は?」
「私の勘ってことじゃ、不満かな?」
薄笑いを浮かべながらユキは語る。何かしらの自信があるのか、それとも・・・。
「とりあえず、その条件が揃うのを待つってことしかないんですね。何かはわからないけど」
「果報は寝て待て。っていうでしょ」
「同じ待つなら、人事を尽くして待ちますよ。寝て待つよりは有意義だと思いますしね」
二人の会話にツバキが新十郎に一言。
「なら、差し当たっては今後のことを考えた方が良いぞ。あれだけ目立った後だからな」
「・・・・・そうですね。いろいろ目を付けられていそうですし」
「それと、本の鑑定終わったんだから、その刀を見せてよ」
目を輝かせながら、ユキは刀を見つめる。
新十郎は腰に差した刀を抜き、ユキの前に置く。
「では、さっそく」
ユキは置かれた刀を手に取ろうとするが、刀に手が触れた瞬間、手がはじかれる。
「なぬ??」
ユキは再度も試すが手がはじかれる。
「なんでじゃ~~!!」
ユキは懲りずに手を差し出すが結果は何度やっても同じ。刀を手に取ることができない。そして新十郎を睨みつける。
「これ、鑑定しようと近くに手を置こうとしてもはじかれるって、契約かなんかしてあるの?」
「契約とか特別なことはしてませんよ。ただ、その刀自身に意志があるので人を選ぶってことは聞いてます」
ユキの顔が暗くなる。
「つまり、私は気に入られてないってこと・・・・?」
ユキは半泣き状態になりながら、刀を見つめる。
それを傍らで見ていたツバキが刀に触れようと手を伸ばす。するとユキとは違いあっさり手に取る。
「あ・・・・、なんかすまん・・・・」
ユキを見ながらツバキは謝る。まあ、気持ちはなんとなくわかる。
「でも、刀は抜けないと思いますよ。多分」
そして、ツバキは刀を抜こうと試すが一向に抜けない。
「私も気に入られていないってことか?」
「そんなことはないです、多分。必要とされていない時に抜かれるのが嫌なだけだと思いますよ。自分も抜けませんし」
「なるほど。戦闘時や緊急時以外は抜けないってことか」
弱1名が納得いかない状況だが、とりあえず刀を手に取り腰に戻す。
「さて、これから寮に案内するわけだが、少し寄り道をする」
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