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アナザーワールド  作者: .つくし
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目覚めの村



フェリスが元いた世界で最後の大きな戦いといえば龍人族との戦いだろう。そして最後にして最高の戦いであったとフェリスは自負している。ヴェンゲートは元々龍人族の勢力であったのだがその戦いを最後にフェリスに忠誠を誓ったのだ。戦いの勝利と勢力の変更。その事は全土にフェリスの力を示すこととなる。そもそも龍人族はその圧倒的な力により他種族を相手にする事はない。ヴェンゲートでさえバーンリオよりも圧倒的な力を有していると言われている。

「お主が龍人族じゃな。」

フェリスにとっても龍人族との出会いは数度だけである。

「そうですねフェリス様。私が龍人族のヴェンゲート=インスと申します。」

ヴェンゲートはフェリスを品定めするように見渡す。先ずは長であるククレの前に立つにふさわしいのかを見定めているようだ。

「では。ご案内致します。」

ヴェンゲートは戦うつもりはないようだった少し違和感を覚えたがフェリスは何も言わずに付いていく。龍人族がいると言われる居城はそれはもう立派なものであった。戦いが絶えない多種族とは違い戦いすらしない龍人族ならではなのだろう。その最上階ククレは部屋の真ん中に椅子に座りフェリスを待っていたというようであった。スッと立ち上がるとククレは笑顔でこたえた。

「フェリス殿、待っていましたぞ」

ククレの姿を見たフェリスはゾッとする。いや、姿というよりその異様な存在感に。

「ふむ、お主がククレかのぅ。なるほどバーンリオとは比べものにならんのじゃ」

フェリスも負けじと前へは一歩進む。

「フハハハ、まさか劣等種と比べられるとは。いやはや恐れ入ったぞフェリス殿。私が龍人族の長ククレ=アールセンスです」

頬を緩ませながらその冷たい視線をフェリスに向ける。この言葉にはフェリスも見て分かるように驚いている。劣等種と言っていたが鬼族は劣等種などではない。確実に強さを誇れる種族だ。

「でも私も貴方だけには一目置いているのですよ。ヴェンゲートを見れば分かります。貴方はヴェンゲートよりも強い。それもヴェンゲートが戦うだけ無駄と思うほどに」

そう言うとククレまた一段と深く笑う。

「褒めて頂き光栄じゃ」

フェリスの額に汗がにじむ。

「では。始めましょう。#審判の庭園__エヴァーガーデン__#。フェリス=アイルデートを私の庭園へご招待致します」

「こ、これは、、!?」

フェリスは気がつくと綺麗に整理された庭園へと送り込まれていた。

「驚きましたか?これは龍人族に伝わる固有妖術になります。広さはさっきの部屋と同じになりますのでお気をつけを、、」

またもフェリスはゾッとする構えたその姿は一寸のスキもなく圧倒的な強さを見て感じ取れる程だ。

「では。いかせてもらうぞフェリス殿。」

すると凄まじい速さでフェリスに近寄る。とっさにフェリスは後ろへ飛ぶ。鋼のような硬さを持つククレの爪による攻撃に間一髪目の前を過ぎる。そして足を止める事なく走り回る。

(な、なんじゃあれは。一発でも食らうとまずいぞ!!)

しかし完全に速さを上回るククレに追いつかれ一振りくらってしまう。

「おやおや、期待していたのですがね?これだけですか?逃げるばかりでは勝てませんよ?」

「くっ、、これはまずいのぅ出し惜しみは無しかのぅ」

フェリスは立ち上がり高鳴る鼓動を抑え、吠える。

「我は妖狐フェリス。我が名はフェリス=アイルデートぉぉぉ!」

長い白い髪を携え、四本の尾を生やす。フェリスの変化を見たククレは顔色を変えた。先ほどまでの作られた笑顔ではなく心からの笑顔である。

「素晴らしい。これが劣等種に与えられた足掻きの力か」

「足掻きとは言い方が悪いのぅじゃが、心が躍るわい。さぁ#戦争__ゲーム__#としゃれこもうのぅ」

そこからの2人の戦闘は白熱であったと言われている。その戦いを見る者はおらず。語る者もいない。だが固有妖術が切れ、辺りが居城に戻った時にはフェリスが満身創痍で立っておりククレが床に伏していた。

