抗争 (2)
「テト、どんな作戦だ!」
「まず、この戦いで倒したゴブリン達をカード化して、そこで時間稼ぎをしてもらいたい。およそ100体のゴブリンだし、味方を殺すのには躊躇はすると思う。だから、圧倒的な力の差があっても少しの時間稼ぎにはなると思う。
僕の力を使うことで倒そうと思ってるんだけど、強い術にはそれ相応の詠唱時間が必要なんだ。僕の力でどれほどあいつにダメージを与えられるかは、わからないけどうまくいけば倒すこともできる!
この世界にきて魔力をあまり使ったことがないからうまく発動するかもわからない。わからないことだらけだよ、でも、ここでやるしかないんだ! 躊躇なんてしてられない。ダイル少しの間、時間稼ぎはまかしたよ!」
テトの言葉には自分に言い聞かしている言葉があったように感じた。
思えば、なぜあの時、テトを止めなかったのだろう。
ん、、俺は今なんでそんなことを考えたんだ。
今はテトを信じるときだ。テトの作戦以外、この場をうまく切り抜ける方法は見当たらないじゃないか。俺は信じる。そして、俺に与えられた時間稼ぎの役目を果たそう。
ゴブリン達はおよそ100体。この数をカード化するなんてできるのか、いや、そんなに悠長に考えている暇はない。相手は化け物だ、とりあえずやるしかない!
俺は心を静め、意識をカード化に集中することにした。
《モンスターをカード化しますか。》
《モンスターをカード化しますか。》
《モンスターをカード化しますか。》
《モンスターをカード化しますか。》
《モンスターをカード化しますか。》
・
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全て、全モンスターをカード化だ!!
そう思うとすぐに倒したモンスター達がカードになり始める。あっという間にゴブリンの死体の山がなくなる。こんなときにステータスなんて確認する余裕なんてない。
全モンスター召喚だ!
一気に全モンスターが召喚されるわけではないが、早いペースでだんだんと召喚されていく。幸い、あの化け物が現れてから手下であろう残り100体のゴブリン達が攻撃してくる気配は感じられない。あの化け物一体で充分と判断されたということか。それか、手を出さないように指図されているか。
どのみち、こちら側には好都合だ。オークキング一体に集中できる。俺は時間稼ぎだ、すぐに攻撃するより相手の様子を見て、仲間と判断するか敵と判断して攻撃してくるか、どちらを選択するかを見てからの方が時間は稼げるか。
「ナンダオマエタチハ、シンデナカッタノカ。オマエタチモアノアオイヒカリカラウミダサレタノカ?」
カード化したモンスターは一向に返事をしない。
「ナルホド。オマエタチハモウテシタデハナイ。タダノテキダ。」
そういうと、オークキングは拳を構え、スラルトンを倒した時のように拳を放った。なんと、狙われたゴブリンはその衝撃波で腹に穴が空き即死し、光となり消えた。
なんて無慈悲なんだ、元は仲間だぞ。躊躇なく殺しやがった。特筆すべきはやはりその威力だ。後ろにいたゴブリンもダメージをくらっているじゃないか。あのパンチは危険すぎる。ただ、時間を稼ぐぐらいなら束になってかかれば出来ないことはない。
モンスター達、オークキングに攻撃だ!!
俺に注意を向けられたら俺もテトもモンスターも終わりだ。命令を声に発することは極力避けよう。
ゴブリン達はオークキングに突撃するが、あの強靭な肉体にパンチをしたところでダメージなんて与えられるのか。だが、ダメージだけならFランクのモンスターなら与えられるかもしれない。
「ムシケラドモメ。ミノホドヲワキマエロ。」
「王ノ威圧!!」
なんだ、モンスター達の動きが鈍くなった? いや、怯えているのか? オークキングのスキルのせいなのか。まずい、明らかにモンスター達は動揺している。
「ジャクシャドモメ、ミナゴロシニシテヤル。」
だめだ。次から次へとなぎ倒されてる。このままじゃ全滅も時間の問題だ。なんとか時間を稼がないと。そうだ、相手は言語が通じるんだ。話すことで時間を稼げるもしれない。
「オークキングだな。その力は伊達じゃないようだかな。」
「ナンダ、ニンゲンガイルノカ。ドウリデチノウノヒクイゴブリンドモガムラニタテコモルナド、コシャクナマネヲシテイルノカ。」
やはり、話は通じるのか。だが、俺らのせいで手下が苦戦したこともバレたらしい。こいつ、頭の回転が早い。ここで下手に嘘をついて見破られることは避けたい。
「そうだ、今は俺がこの者達のリーダーだ。このゴブリンの群れがオークキングの手下だとは思ってなかったんだ。無理なことかもしれないが平和的に解決できないか?」
「ブハハハハ。ヘイワテキ? スデニコッチハ100タイモノヘイヲウシナッテルンダ。オマエハタダジャスマセナイゼ。」
くそ、やはり無理だ。だが少しでも時間を稼ぐことはできた。テト、まだなのか。
「オマエヲミセシメニコロシテヤルヨ。」
こっちを標的にしやがった。ゴブリン達あいつの足止めをするんだ。
Fランクのモンスターは俺の周囲にいるようにしてくれ。
「コザカシイ。ノウリョクコウジョウ!!」
またスキルを使いやがった。やばい、ゴブリン達が1発の拳で5体ほどなぎ倒されてる。
「テンイ!!」
なに、一瞬で近くまで来やがった。地面がえぐれてる。現れた時に使った魔法か! くそ、不覚だった。
「シネェェェェェェェェ!!」
くそ、やばい、逃げられない。当たる、死ぬ。
俺はここで死ぬのか。
その時だ。俺の肩付近から莫大な魔力を感じた。それも禍々しい程の量の魔力を。。。
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