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刃鳴ノ太刀(ハナノタチ)  作者: いさなんだ
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01

初投稿です。

長く続けていけるように頑張りますので、よろしくお願い致します。

 その世界には生まれながらにアイテムを持って生まれてくる者達がいる。

 そのアイテムを人は贈り物(ギフト)と呼び、その人にしか使えない専用アイテムである。そして、その贈り物は最初から最後まで変化はしない。だが、贈り物の中からは持ち主とともに成長していくアイテムがある。それを祝福(ブレス)と呼んだ。


 そんな世界に何も書かれていない本を持って生まれた、氷雨新十郎。

 その本は全て白紙のページであり、何も書くことはできず破ることも燃やすことすら出来ない。

 最初は魔法の書かと思い、成長すれば新たな魔法が生まれるかと思いきや、数年経ってもその兆しも無い。どうやって使うかも判らない。


 時折見る、子供のころの夢。

 曖昧な意識の中、誰かが語りかけてくる。

「その本の使い方を知りたければ、冒険者になって・・・・・に来い。」



 夕刻、道場の中から掛け声が聞こえてくる。中では老人と少年が木刀を持って対峙している。 

 老人が少年に木刀を連続で叩き込む。青年は打ち込まれる攻撃をそらすのが精一杯。老人の木刀がさらに速さを増す。少年はたまらず下がり距離をとるが、それを追ってさらに打ち込んでくる。

 そして、老人の一撃が少年の肩を打つ。それと同時に少年は木刀を手放し、床に倒れこむ。

 倒れた床には少年の汗が広がり、人型を作り出す。

「やはり・・じいちゃんに・・一撃・・・当てる・・・なんて・・・・無理です・・・」

 息を切らせながら喋る少年に対し、祖父は汗ひとつ搔いていない。

 そして、一言。

「悪くはないがないんだがな、新十郎」

 悪くないと言われても、片方は床に倒れ、片方は息も切らせず汗も搔かない。どう考えても、圧倒的な力量差がある。

「まあ、これだけできれば、同世代相手に遅れはとらんだろう」

 同世代で6時間休み無しで稽古をする人がいるのだろうか?と、考えはするが声には出さずにやめておく。目の前にいる人間は規格外だということは、ヒノワ国(この国)の全ての人が知っている。

 そして、祖父は道場の奥へ行き、壁にかけてある白木の刀を手に取る。

「入学祝だ、持っていけ」

 以前、祖父が愛用していた刀だ。しかも、祖父以外の人が触るとはじかれて、触ることすら出来なかった刀だ。

「この先、必ず必要になる時が来る。今はその刀を持てても抜くことはできんだろうがな」

 起き上がり刀を受け取る。昔は持ってもはじかれた刀だが今は何故だか普通に持てる。だが、実際に刀を抜こうとするが抜けない。魔法でもかかっているのか?

「さあ、明日は出発だ。さっさと着替えて飯を食って明日に備えろ」

 汗でぬれた服を脱ぎ、風呂につかり部屋へ戻る。そして、冒険者になるための学園に行く荷物の確認を行い、居間へと向かう。

 居間には食事の用意が出来ていた。2人は座り箸を取り食事を始める。

「明日の準備は出来たのか?」 

「はい、必要なものは全て用意しました」

「そうか」

 短い返事が終わり、そのまま無言が続く。

 そして、食べ終わり食器を片付けていると、一言。

「後は私がやっておく。早く寝ろ」

 新十郎は頭を下げ

「はい、ではおやすみなさい」

「おやすみ」

 居間を出て自分の部屋に戻り、床に就いた。

 

 一晩明け、身支度を整え祖父の見送りを受けて港に向かう。

 学園のある大陸には船で2日、着いた港からは馬車で1週間ほどかかる場所にある。


 

 続々といろんな国から集まった冒険者を目指す人達が校門へ向かっていく。大半は人間であるが他の種族も混じっているようだ。

 その中に1人、和服に袴を着て腰に2本の刀を下げている新十郎は周りから視線を集める。まあ、仕方ないことだ。100年近く前まで新十郎の生まれた国は他の国との関係を持たずにいたのだから、他に同じ服装の学生がいない時点でさらに目立つ。本来であれば、マントをつけて目立たないはずだったが、アクシデントで使い物にならなくなり、仕方なく処分する羽目になった。