この戦いをもってフェリスはこの世界を名実ともに制覇したのだ。



 フェリスは目を開けるとそこはどこかの民家のようであった。簡易的な作りでベッドに横になっているようだが少し硬い。体を起こすと少し頭痛がした。フェリスは微かな足音を耳で拾った。そしてドアが開かれる。入ってきたのは小さな男の子だ。

「あぁ!目さめたんだ!!よかったー!!おねぇちゃーんイービーの人目がめたよー!」

男の子は大きな声で外に呼びかける。その声に呼ばれるがままに入ってきたのは見覚えのある女性である。あの森で見かけた女性だ。

「よかった~。ミルちょっと外で遊んでて?おねえちゃんこの人と話したいからさ」

男の子はミルというのだろうか。ミルは少し不機嫌な顔をしてそのまま外へ出て行った。

「ごめんなさいね。ミルがうるさくて。それにしても帰ってこれて私たちついてますね!」

フェリスは「大丈夫じゃ気にするでない」とかぶりを振る。

「ありがとう。それよりも貴方は一体なんなのですか?ファルティカを一撃で、しかもあの魔法、、」

彼女は訝しげにこちらを見つめてくる。そう言われてもあの術の事もあの獣の事も何もフェリスは分からない。だから逆におしえてほしいものじゃと表情を曇らせる。

「あ、ごめんなさい。私ったら。私はアイリスと言います。アイリス=ベルト。冒険者です。って言っても4等級だからまだまだですけど」

アイリスは苦笑いを浮かべる。冒険者とは一体なんなのか知らないことがどんどん増えていく。どうやらフェリスの世界とは全く違う形態のようだ。

「ふむ、アイリスか。妾はフェリス=アイルデートじゃ。ここの事を教えてもらえるとありがたい。まずはそうじゃなぁここはどこじゃ?」

まずは自分がいるところを把握し3人のことを推測したいと考えた。

「そんなところから?そうですねーここはマーシー村です小さな村ですがここから少し歩けばバルルカンと言う大きな街があります。私はそこの冒険者です」

どうやらこの世界には4つの国という物ががありさらにその中に村や街があるらしい。国はここサークルベイン、ノースハイルエン、イーストライア、ウエスティーゼ。

フェリスは話を聞くと「ふむふむ、なるほど」と言い少し考える。

「ふむ、明日から妾はとりあえずバルルカンにおもむくのじゃ」

アイリスは「休まなくても大丈夫ですか?」とフェリスを心配する。

「最後に力について聞きたいのじゃ」

「力?魔法のことですか?、、そう!あれはどーゆー事ですか!?」

すごい剣幕でアイリスはフェリスに詰め寄る。『まほう』とはなんじゃとフェリスは首を傾げる。

「え?知らないで使えてたんですか?そんなこと、、あるんですか?」

アイリスは少し待つようにフェリスに告げると外に出て行ってしまった。静かな部屋に1人ポツンとフェリスはベッドに横になる。少ししてまたドアが開かれる。アイリスと1人の老婆。こちらを見つめている。

「ババ!この人だよ。下級魔法でファルティカを倒した人!」

その言葉を聞いて老婆は細めていた目を大きく開きフェリスを見つめる。一瞬なんとも言えない空気が辺りを支配する。

「なんじゃ、妾に何か用かのぅ?」

老婆はまた目をスッと細めると頬を緩ませ答えた。

「貴方がフェリス様ですな。ワシはマーシー=ベルトじゃ。なんでも魔法を知りたいと」

フェリスは黙って首を縦に振る。

「それならばバルルカンに行ってみると良いでしょう。そこにはワシの友がいる。名をワイラ=フォンデルン。年老いたジジイじゃ」

フェリスは「ふむ、ありがとう」とひとこと言うとまたベッドに横になってしまう。そしてすぐにスースーと寝息を立てて寝てしまった。どうやら別世界に行く事は慣れるまで少しだけ身に影響を与えるらしい。それか元の世界ではなかった変化する事での副作用なのか。フェリスにはまだ知らない事だらけである。




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