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真竜

「ユニーク装備を成長させるには、どうすればいい?」

「そりゃ簡単だ、このお前さんの装備の時のことを考えりゃあいいだろう」



 バルパは言われるがままに脳裏にとある事柄を思い浮かべた。

 今から思い出すと遠い昔のことのように聞こえる、ドラゴンとの戦いのことを思い出す。

 明らかに自分よりも格上の相手であるレッドカーディナルドラゴンに、自分は無限収納を活用することで勝とうとした。

 今こうして人間のことをある程度知っている現状から考えてみれば、わざわざ下に潜りあのドラゴン相手に戦う必要はないとわかるのだが、当時の自分は人間をあまりに恐れすぎていた。

 

(……いや、今でも恐れていないというわけではないのだが)


 自分の内心の独白に突っ込みをいれながら、自分の心象の変化について考える。

 もちろんあの頃と今の自分では情報量が違う。

 人間の強さが個ではなく群のものであるということを、今の自分は当時よりもずっと詳細に理解することができている。

 

(……っと、いかんいかん。思考が脱線しがちなのは俺の悪い癖だ)


 当時の自分を思い出しその行動の間違いを思い出すのは止めにして、緑砲女王が変化したその理由について考えてみることにする。

 性質が変化してしまったのはやはり、長い時間あのドラゴンの魔法とブレス攻撃を受け続けたことに原因があるだろう。

 とすれば、ユニーク装備が変質する原因というのは……


「攻撃を食らわせ続けることか?」

「いや、違うな。まぁ違わないでもないんだが、わざとそんなことをすれば武器にたちまちそっぽを向かれちまうことになるぜ」

「とすると、考えられるのは……」


 武器に納得させるように、武器に負荷を掛ける手段。

 身に付けている装備達に変革を促すような方法となると思い当たる節は一つしかない。



「強敵との戦い……ということか?」

「そうだ、それも今のお前とユニーク武装では敵わないような敵と戦うのが一番成長を促してくれる。強くなるのに楽な道はねぇっていうのを、ユニーク武装は地で行っている訳だな」


 要は強い者と戦い、それに打ち勝ってみろという話だ。

 今まで自分がしてきたことと同じだ。そう考えて机に目をやると、欠けている聖剣が少しだけ輝いたような気がした。

 自分が行ってきた戦闘は、図らずも聖剣の希望に沿っていたということになるのだろうか。

 バルパは自分がこれからやらねばならぬことが結局は今までの延長戦でしかないことを理解し、少しだけ気分を高揚させた。

 ただその興奮はすぐに収まり、次には落胆が押し寄せてくる。

 自分はヴォーネ達を送る都合上進路を固定しているため、無理ができない状態なのである。

 ヴォーネの帰還が終わった段階で、残る懸念はウィリスのみではある。だがやはり彼女を送り返すその時までは、自分の身体を自分の好きなように使う訳にはいかないのである。

 

(勝てば良い……と信じこみ、それを実現させれば良いだけの話ではある。勝てば、問題はないのだ。問題なのはむしろ、普通に勝てる相手と戦ってもこの二つの武器は認めてはくれないということだろう)


 強敵の戦いは、自分的には臨むところだ。

 心構えをした状態で行える時点で、奇襲や思いがけぬ戦闘にならぬ場合よりはマシな選択になるはずだ。

 今なお強さへの渇望を無くさぬ彼の意思は、若干ではあるが戦いを行う方向へと固まりかけていた。

 一度話を通してみて許可を貰えたら、戦いに行こう。

 勝てば、何も問題はないのだ。

 そして俺は、負けないのだから。


「そしてそんなお前さんにおあつらえむきなことに、実は今ここのドワーフ達はとある魔物に苦しめられている」

「……ほう?」

「お前さん達も色々と抱えてんだろう? あの嬢ちゃんが元気でやってけるように、少しばかり皆の印象を良くしてやった方がいいんじゃないか?」


 なるほど、今後のヴォーネのことを考えるとそうなるか。

 バルパは自分が戦うべき理由が見つかったことに喜色を浮かべ、少しだけ腰を落とした。


「して、その魔物の名は?」

「ヴァルフェルガース、と名乗ってたな。まぁ殺されたりされねぇんだがそれ以外のどんなこともやる悪党よ」


 どうやら知恵のある魔物、自分と同類らしい。

 そいつを殺せば新たなユニーク武装が手に入るだろうか。


「そいつは、えっと確か人間側の呼称だと……真竜と、そう呼ばれていたな」

「…………ほう?」


 その名を聞くと、思わず声が漏れた。

 自分が戦いたいと思っていた魔物が、まさかこんな辺鄙な場所にいるとは。

 バルパは自分でも知らぬうちに、口角を上げていた。

 まだ見ぬ、しかし名だけは聞いていた存在。果たしてその強さはどれほどのものだろううか。

 どうすれば聖剣を使わずに真竜を相手取れるだろうか、気が付けば対真竜戦のことだけで頭がいっぱいになっている自分に気付く。


(……やはり、変わらぬものだな。俺も)


 バルパは苦笑しながら、フィルスクに話を聞かせてもらうことにした。

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