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ギルメン、依然として転勤できない

「すいません、ラムダさん。仕事が処理しきれなかったので、来月の計画書の作成をお願いしてもよろしいですか?」


「わかったよ。明日までに作っておくから。お疲れ様」


 シータは申し訳なさそうに帰っていった。残った俺からは出るのはまたため息だ。


 シータが復帰した時の体制は、案の定つらいものがあった。彼女は決まった時間に帰っていくので、残業も不可能なのだ。そのしわ寄せは俺を含めた他の隊員に及ぶ。俺もこの支部での在籍が1年を超えたので、その経験を活かして様々な業務改善を図っているがそれには限界があった。

 でも、それもあともう少しで終わりのはずだ。季節は廻り、定期転勤の時期を迎えるのだから。それを心の支えとして何とか持ち堪えている隊員は他にも多いはずだ。


 そしてまた転勤希望届出書を書く時期がやってきた。勿論「転勤を希望する」に丸をつける。希望配属先はいつものとおり「魔導開発部門 錬金術研究部署」と明記する。第1希望は、魔導系制御研究班、第2希望は生活系アイテム開発班、第3希望は――。

 いつもなら記入するのはここまでだ。だが今回は備考欄にも人事部へのコメントを記載することにした。


『モンスター討伐隊員が不足している。隊員の増員を要請する』


 支部長が訴えかけないのなら、直訴するまでのことだ。今回の人事では経験者がごっそり抜ける見込みがあるため、残された者が苦労しないようにしておくことが必要だ。まだ俺が残る可能性も残っているので自己保身のためでもある。

 これまで同じ仕事を通して苦楽を共にしてきた仲間であるが、きっと残留組は転勤組を笑顔で起こり出せないだろう。だけど、誰が残ることになっても恨みっこなしだ。普段からそう言い合っている。



   ※   ※   ※   ※   ※



ギルド[黒の混沌(ブラック・カオス)] 人事部配属課


「あの何も起こらないイナッカにおいて人員が足りていないだと?このラムダとかいう奴は無能の塊のようだな」


「我ら人事部が過去に人員は足りていると判断しているのだ。その決定に意見するとは不届きな奴もいたものだ」


「直属の上司からは引き留めて欲しいとの意見がついている。馬鹿と無能も使い様だ。残留は確定で問題ないだろう」


「だが、人事部に盾突いた者がどうなるかしっかり教えてやらんとな。こういう奴には…………こういう対応をしてやればよい」


「なるほど。これはいつまで持ちこたえられるか見ものだな。くくく」



   ※   ※   ※   ※   ※



「ラムダ君、希望に応えられず申し訳ないが、あと半年はここで頑張ってくれ」


「はあ、そうですか」


 薄々予感はしていたのだが、実際にはっきり言われるとがっかりしてしまう。


「その代わりと言っては何だが、クラスⅥからクラスVへ昇格だ。おめでとう」


「……ありがとうございます」


 [黒の混沌(ブラック・カオス)]にはハンターなど個々の職業実力を示すランクとは別に、クラスと呼ばれる階級制度がある。かつてギルドが登録制だったころに「冒険者ランク」と呼ばれていたものの名残だ。クラスが高いほど重役に就くことができるというものになっている。

 ランクが高いほどクラスの昇格も早い傾向にあるが、肥大化した組織の中で実力はそれほど重視されなくなっており、年功序列に近い昇格制度となっている。俺の年齢からすれば今回の昇格は過去最速の昇格である。これだけ聞くとすごそうに聞こえるが、最速で昇格しているメンバーは他にも沢山いるのでただ単に「出世が早い組である」というだけだ。

 ある程度実績も認められているのだと信じたいが、やはり思いどおりにならなかったことの方が大きく、喜ぶことはできなかった。


 改めて、配属表を眺める。俺の部下になるメンバーは1人を除いて全員新人だ。つまりは、この1人と協力して何とかしていけってことか。人事部は相変わらず無茶なことをさせる。配属表の情報によれば、転勤してくる隊員の名前はクサイ。現在は、本部アイテム採集部門にいるようだ。超優秀メンバーであることを期待しようじゃないか。


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