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道筋

 ダンが足場に魔力を固定させ、宙へ飛び上がる。

 遠距離戦では敵に部があるとわかっているバルパは、それを追いかける形で空を駆けた。


 聖剣を握り、相手が魔法を使うよりも近距離戦の距離へと持ち込む。

 そんなバルパを見てダンは笑う。

 そして一瞬にして、その姿を消した。


(上か!? 左右……いや、下だ!)


 バルパが腕をクロスさせて防御姿勢を取ると、彼の上半身のあたりに大量の火の玉が襲いかかってきた。

 ダンが即座に移動し、自分の居る場所を悟らせぬように立ち回ったのだ。

 だが移動の兆候、足の筋肉の躍動や踏み込みがなかった。

 ということはつまり――――


「俺より先に完成させたか!」


 足場を作り、空中を駆けるバルパを嘲笑うかのように、ダンは空中で制動しジャンプでは不可能な制動でバルパの背後を取る。


「これで君の、初の黒星だ!」


 咄嗟に背中に構えた聖剣の間を掻い潜るように放たれた突きが、バルパの背を抉り取った。 黒く禍々しい光を発する魔剣が胸から突き出て、バルパは痛みと衝撃から地面へと落ちていく。

 なんとか空中で体勢を保とうとするが、足場を作りそこを支店として動かそうとするとダンがそれをことごとく邪魔をする。


 宙を自在に飛べる今のダンと、宙を足場を使いジャンプでしか移動できないバルパとでは機動力の差は明確で、結局地面に墜落してからもバルパは後手に回り続け、数分もしないうちに降参することとなった。




「どうやって魔力の再流動化をしたんだ?」


 ポーションを服用し回復し終えたバルパは、食事を摂りながら考えていた。

 自分よりかなり遅れて修行を開始したはずのダンが、既に魔力による空中飛行を可能にしたという事実。

 自分に才能がないのか、それとも何かコツのようなものがあるのか。

 空を飛ぶ方法を教えてくれるならどんな武器でも差し出すというほどに、今のバルパはその方法を渇望していた。


「んー……感覚としては、全身に足場の膜を張り付ける感じかな」

「全身に、膜?」

「うんそう。今の僕はまだ自由に飛べてるわけじゃなくて、ただ空中で自在に方向転換が可能になってるだけだよ。一度固定化した魔力をまた流動化させて飛ばしてるんじゃなくて、ただ足場を作る技術を応用して動けるようにしただけ。でもこのアプローチの方が、近かったりするかもよ」


 ダンがやったことは、空中歩行のやり方のそのままの応用だった。

 空中飛行は、ヴァンスのような人間の常識を外れた魔力保有量のある者しかできない力業だとばかり思っていた彼は、実は以前より自分でも似たようなことはできないかと試していたことがあったのだ。


 かつてやっていたことと、バルパから新たに教わった咒法の基礎。

 それらを組み合わせることで、ダンは魔力の固定化を狭い一つの空間ではなく、薄く広い空間で行えるようになった。

 そして魔力の膜を生み出し、それを支えにして跳ね返ることで本来の空中歩行では不可能な軌道で行動することができるようになっていたのだ。


 それはバルパが今まで試したことのないやり方だった。

 彼がやっていた、直接空中飛行を目指すようなやり方をするにはかなり長い時間がかかることは訓練でなんとなくわかっている。

 それなら今ダンがやったやり方を自分もやり、別のアプローチから空中飛行に至ってみよう。


 ダンという競争相手を見つけたことで、バルパは今までとは別の視点から訓練を行うことができるようになった。

 互いに競い合いながら技術を磨いていくことで、彼らの修行は飛躍的に進んでいく。


 そしてバルパが一人で思い悩んでいたのと同じくらいの時間をかけて、ほぼ空中飛行に近いところまで持っていくことに成功したのだった―――。

次回更新は、2/27です

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