表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/19

ギルメン、新人たちの力を試す

途中からユプシロン視点になります。

「さて、君たちの机に装備を用意しておいた。各自サイズを確認してくれ。武器は短剣、長剣、槍、弓、錫杖がそれぞれ基本装備として配られているはずだ。自分に合わせて調整して構わないけど、貸与品なので大幅な改造は一応禁止ね。あと前任者が残していったものも隣の部屋にある。自由に使っていいよ」


 新人たちはワイワイと武器を漁って感触などを確かめていた。


「小隊長、武器はいつも好きなものというわけにはいかないんですよね?」


「なかなかいい質問だね。相手がゴブリンのように弱い敵が少数で出た場合は好きなもので戦えばいい。だだし、強敵や数が多いことが分かっている場合には、出動前に作戦を立てる。状況に応じて使用する武器も決めておくことになるかな」


「なるほど。一通り使えるようにしておきます」


 そんな中、受付嬢が部屋に駆け込んできた。


「ラムダさん、南の山岳部にゴブリンがポップアップしたようで、討伐の要請が入りました。至急対処してください!」


 そう言って、目撃された状況など聞き取られた情報が書き込まれた連絡票を手渡すと駆け足で戻っていった。


「ゴブリン約10か。ちょうどいいな。新人と俺の4人で出撃だ。近接用の武器は、自由とする。自分で好きなのを持って行っていい」


 いい機会だ。新人のお手並み拝見といこうじゃないか。



   ※   ※   ※   ※   ※



「よし、止まってくれ。そろそろ報告にあった場所になる。そのうちゴブリンとも出くわすことになるだろう」


 1時間ほど移動したところで、ラムダさんが一行を止めた。この辺りにゴブリンが潜んでいるはずだ。


 学校の演習でもゴブリンなら何度か倒してきたので、これもそんなに難しい任務ではないと思っている。それでも、初めての任務ということで緊張が走る。私はごくりと息を飲んだ。アルファ君とタウちゃんもかなり緊張しているようだ。


「だがその前に、それぞれ持ってきている武器を選んだ理由を教えてくれ」


 やっぱりそうきたか。

 支部を出る前に、武器を各自好きに選んでいいと言われた時点で、試されていることに何となく勘付いていた。


 アルファ君とタウちゃんは新品の武器を選んだようだ。一方で、私が選んだのは古い方の武器である。


 最初にアルファ君が回答するよう指名された。


「新品の武器の方が刃の状態が良かったのでこちらを選びました」


「なるほど」


 思ったとおりの展開だった。


 私たち新人に用意された武器は、新品のものと前任者が残していった武器だ。新品の武器の方がよく研がれているのに対し、お古の武器は手入れもそこそこで、一見新品の方が正解にも見える。

 しかしそれは間違いだ。実はお古の武器は術式が組み込まれた武器だからだ。術式があるとないでは性能も価格も段違いである。多少のメンテナンスでその差を埋めることはできない。

 ただ、術式が組み込まれていることは、見ただけでは分からない場合が多い。実際に手に取り、場合によっては実際に使用しないと分からないのである。


 つまり、新人である私たちが武器を見た目だけで判断しないか、ラムダさんは私たちの実力を見ようとしているのだ。


 新品を選んだ2人は不正解ということになる。


 よく考えてみれば、新品の統一された武器が与えられるのに、不揃いの古い武器が選択肢に挙げられていることがそもそも不自然なのだ。とても分かりやすい問題である。


「ではユプシロンさんはどう?古い武器を選んだみたいだけど」


「はい。この武器には術式が組み込まれているようでしたので、戦闘に有利になると思って選びました」


 私は満を持して答えた。


「うん。確かにその剣には術式が組み込まれている。前いたベータさんが戦い易いように改良していたものだ。よく気付いたね」


 ラムダさんは微笑んだ。


「そういうことだったのか!」


 隣でアルファ君が悔しそうに呟いた。その時、私の目の前に鏡があったら、得意気な顔をした自分の顔が映っていたことだろう。

 だが、それはすぐに崩れることになった。


「それで、ユプシロンさん、他には何か理由があるかな?」


「ほ、他に、ですか……」


 思わぬ問いかけに私は動揺した。どうやら今の答えだけでは足りなかったらしい。不意打ちで焦ったこともあり、ラムダさんがどのような答えを求めているのか、私はさっぱり見当がつかなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