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ゴブリンの勇者  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)
第二章 少女達は荒野へ向かう
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休憩

 火の魔撃が渦巻きを下半身にくっつけたような人型の魔物にヒットし炎を巻き上げる。どうやら風属性らしい魔物の体には炎は有効なようである。

 ミーナの肩の緊張がほぐれるようになってから更に一時間ほどの時間が経過していた。既に冒険者達の数は最初の頃の三分の二ほどにまで減っており、減少のペースは奥に進むに連れて加速度的に上がっていくようにバルパには感じられた。

 戦闘を続けていて感じたことは、この森の魔物は今のところという注意書が付くが火が一番有利に戦闘を進められる属性であるらしいということだ。

 全体的に虫の魔物や爬虫類の魔物等の森林に適応したと見られる魔物が多いため、山火事でも起きない限り無縁であるはずの火は魔物達の恐怖をあおってくれる。雷を放っても足は遅くならないが、炎を見えるように放つと目に見えて魔物の足は鈍った。

 自分ががミリミリ族と暮らしていた場所ではもっと動物的な魔物が多く、毛皮や鎧になりそうな革を持つ魔物が多かったが、もしかしたらあそこは魔物の領域の中でもかなり奥まった場所だったのかもしれない。

 バルパは魔力を半分ほどに減らしたミーナを見てから先ほど見つけた洞穴のことを思い出す。

「そろそろ一度休憩を入れよう」

「うん、わかった」

 記憶を頼りにしながら少しだけ道を戻り、探索の最中に見つけた人が入れるほどの洞穴へと向かう。

 中へ入るとそこは休憩スペースとしては不適当な場所のようだった。中はジメジメと湿っており、地面には白い魔物のフンがぶちまけれられている。広さは人間が十人入っても余裕があるくらいのものがあるだろうが、魔物の居た跡があることを考えると長時間の滞在はあまり現実的ではない。

 まだ朝食を口に入れてから二時間程度しか経っていない、空腹を感じるような状態ではなかった。 

 腰かけるサイズの岩はあったが、そこにも満遍なく白いフンがぶちまけれられていたので座る気にはなれなかった。地べたに何かを敷こうとも思ったが、裏面が汚れるのもなんだか嫌だったのでおとなしく少し湿った壁によりかかることにした。糞の汚れよりたしょうの土汚れの方が万倍マシだ。

「同じ場所に定住するつもりがない以上、休憩スペースの確保は必須になってくるだろうな」

「うー……ごめんね、半日くらいならぶっ続けでも大丈夫だとは思うんだけど」

「戦闘のパフォーマンスが落ちては意味がない、それならば数時間おきに休憩して魔力を回復させた方が良い。仮眠もとっておくべきだろうな」

 睡眠というものは、取ると魔力の回復速度を劇的に高めることが出来る。ルルとミーナという二人の事例を数回ほど確認しただけであるため明確な数値として出ているわけではないが、ぐっすりと六時間程度寝れば人間の魔力は全快する。以前ルルが魔力は一日で完全に回復すると言っていたことを考えると効率は大体四倍に近いわけだ。今なら彼女に付けたアクセサリーの効果もあるだろうから、数時間も寝れば問題なく魔力は全快することになるだろう。

「でも不寝番をバルパに任せることになるんだろ?」

「問題ない、魔物と人間では魔力回復の速度は桁が違う」

 魔力回復の速度が上がるということを知っているにもかかわらずバルパがあまり睡眠をとろうとしないのは、魔物の魔力回復速度が人間のそれと比べても明らかに速いからだ。

 大体の感覚では、バルパは二時間もあれば魔力を0から100にまで回復させる事が出来る。寝れば更に速度は上がるが、寝ても一時間はかかるために睡眠によるメリットはそこまで大きくはない。魔力回復ポーションを使用するのは明らかに連戦が想定されるときや、文字通り息つく暇もないほどに忙しい時であることが多い。人間より魔物はかなり魔力の親和性が高い存在なのだろうとバルパは自分の中で結論を付けていた。

 魔力の回復量はその時々の行動に依存し、魔力を使えば当然遅く、動きが少なければ少ないほどに回復量は増える。量と速度を両立させるのに効率が良いのは、食事か睡眠である。

 だが二時間前後動くごとに睡眠を取っていれば逆に疲れが出てくるだろうし、今は食事時でもない。

 無限収納の中には千を超える魔力回復ポーションがあったが、それも無限にあるわけではない。開始早々から中々に難儀している攻略に一体どれだけの時間がかかるかわからない以上、基本的にはポーション類は温存しておきたかった。

 故にバルパとミーナはじっと動きを止め、会話に興じた。バルパは時々魔力感知を使うためにほとんど魔力回復を行うことは出来なかったが、ミーナの魔力は洞穴を出る頃には七割近くまで戻っていた。ルルに貸していたときよりも明らかに回復速度が速い。どうやら魔力回復のアクセサリーは、人によって効力に差が出るらしかった。バルパはこれならもっと早くから渡して置けば良かったなと少し後悔しながら、再び森の中へと一歩を踏み出した。

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