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新人、ややこしく考えすぎてしまう

 他に応えるべきキーワードがあるのだろうか。考えどそれが頭に浮かんでくることはなかった。


「特にありません」


 そう答えるほかなかった。


「うーん。そうかあ……」


 きっと私のことを失望したのだろう。ラムダさんは何か言いたげだったが、それ以上は何も続けなかった。敵が近づくのを察知したためだ。


「来たみたいだな。数は3か。ちょうどいい。左のをアルファ、右のをタウ、真ん中のをユプシロンが対応してくれ」


「「「はい!!」」」


 倒せるかどうかなんて確認は一切ない。倒せることが前提となっている指示だった。


 アルファ君の相手はゴブリンランスだ。駆け寄るゴブリンの槍を素早く薙ぎ払い、そのまま勢いを殺さずに脇腹を打ち抜いた。ゴブリンランスは、弱々しい声を上げて倒れた。


 タウちゃんが対峙したのはナイフを持ったゴブリンだ。ナイフよりも長い剣のリーチを生かし、ゴブリンの攻撃が届く前に首筋を斬り、そのままひらりと横へ身をかわした。血しぶきと共に、ゴブリンは声もなく仰向けに倒れた。


 そして、私が相対することになったのは、ゴブリンソードだった。ゴブリンは剣を大きく振りかぶって正面から切りかかってきた。見え見えの動きなので、それを剣で受けて弾き返す。力一杯打って力みすぎていたのか、相手の体勢が崩れるのが見えた。


「今だ!」


 この隙を突けば一撃で倒せるはずだ。

 力を込め、袈裟斬りの体勢に入ったのだが、急に剣が重くなった気がした。剣の重さに体の重心を持っていかれ、前のめりになってしまう。今度はこちらが隙をつくる番となった。既にゴブリンは体勢を立て直しつつあり、ニヤリと笑いながら反撃を繰り出してきた。


 やられる!!


 そう思った次の瞬間、後ろからナイフが飛んできた。それはゴブリンの喉元に刺さり、ゴブリンはその場に倒れ込んだ。ナイフは、ゴブリンの喉の中心を完全に貫いており、もう再起不能の状態だ。


 振り向くと、そこにはラムダさんの姿があった。私たち3人にゴブリンの相手を完全に任せたわけではなく、後方で見守ってくれていたようだ。


「よし、接近してきたのはこれで全部倒したな。大丈夫か?」


 まだ呆然としている私に、ラムダさんは声を掛けてくれた。


「ありがとうございました」


「どうだった?その剣を使ってみた感想は?」


「急に重くなってうまく扱えませんでした」


 一体どんな仕掛けがしてあったのだろう。


「その剣にはね。剣先が重くなる術式が乗せてあるんだ。剣の重心が先に移動することで、瞬間的に一撃を重くすることができるというわけさ」


 何それ、そんな術式カスタムがあることを初めて知った。


「さて、話がまだ終わってなかったね。タウさんがその武器を選んだ理由を聞こうか」


 指名を受けたタウちゃんは自信なさ気に語り出した。


「あの、私も新品じゃない武器が術式の組み込まれたものじゃないかと思いました。でも、私、そんなに実戦経験もないので、えっと、うまく使えなかったらやだなあと……」


 言われてみればそうだ。なぜこんな簡単なことに気付けなかったのか。得体の知れない武器を手に、命を落とすこともある魔物討伐に向かうなどハンター失格である。

 ラムダさんによれば、私の持ってきた剣は体力のある相手を短期決戦で倒すための仕様となっているらしい。ゴブリンのように簡単に倒せるモンスター相手には無用の代物だったのだ。


ここまでのまとめ

① 武器の刃の状態だけしか見なかった → α

② ①だけでなく武器を観察して術式を見抜いた → υ

③ ①②の上に自分の身の程をわきまえた → τ

次回λが新人に伝えることとは?

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