 制服は入学式を終えた後に生徒たちに配布される。それまでは、いま着ている服で過ごすしかないと諦めつつ、学園へ足を向ける。


 校門をくぐり校内に入ると、校舎前の掲示板の前で人垣ができ、なにやら騒ぎが起こっている。人垣を掻き分けて騒ぎの中心を見ると4人の男性がいる。

 どうやら、3人の新入生が1人の新入生に対し暴言を吐いている。よく見ると1人の方は犬のような耳と尻尾がある。亜人のようだ。

 集まった人達の中にも亜人が混じってはいるが関わりたくないと思い、こそこそとその場を離れていく。

「ぶつかって謝らないとは、やはり亜人は獣だな」

「ちゃんと謝ったじゃないか」

「謝るというのは、頭を地面に擦り付けて行うものなんだぜ」

「ここは礼儀も出来ない亜人の来るところじゃない。さっさと森に帰れ」

「亜人が冒険者を目指して何が悪い」

「獣くさいんだよ」

「大体お前らの住む場所はここじゃないだろ」

「首輪つけて、下町で働くのがお似合いだ」


 いくらなんでも言いすぎだ。争いごとは好きではないが、黙っては見ていられないと新十郎は走り出す。そして、言い争う彼らの間に新十郎が割って入る。


「その態度は冒険者を目指す者として如何なものかな?」

「何だ、お前」

「その格好からして、ヒノワ国(田舎者)だな」

「だからどうした?」

「関係ないやつは引っ込んでろ」

「関係ならある。これから学園(ここ)で互いに学びあう仲間だ」

「「「はあ?」」」

「こんなのがなか・・」

「だまれ」

 3人を睨みつけながら、さらに言う。

「冒険者であれば、仲間を信頼し背中を預けあうもの。その仲間に対し、そのような態度はあってはならない」

ヒノワ国(田舎者)が粋がるな」

 3人が腰に下げていた剣を抜く。

 新十郎も腰の刀に手をかける。


 互いに睨み合うこと、数秒後。

「チョーット、待った!!!」

 掛け声とともに空から男が降ってきた。リーゼントを決め、グラサンをかけた男だった。

 男は制服を着ているのでここの生徒であることは間違いないようだが。

「新入生諸君、入学したてではしゃぎたい気持ちも良くわかる。だが、(ソンナモノ)を手に取るのはどうかな?」

 3人はそれでも構えた剣を引かない。だが、新十郎は刀から手を離している。

「ふう」

 男はため息を突くと同時に3人に向けて蹴りを放つ。3人の前髪がふわりと浮くがそれ以外、何もおきてはいない。

「ふん、見掛け倒しかよ」

「上級生だからって、3対1で勝てると思ってるのか?」

「弱い犬ほどよく吠える。どうやら、自分たちが持ってる(モノ)が見えないらしい」

 男が言い放つと同時に3人の持っていた剣の刀身半分が地面に落ちる。

 男の足に目をやると蹴りを放つ前までは普通の靴だったが、今は白く尖った形のブーツに変わっている。

 どうやら、あの靴は祝福(ブレス)のようだ。

「さて、まだやるか?」

 3人は脱兎のごとく、その場を去っていく。

 男は新十郎に向かい、言い放つ。

「一言注意しておく。ある国に行けば、お前のとった行動はお前と庇った新入生以外、全てが敵になる国があることは忘れるな」

 男に向かい、新十郎は頭を下げ、一言。

「ご忠告ありがとうございます。だが、どんな場所や状況であれ、自分のとる行動は変わりません」

「信念貫くのは構わんが、自分の命すら気にしないのは気にいらないな。お前も指導するべきかな?」

 男は新十郎をにらみつける。

「あの3人と同じようにはいきませんよ」

「自信家なのか、それとも馬鹿なのか。おまえはどっちだ?」

 二人は向き合い構える。

 相手は丸腰。蹴りか、それとも拳か。どちらにしてもあの蹴りは警戒しなくては。

 そんな考えをめぐらせ一瞬、足に目線を配ると。

「蹴りしか使わんから安心しろ、後輩」

 どうやら、本気で相手にならないと思っているようだ。

 手の内は知らないのはお互い様だが、こうまで言われるとちょっと腹が立つ。

「本気でいきます」

「おう、やってみな」

 新十郎が柄を握り締め、刀を引き抜こうとする。

 互いに踏み込もうとした次の瞬間、銀色の風が吹いた。

 そして、二人の首筋に刃が突きつけられる。

「いい加減にしないか!」

 銀髪の女性が2人の間に割って入り、刃と突きつけながら睨み付ける。

「レイシン、貴様は何をやっている」

「ちょっと、後輩に・・・・・」

 男は言葉に詰まる。

「騒ぎを大きくしてどうする?」

「スマン・・・、ツバキ」

 レイシンが謝るとツバキと言う名の女性は2本の刀を納めた。

「悪かったな。馬鹿が余計なことをして」

 ツバキは新十郎に向かい、頭を下げる。その態度を見て頭が冷えた新十郎。

 そして

「いえ、こちらこそ言わなくていい発言をしてすいませんでした」

 新十郎も頭を下げる。

「だが、学内で揉め事が起きた時は即座に教師に報告。勝手に止めに入れば、騒ぎを大事(おおごと)になりかねない。まあ、助けに入りたい気持ちもわからなくはないが、今後は注意するべきだな」


 正論だ。現状を見れば、自分が騒ぎを大きくしたことは間違いない。言い返す言葉も見つからない。

 本来なら、彼女の言うように教師を探し、騒ぎの仲裁してもらうことこそ一番早い解決方法だ。

 頭に血を上らせ、一時の感情で騒ぎを大きくしてどうする?

 そんなことを考えていると、不意に声を掛けられる。

「悪かったな、後輩。俺も余計なことをした」

 レイシンが新十郎に頭を下げる。

「こちらこそ、すいませんでした」

「互いに謝ったところで、これにて解決。後は2人とも、がんばれ」

「「??」」

 何をがんばれと言うのだろう?そんなことを考えていると、レイシンがガックリした表情をしている。

 その目線の先にあるものは・・・・・。

 人垣の前に立っている、引きつった表情をしている3人の教師だった。

 入学早々、早くも説教を食らうハメに。

文章を読み返しながら作成しておりますが、誤字脱字等があったら指摘してください。

確認して再度、編集いたしますのでよろしくお願い致します。

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