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相違

 バルパが話を聞き、離脱を許そうとしていた時、ウィリスはヴォーネを連れて外へ出た。

 耳を引っ張られているせいで、ヴォーネは相当痛い。

 だがウィリスは全く、彼女への拘束を弛めるつもりはないらしかった。



「もう、ちょ……やめてってば!」

「いいから来なさい!」



 レイに連れて行かれるまま、部屋を出て、家を飛び出し、その裏の庭でようやく止まる。

 ようやく離され、血流が戻り始めた耳を、ヴォーネは自分の手でゆっくりと撫でた。




「もうっ、いきなり何するのよ」

「…………私が何を言いたいのか、わかる」

「わかんないわよ、そんなの……」



 耳を弄りながら、ヴォーネは顔を俯かせる。

 ウィリスはいつだって、勝手な人だ。

 彼女はいつも、自分の好きなように行動するし、人の迷惑など考えもしない。


 ヴォーネ自身、なぜこれほど彼女が怒っているのか理解ができなかった。

 自分が修行をしないというただそれだけで、何故ウィリスが怒るのか。

 彼女は基本、自分や同族以外には嫌悪感くらいしか向けないはずなのに。



「本当に、わからないの?」

「わからないわよ……」



 最初の頃、自分はウィリスに対しかなり他人行儀だった。

 彼女はかなりつっけんどんだったし、ヴォーネにまともに話しかけようとはしなかったから。

 だがバルパと出会い、短くない時間を一緒に過ごすようになって。

 少なくとも同じご飯を食べたり、同じ場所で寝たりすることに、抵抗はなくなってきていたはずだ。

 一緒に過ごす時間だって増えたし、今では普通に会話をすることだってできる。



(あ、もしかして…………だからなのかな?)



 ウィリスが自分に対して強い怒りを覚えているのは、もしかしたら。

 自分をエルフ達と同じくらいに、大切に思ってくれているからなのかもしれない。


 そう考えるようになると、ウィリスに対する思いも変わってくる。

 あまり頭ごなしに叱ったりはしないように、思慮を巡らせる必要もあるだろう。


 ヴォーネはまず、ウィリスが怒っている原因を考えることにした。

 発端となったのは間違いなく、ヴォーネがバルパから聞いた、真竜達との修行への不参加を口にしたことだろう。

 彼女に直接聞かれてはいなかったはずだが、恐らく内容自体は容易にわかったと推測できる。


 とすれば、次は先ほどの行為が、どうして彼女の怒りを引き起こしたのかという考察だ。 自分が強くなるのを、それほど強く望んでいなかったからだろうか。


 いや、もしかしたらウィリスは。

 自分がバルパ達とどこか一線を引いているのを、見抜いているのだろうか。

 どのように口にするかを考えてから、ヴォーネは尋ねる。




「私が強くなろうとしないのが、そんなに不満?」

「当たり前じゃない、そんなの! 私たち、今まで一緒に頑張ってきたでしょ? そりゃいがみ合うこともあった。何回も喧嘩したし、今だってそんなに仲良くはない。でも少なくとも、あいつらと一緒に過ごしてきて、私たちが置かれている立場がどれだけ弱いのか、わかるはずでしょ? 私たちが強くならなくちゃ、ダメなのよ!」




 強い語気、そして瞳に映る眩い炎。

 それを見て、ヴォーネは思った。思ってしまった。

 ああ、やはりウィリス達は、自分とは違うのだ……と。


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