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秋原短編集

月の下で幻想的な告白を

作者: 秋原かざや
掲載日:2018/12/10

 しんとした雪の日。

 月明かりだけが、彼女を照らす。

 吹雪もいいけど、やはり晴れた日がいいとは、彼女の言葉。

 僕もそうだと思う。

 雪のように白い肌、白い髪、そして、澄んだ赤い瞳。

 夜の雪道で彼女に会ったら、どんな男でもふらっとなびいちゃうと思う。

 僕だって、そんな綺麗な姿を見せられたら、ふらってなっちゃう。


 相手が、母親でなければ、の話だけど。


「で、君はいつ、恋人を見つけるの?」

 美人過ぎる母がそう尋ねる。

 ついでにいうと、これで800年生きているらしいが、聞いてはいけない話だ。

 僕はうっかり聞いて、しばらく氷付けにされてしまった。

 あれは、生きた心地しなかったし。

「さあ? 僕が気に入った子がいたらいいんだけど、ねぇ」

「じゃあ、今すぐいけ、さあいけ」

 あっという間に外に放り出された。

 どうやら、母の種族は、恋をして子をもうけないといけないらしい。

 それでないと、不老長寿がなされないとか。

 僕はそんなのどうでもいいんだけど、母は、一人が嫌だと言っている。

 そういえば、父は僕が生まれる前に事故で死んでしまったらしい。

 おいおい。

 どんな人かと尋ねれば。

「とっても素敵な人……私をずっと見てくれて、褒めてくれて、ずっと側にいてくれたのよ」

 そういって、頬をぽっと赤らめていたっけ。

 結局、外見がどうとかは教えてくれなかったが、まあ、格好良かったんだろうな。たぶん。

 どちらにせよ、僕は両方の血を受け継いでいるので、いい男だとは、母の言葉。


 というわけで、僕は、雪の降る駅に来ました。

 人々は少なく、足早に帰って行く。

 僕はそれをぼーっと眺めながら、ため息を零した。

 そう簡単に恋人が見つかるわけがない。

 しかも雪の降る駅。人気がなくなるこの駅で、見つかるはずはない。


 そう、思っていた。


 ぽっと明かりが灯るように、彼女は現れた。

「うー、さむっ。今日は雪だったっけ?」

 暖かいマフラーをぎゅっと抱くように、ほうっと白い息を吐いた。

 黒い髪に黒いコート。深い、夜の色をした瞳。

 真っ白な母とは違う、見たことのない暖かな黒色に、僕は釘付けになった。

「でも雪がやんで良かった」

 ふと彼女が空を見上げる。

「わあ、月きれい!」

 彼女の言葉に従い、月を見上げる。本当に綺麗だ。

「本当に、綺麗ですね」

 僕がそう言うと、彼女は嬉しそうに隣にやってきた。

「そう、とっても綺麗よね! あー、携帯で撮りたかったけど、今、充電切れちゃってるんだよね」

 でもと、彼女は急に僕の手を握ってきた。

 暖かい手。手袋越しではあったが、彼女の暖かな体温を、確かに感じた。

「でも」

 にこっと、可愛らしい笑みで彼女は続ける。

「こうして、一緒に見てくれる人が居て、嬉しいわ!」

「……僕も」

 彼女に押されるかのように、僕もそう呟くと。

「ありがとう!」

 元気な声で笑顔を見せてくれる彼女。

 その笑顔が眩しくて、眩しくて。

「あ、あのっ!!」

 僕は思い出した。

 確か、亡き父が残した手帳に書いてあった一説を思い出した。

「月が綺麗ですね」

 それが、女性を口説くのに良い言葉だったのだ。

 と、言った後で思い出した。

 それって、さっき言った言葉……しまったぁ!!

「ふふ、それ、さっきも言ったよね。本当、なんども言っちゃうくらい綺麗な月だよね」

 彼女はそういって、もう一度、空を見上げた。

「えっと、そうじゃなくって……」

「なあに?」

 ちょこんと首を傾げる彼女に僕は続ける。

「あなたも……いや、あなたの方が、月よりも綺麗、ですっ……」

 な、ナニを言っているんだ、僕は!!

 本当は、かの文豪がアイラブユーをそう訳したって話をしなくっちゃいけないのに。

 出てきた言葉は、違う言葉で。

「君も、綺麗だよ……月のように綺麗。だからね」

 彼女はにこっと笑って言った。

「あなたの名前、教えてくれる?」

「ぼ、僕の名はっ……」


 こうして、月が綺麗な夜。

 僕と彼女が出会って、淡い恋が始まった。

 雪のように儚い、小さな恋が……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルが気になって拝読しました! 情緒を感じる素敵なお話でした。 今と真逆の季節ですが、はやく冬になれーって思いました。冬だとロマンチック補正がすごい気がするのです。 [一言] 女の子の…
[一言] すごく積極的で人懐こい女の子ですね。 雪男だと寿命はどうなんだろう? 伴侶の寿命は? お父さんは明治の人? などなど想像してしまいます。 伴侶(人間)の寿命が変わらないなら、代わりゆく愛…
[一言] 企画より参りました。 強気なお母さんがキュートですね。天国のお父さん、きっとこのお母さんに押し切られたんだろうなあ。 「儚い」「淡い」「雪のように」……悲恋なのでしょうか?! 続きを! …
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