新人、単純なことに気づく
「たぶん、学校にあった術式付きの武器は鋭利化ぐらいしか乗せていないはずだ。だから学生は術式が乗せてある時点で、ないものよりも必ず有利になるという思い込みをしがちなんだ」
そのとおりだった。私は、術式があるというだけで、これは強い武器なのだと勝手に思い込んでこの場に持ってきた。
「でもギルドは違う。利益や効率を重視するからね。作戦上必要であれば様々な術式を乗せたものを用意する。有用な術式であっても、場合によってはそれが不利になることもあるから、性能をよく理解した上で状況に応じて使いこなせるようにしないといけない」
「つまり、武器の特性まで見切った上で武器を選択できれば良かったということですね。俺、全然考えが足りてませんでした」
「私もです」
「まあ、そこまでできれば申し分ないだろうね。でも、もっと簡単なやり方があっただろう?」
「「「え?」」」
私たちは互いに顔を見合わせた。
「武器の性能を質問してくれれば答えたんだが」
「「「あ」」」
「すごく簡単なことだけど、新人初日では難しかったかもしれないね。新しい環境ならではの緊張感もあるし」
質問しづらいだろうし、周りを見る余裕もないだろうし、そこまでできたら大物だとラムダさんは言った。裏を返せば、私たちは想定される範囲に収まる普通の新人ということなのだろう。
「俺たちは互いの命を預けることになる。君たちが成長するよう努力は惜しまないから、君たちも君たちなりの努力をしてくれ」
私たちはまだ「ひよっこ」なのだと痛感したのであった。こうありたいと思う理想の自分には程遠いようだ。
「今日はダメダメですね。相当意気込んで来たんですが」
現実は物語のようにうまくはいかないものだ。私は深くため息をついた。
「いや、今日、君たちはよくやったと思うよ」
「へ?」
ラムダさんの思いがけない言葉に間抜けな声が出てしまった。
どこに褒められる要素があったのか、私は自分の行動を振り返ってみるが、思い当たるものはない。なにせ武器の選択を間違え、その武器のせいでゴブリンにやられそうになるという失態を犯したのだから。
「俺の出した指示は、武器を自由に選ぶことだった。君たちはその指示に従って、君たちになりに考えて武器を選び、この場に持ってきた。今日はそれで十分さ」
ラムダさんはニコリと微笑んだ。