神のヒロイン
それからモンスターに出会ってはファングスライムで倒してはカード化にするという一連の作業のようなものが続いた。
幸いなことに強いモンスターにも出会わなかったし、順調に戦力補充ができていた。
ところで、融合を何でしてないんだって?それはだな、融合は直前にしかできないものだと思っていたんだが、保有モンスターが二体以上いる場合にできることが判明したんだ。
かといっても、融合で生まれたモンスターにはできないようになっていたんだ。このファングスライムでしか試してないから絶対できないとは言えないんだがな。
そして新しいモンスターを生み出しても今の状況的にこのスライムファングがいることで十分戦力的には足りているしな。
なんせ、スライムやスケルトンなんかのモンスターしかでないんだ。そうこうしているうちにたくさんのモンスターをカード化できた。
でもここでも新しい発見があったんだ。俺はモンスターを倒したらカード化できるもんだと思っていた。
だが、あの ≪モンスターを解析中です。≫ からの ≪モンスターのカード化に成功しました。≫ そう、これが失敗することがあったんだよ。 ≪モンスターのカード化に失敗しました。≫ ってなるんだ。
あれから、スライムとスケルトンを倒して合計15体のモンスターのカード化に成功してるんだが、16体目で初めて失敗したんだ。これが新しい発見ってやつだ。
「多分だけどこれだけのモンスターがいればこれからの抗争にも十分対抗できるんじゃないか。」
そんなことを思っていると、
「ねぇ、そこの人間さん。」
突然の声。おそらくまわりには俺しか人はいない。
ん、だれだ、まわりを見渡しても誰もいない。
「ここだよ、ここ。」
声の方向に目を向けると、一匹の黒猫がいた。んんん、なんで猫が喋ってるんだよ! そんなことを内心思いつつ、その黒猫を注視する。なんの変哲もない猫だ。
「なにずっとみてるの。そんなに僕が不思議かい。」
まずだ、この猫と喋るべきなのか。確かに俺は猫も知ってるし、動物の中でも愛らしくて好きなほうだ。
ただ、猫が喋るというのは聞いたこともないし、ここは聞こえていないふりをして何事もなかったように逃げるのが正解なんじゃないか。
あらてのモンスターの危険性もかみするべきだ。俺は180度向きを変え全速力で逃げるプランを立てた。そのときだ、黒猫が変身していったのだ。
そう、それは一瞬の出来事だった。
人間になったのだ。肌は褐色に、髪の毛は黒色でつやがあり、首元まで伸びている。身長は俺より一回り小さいぐらいか。
人でいうところの中学生ぐらいの体系をしている。胸は年相応にふくよかでもないが全くないわけでもない。
そして、特徴的な翡翠色の瞳と獣耳。正直かわいいと思った。前の世界にこの子がいれば間違いなく一流アイドルになれるほどの逸材だ。
「僕が君と会えたのも何かの縁だよ。僕と一緒にこの世界をまわろうよ。」
しかし、惑わされてはいけない。
この子は何者なんだろうか。全く素性がわからないし頭が追い付いてない。
「まず君は一体何者なんだ。」
「僕はテト。猫の女神のバステトだよ。昔はすごく有名だったんだけどなぁ。今じゃ知られてないのかな。」
知っている。詳しいわけじゃないが猫の女神で称えられていた神だ。だがどうしてこんなところに。
本当のことを言っているのかわからないがとりあえず相手を怒らせないようにするべきだ。
「バステト様、なぜこのようなところへ来たのでしょうか。」
「それなんだけどね、僕もはっきりわかってないんだよ。だから、とりあえず誰かと一緒にこの世界を探検しようとしてね。
あと、そんな口調で話してほしくないなー。僕はあんまり神様扱いされたい神じゃないし、この世界も君の方が知っているだろうしね。
だから僕と君とは対等な関係でいこうよ。あ、それと僕を呼ぶときは気軽にテトって呼んでよ。」
「それじゃ、テト。残念だが俺もこの世界につい最近来たばかりなんだ。
だからこの世界の事を教えてやることもできないし、俺にもやることがあってテトのことばっかり気にかけてやることもできない。
それでもよかったら一緒にこの世界をまわることにしよう。」
「いいよ。僕も何も予定もなかったし、当分は一緒に過ごすことになるね。」
俺は内心とても喜んでいた。なんたってこの世界で人ではないとはいえ適度に喋れる相手ができたんだ。
ここにきてから人にも会うこともなかったし、喋っていたのはゴブリンだけだったんだ。
しかし、少し不安なのが本当に神であるのかっていうことなんだ。普通に魔物が騙してきていることも考えられる。
俺も、「僕は神です」、っていわれて「はいそうですか」、と信じられるほど単純ではない。
さっきはこの子の性格も特徴もわからないからうまいようにそのまま信じたようにしたんだけど、この子は友好的に接してきていて、悪いものじゃなさそうだから大丈夫だとは思うけど神様の証明をしてもらおう。神様である証明なんかできるのか知らないけど。
「テト。一つだけ確認したいんだが、本当に神様なのか。俺がこの世界にきて間もなくて警戒心が強いのもあるんだけど、君が魔物の可能性も考えられなくはないだろ。」
「まぁそうだよね。じゃあ神の力っていうものを見してあげるよ。大したことはしないけどね。」
そういうとテトは目を瞑った。数秒後、テトのまわりに神聖な気が溢れ出た。ように見えた。
そう、実際には気など見えるはずもない。しかし、溢れんばかりの気が見えたように感じた。
「これが神である証明かな。僕程度だったらこれはこの程度なんだけどもっと高位の神はすごいよ。ほかの神を気だけで圧倒できるものもいるくらいだからね。君も見えたみたいだし、これでいいでしょ。」
そういうとテトは目を閉じた。数秒後、テトはこれまで通りの感じに戻っていた。
「驚いたよ。これが証明になるのかわからないけど、俺は自分の気持ちに正直に君を信じることにするよ。」
「ありがとう。それじゃ、これからよろしくね。あ、そういえば君の名前を教えてよ。」
「俺はダイル。まだまだこの世界のこと知らないけど一所に探検しよう。」
俺は、とんでもないことになったんではないかと内心思っていた。
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